山歩き

中津谷…小川林道…冠山…魚切林道
2023/3/12

中津谷…488号線…小川林道…ホン谷…水源碑…源流碑…冠山…魚切林道…ササゲ峠…41・40番鉄塔…中津谷

■冠山(カムリヤマ・コウソンカムリ)1339m:広島県佐伯郡吉和村字吉和西(点の記) (廿日市市)
■中津谷615m:広島県佐伯郡吉和村字中津上垣内(点の記) (廿日市市)

488号線入口 3月15日まで通行止
中津谷
国道に入るとすぐ倒木
大町谷
不栗付橋
橋を渡るとすぐ倒木
山側から落ちた木が中津谷を塞ぐ
修復された昨年の損壊地点
ガードレールを潰したツガ
道路崩壊地点手前
崩れた道路
鉄橋
小川川・オモ川合流点
出合橋
魚切林道入口
小川林道入口
小屋付近から雪道 右岸
左岸も雪道
スギの倒木が塞ぐ
葉が出たワサビ
奥出合橋
雪が林道を塞ぐ
コブドチ谷
ウマダテ橋
ケブタの谷
展望地から東側
小川林道終点
冠山・広高山分岐
ホン谷右岸へ渡る
右岸を進む
水源を進む
水源碑
雪原を進む
源流碑
雪の無い山道
冠山
展望所
雪原を進む
クルソン分岐
魚切林道と登山道
41番鉄塔
40番へ下る道
40番鉄塔 39番が見える
農道の箱罠
ビニールハウスの骨組みが続く
186号線手前の廃屋
6:25 中津谷(ナカツヤ) 気温8度 晴れ
 

7:20 出合橋
8:00 奥出合橋
8:35 ウマダテ橋
9:15 小川林道終点
9:30 冠山・広高山分岐
10:25 ホン谷の水源碑
10:35 太田川源流碑
11:05 冠山
11:45 クルソン分岐
12:00 下のクルソン分岐
12:20 魚切林道
12:35 林道から尾根へ
12:50 ササゲ峠
13:25 877ピーク
13:45 41番鉄塔 
14:00 40番鉄塔
14:20 186号線
14:30 中津谷 

 気温8度の488号線入口を出発。国道はまだ閉じられており、3月15日まで冬期通行止の標識。眼下の中津谷川は雪解け水が白く泡立つ。右岸のスギ林が赤くなっている。ゲートを越えるとすぐ、法面から倒れたスギが国道を塞ぐ。国道は道路上に一杯のスギの枝に覆われている。

 少し進むと、またスギの倒木が塞ぐ。国道に倒木が続く。大町谷落口は水量が多い。不栗付橋に雪が残る。左岸に渡ると、また倒木。倒れたスギが縦に割れていた。連続する倒木を進む。山側から倒れた倒木が中津谷川を塞いでいた。

 昨年の道路損壊地点は修復されていた。スギ林の倒木が続く。倒れたツガの大木がガードレールを潰し、そこで折れて、幹の片方が谷へ落ちていた。サカサデノ谷を過ぎる。アテツマンサクが咲く。今年は倒木が多い。倒木の向こうに通行止の柵がある。その先で道路が崩れ、幅員が半分ほどになっていた。

中津谷左岸のスギ林
アテツマンサク

 道路損壊地点から200mほどで鉄橋。そこから少し先でも道路が崩壊し、ガードレールが浮いていた。小川川、オモ川の合流点は白く泡立つ。「一級河川太田川水系中津谷」の標識が見える。1時間ほどで出合橋。488号線の下流側は通行止の柵。

 雪が残る小川林道に入る。魚切林道入口は鎖止め。小川川に魚影が見える。小川林道には鉄柵、毛針専用区の標識。スギ林の左に建物が見える。小屋の辺りに雪が残り、そこから先は雪道になる。小川川左岸に雪道が続く。ノウサギの糞が点々と転がる。イノシシの足跡。ここも倒木が続く。ミズノミ谷を過ぎると、倒木が塞ぐ。蛾の繭が落ちていた。

 ワサビ田に新葉が出ていた。左岸の小谷は倒木で埋まっている。倒れたスギの窪みを見ると、根が浅い。出発から1時間半ほどで奥出合橋。雪の上にハンノキの果穂がたくさん転がっている。山側から滑り落ちた雪が林道を塞ぐ。進むに連れ、雪道が長くなる。コブドチ谷を過ぎる。雪道にツルアジサイのドライフラワー、イタヤカエデ、ブナの葉。

一級河川標柱 中津谷
蛾の繭
ヤマハンノキ
古いクマ糞
冠山公益保全林
ブドウゴヤ谷

 冠山公益保全林の道標を過ぎた所にキハダの実。ほどなくウマダテ橋、続いて毛部田橋を渡る。ハリギリの葉。ケブタの谷右岸を進みUターン。ブナの実の殻。1082mピークを回る辺りに古いクマ糞。ガレ場の雪道に小石が散乱して、絶えず崩れているようだ。展望地に出るが、ガスで視界ゼロ。いつもは灌木の中で見えない「冠山公益保全林」の看板が見える。

 出発から3時間弱で小川林道終点。ガスが漂っている。山道は雪で不明。ガスでテープも見えにくい。前方でヤマドリが横切る。15分ほどで冠山・広高山分岐。坂を下り、右岸に渡る。所々、右岸にテープが見える。雪の無い谷や雪上を進む。左岸にテープが見えたが、そのまま右岸を進む。

 水源の平坦地に出る。水源の水路は雪解け水が多い。ホン谷の水源標柱に出る。ガスの雪原を進み、小川林道への分岐道標に出る。水源碑から10分ほどで太田川源流碑。雪道は10cmほど沈む。登山道に進むと雪が無かった。風が吹くと、葉に付いた雫が雨のように落ちる。ミヤマシキミのツボミ。源流碑から30分ほどで冠山。展望地に出るが、ガスで真っ白だった。気温9度。

ヤマドリ
ツルアジサイ
サワグルミ
イタヤカエデ

 早々に登山道を下る。雪山にアチコチからトレースが通る。東へ下る。ほどなく登山道と合流。1100m付近には雪が無かった。クルソン分岐を過ぎる。クルソン谷を左岸へ渡る所で顔を洗った。冠山から1時間余りで魚切林道。気温17度。林道を進むと、鳥の羽が散乱していた。コナラにクマ棚が見える。林道から山へ入る地点にフキノトウが出ていた。

 ヒノキ林を進む。スギ林のササゲ峠を通過。ピークに吉和村地籍図根三角点の標柱がある。ブナに古い爪痕。ミヤマシキミの赤い実。北側に42番鉄塔と女鹿平山が見える。ハイイヌガヤを抜けると、488号線降下地点に出る。その先に42番標柱と41、40番標柱が立つ。41番鉄塔の手前に美和町地籍調査(平成5年)の標柱があった。

 41番鉄塔から引き返し、40番へ山道を下る。ヒノキ林とスギ林を下り、15分ほどで40番鉄塔。そこから尾根を下る。アカマツにクマの爪痕と食痕があった。農道に出ると箱罠が設置されていた。そこから東にビニールハウスの骨組みが続いている。その先に小室井山が見える。送電線が頭上を通る。電気柵が設置されているが壊れている。186号線の手前に廃屋があった。そこからほどなく中津谷へ帰着。

魚切林道に鳥羽が散乱
コナラのクマ棚
吉和村地籍調査
ブナの爪痕
美和町地籍調査
アカマツの爪痕と食痕
 
 
 
フキノトウ
キハダ
ハリギリ
ブナの殻
ミヤマシキミ

 
 ■地名考

 吉和の冠山=カムリヤマ

 「冠山の山名の初見は『吉和村御建野山腰林帳』(1725年)と思われる。『高そん加むり山、この山の内。来留尊佛と申石御座候』と記されている」

 「『芸藩通志』(1825年)吉和村絵図に初めて初めて<冠山>の字が使われている。

 『吉和村絵図』(江戸末期)には片仮名で<カンムリ>とあり、その奥に<ウシロカムリ>の山名が見える。

 冠山はカムリ山でなく<カンムリ山>と呼び、後冠山は<ウシロカムリ山>と呼んでいたようだが、この呼称は、現在も汐原・中津谷で使われている」

 「冠山は山頂の北面に懸崖があり、周辺の山々から眺めた場合、すぐそれとわかる特徴的な山容をしている。『芸藩通志』の佐伯郡山林の項に

 冠山、吉和村の西南にあり、山の形状、冠に似たり

 とあるとおり、冠山という山名は明らかにピークの名として付けられ、山の形が山名となったものである。<後冠山>は、『冠山の後方にある山』という意で、この山には懸崖はない」(「西中国山地」桑原良敏)。


 「西中国山地」「吉和村誌」によると、冠山、後冠山の山名は次のようになっている。

★高そん加むり山(吉和村御建野山腰林帳・1725年)

★かむり山(下調べ書出帳吉和村・1819年・吉和村誌)

★冠山(芸藩通志・1825年)

★カンムリ(吉和村絵図・江戸末期)

★ウシロカムリ(吉和村絵図・江戸末期)

 時代順に考えると冠山の呼称は、はじめ「カムリヤマ」と呼ばれ、後に「冠山」の字が当てられ、「かんむりやま」と呼ぶようになった。


 才乙の冠山=カムリヤマ

 才乙の「冠山」も、元の呼び名は「かむり」と呼ばれ、地元では「かぶりやま」と呼ばれている。

 「『国郡志御用に付しらべ書出帳・大利原』(1819年・文政2年)に1002.9m峯を<大かむり>、その西の916m峯を<小かむり>としてある。『書出帳・草安村』には916m峯を<小かむり>と記され、いずれも平仮名である」

 「島根県側の『旭町史』には<大かぶり><小かぶり>の山名が使われている。周辺の谷、谷中、大利原、才乙の古老数名から聞き取りを行なったが、島根県側も広島県側も<大カブリ><小カブリ>の山名が使用されていた」(「西中国山地」)。


 島根県瑞穂町の冠山=カフリヤマ

 「冠山の呼び方の特殊な例をこの山の北東、島根県の石見町と瑞穂町の町界にある冠山・859m峯に見ることができる。この山は『石見外記』(1820年・文政3年)に<カフリ山>または<カウムリ山>と記され『島根県誌』(大正12年)には<コーブリ山>とルビがふってある。現在も<コウブリ山>と呼ばれている」(「西中国山地」)。


 出雲風土記に冠山=カガフリヤマ

 出雲風土記に冠山がある。出雲風土記、神門郡の山野にある冠山は「かがふりやま」と読む。

 出雲風土記原文
 冠山 郡家東南五里二百五十六歩。〔大神之御冠〕

 訳
 冠山 郡家の東南五里二百五十六歩の所にある。〔大神の御冠(みかがふり)である。〕

 出雲風土記の冠山の由来は、大神の「みかがふり」ということから、山の形が大神の冠に似ているので冠山と呼んでいる。


 古事記の御冠=ミカガフリ

 古事記に「みかがふり」がある。「次に投げ捨てた御冠(みかがふり)に生まれた神の名は、 飽咋(あきぐひ)のウシノの神」とあるように、冠(かんむり)の意として使われている。


 万葉集の可賀布利=カガフリ

 万葉集に「かがふり」がある。

 歌番号892
 麻被 引可賀布利(原文)
 あさぶすま ひきかがふり(かな)
 麻ぶすまをかぶる(かける・ひっかぶる)(訳)

 「かがふり」はかぶる、掛けるの意。

 上代語「かがふり」は、以下のように音韻変化したと思われる。

 かうぶり

 こうぶり・かんむり

 かふり・かぶり・かむり


 万葉集(4238)に「かづらかむ」がある。「かづらを付ける」の意である。


 アイヌ語カムレ

 kamure (kamu-re) カムレ 
 〜に〜をかぶせる

 sikakamure (si-ka-kamure) シカカムレ
 自分・の上に・かぶせる

 kamu-re カムレ
 かぶせる・おおう

 toy-kamure トイカムレ
 土・をかぶせる

 si-ka-kamure シカカムレ
 自分・の上に・かぶせる

 tek-u-kamure テクカムレ
 手を・互いに・合わせる(かぶせる)


 上記の例から次のようにあらわすことができる。

 ka-kamure-i
 カ・カムレ・イ=カカムリ
 上・にかぶせる・もの

 「カカムリ」は古代語「かがふり」に近い。
 「カカムリ」が「カガフリ」に転訛したとも考えられる。

 「カガフリ」は「上にかぶせるもの」の意であり、「かんむり」「かぶる」の意となった。

 
 カムリ山・カフリ山
 
 カムリ カフリ

 鼎冠山 カノウカムリヤマ(長崎県対馬市)

 鍋冠山 ナベカブリヤマ(長崎市)

 冠山 カムリヤマ(福岡県福津市)

 蓑(箕)冠山 ミカブリヤマ(長野県茅野市)

 箕冠山 ミカブリヤマ(新潟県上越市)

 冠着山 カムリキヤマ(長野県)


 

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カシミール3Dデータ

総沿面距離18.0km 標高差732m

区間沿面距離

中津谷
↓ 3.5km
出合橋
↓ 5.4km
小川林道終点
↓ 2.0km
冠山
↓ 2.3km
魚切林道
↓ 4.8km 
中津谷
 

 
 
 
 
ブドウゴヤ谷
小川林道の展望地から
小川林道終点
ヤマドリ ホン谷左岸
ホン谷右岸へ渡る
ホン谷右岸
ホン谷右岸を進む
ホン谷
雪原を進む
水源の水路
ガスの雪原を進む
太田川源流碑
冠山の展望所
冠山から雪原を下る
アカマツの爪痕と食痕
農道から 小室井山
186号線から 大槇山
186号線から 女鹿平山
  
登路(「カシミール3D」+「地理院地図」より)