6:25 中津谷(ナカツヤ) 気温8度 晴れ
7:20 出合橋
8:00 奥出合橋
8:35 ウマダテ橋
9:15 小川林道終点
9:30 冠山・広高山分岐
10:25 ホン谷の水源碑
10:35 太田川源流碑
11:05 冠山
11:45 クルソン分岐
12:00 下のクルソン分岐
12:20 魚切林道
12:35 林道から尾根へ
12:50 ササゲ峠
13:25 877ピーク
13:45 41番鉄塔
14:00 40番鉄塔
14:20 186号線
14:30 中津谷
気温8度の488号線入口を出発。国道はまだ閉じられており、3月15日まで冬期通行止の標識。眼下の中津谷川は雪解け水が白く泡立つ。右岸のスギ林が赤くなっている。ゲートを越えるとすぐ、法面から倒れたスギが国道を塞ぐ。国道は道路上に一杯のスギの枝に覆われている。
少し進むと、またスギの倒木が塞ぐ。国道に倒木が続く。大町谷落口は水量が多い。不栗付橋に雪が残る。左岸に渡ると、また倒木。倒れたスギが縦に割れていた。連続する倒木を進む。山側から倒れた倒木が中津谷川を塞いでいた。
昨年の道路損壊地点は修復されていた。スギ林の倒木が続く。倒れたツガの大木がガードレールを潰し、そこで折れて、幹の片方が谷へ落ちていた。サカサデノ谷を過ぎる。アテツマンサクが咲く。今年は倒木が多い。倒木の向こうに通行止の柵がある。その先で道路が崩れ、幅員が半分ほどになっていた。
中津谷左岸のスギ林 |
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アテツマンサク |
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道路損壊地点から200mほどで鉄橋。そこから少し先でも道路が崩壊し、ガードレールが浮いていた。小川川、オモ川の合流点は白く泡立つ。「一級河川太田川水系中津谷」の標識が見える。1時間ほどで出合橋。488号線の下流側は通行止の柵。
雪が残る小川林道に入る。魚切林道入口は鎖止め。小川川に魚影が見える。小川林道には鉄柵、毛針専用区の標識。スギ林の左に建物が見える。小屋の辺りに雪が残り、そこから先は雪道になる。小川川左岸に雪道が続く。ノウサギの糞が点々と転がる。イノシシの足跡。ここも倒木が続く。ミズノミ谷を過ぎると、倒木が塞ぐ。蛾の繭が落ちていた。
ワサビ田に新葉が出ていた。左岸の小谷は倒木で埋まっている。倒れたスギの窪みを見ると、根が浅い。出発から1時間半ほどで奥出合橋。雪の上にハンノキの果穂がたくさん転がっている。山側から滑り落ちた雪が林道を塞ぐ。進むに連れ、雪道が長くなる。コブドチ谷を過ぎる。雪道にツルアジサイのドライフラワー、イタヤカエデ、ブナの葉。
一級河川標柱 中津谷 |
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蛾の繭 |
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ヤマハンノキ |
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古いクマ糞 |
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冠山公益保全林 |
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ブドウゴヤ谷 |
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冠山公益保全林の道標を過ぎた所にキハダの実。ほどなくウマダテ橋、続いて毛部田橋を渡る。ハリギリの葉。ケブタの谷右岸を進みUターン。ブナの実の殻。1082mピークを回る辺りに古いクマ糞。ガレ場の雪道に小石が散乱して、絶えず崩れているようだ。展望地に出るが、ガスで視界ゼロ。いつもは灌木の中で見えない「冠山公益保全林」の看板が見える。
出発から3時間弱で小川林道終点。ガスが漂っている。山道は雪で不明。ガスでテープも見えにくい。前方でヤマドリが横切る。15分ほどで冠山・広高山分岐。坂を下り、右岸に渡る。所々、右岸にテープが見える。雪の無い谷や雪上を進む。左岸にテープが見えたが、そのまま右岸を進む。
水源の平坦地に出る。水源の水路は雪解け水が多い。ホン谷の水源標柱に出る。ガスの雪原を進み、小川林道への分岐道標に出る。水源碑から10分ほどで太田川源流碑。雪道は10cmほど沈む。登山道に進むと雪が無かった。風が吹くと、葉に付いた雫が雨のように落ちる。ミヤマシキミのツボミ。源流碑から30分ほどで冠山。展望地に出るが、ガスで真っ白だった。気温9度。
早々に登山道を下る。雪山にアチコチからトレースが通る。東へ下る。ほどなく登山道と合流。1100m付近には雪が無かった。クルソン分岐を過ぎる。クルソン谷を左岸へ渡る所で顔を洗った。冠山から1時間余りで魚切林道。気温17度。林道を進むと、鳥の羽が散乱していた。コナラにクマ棚が見える。林道から山へ入る地点にフキノトウが出ていた。
ヒノキ林を進む。スギ林のササゲ峠を通過。ピークに吉和村地籍図根三角点の標柱がある。ブナに古い爪痕。ミヤマシキミの赤い実。北側に42番鉄塔と女鹿平山が見える。ハイイヌガヤを抜けると、488号線降下地点に出る。その先に42番標柱と41、40番標柱が立つ。41番鉄塔の手前に美和町地籍調査(平成5年)の標柱があった。
41番鉄塔から引き返し、40番へ山道を下る。ヒノキ林とスギ林を下り、15分ほどで40番鉄塔。そこから尾根を下る。アカマツにクマの爪痕と食痕があった。農道に出ると箱罠が設置されていた。そこから東にビニールハウスの骨組みが続いている。その先に小室井山が見える。送電線が頭上を通る。電気柵が設置されているが壊れている。186号線の手前に廃屋があった。そこからほどなく中津谷へ帰着。
魚切林道に鳥羽が散乱 |
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コナラのクマ棚 |
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吉和村地籍調査 |
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ブナの爪痕 |
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美和町地籍調査 |
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アカマツの爪痕と食痕 |
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フキノトウ |
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キハダ |
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ハリギリ |
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ブナの殻 |
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ミヤマシキミ |
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■地名考
吉和の冠山=カムリヤマ
「冠山の山名の初見は『吉和村御建野山腰林帳』(1725年)と思われる。『高そん加むり山、この山の内。来留尊佛と申石御座候』と記されている」
「『芸藩通志』(1825年)吉和村絵図に初めて初めて<冠山>の字が使われている。
『吉和村絵図』(江戸末期)には片仮名で<カンムリ>とあり、その奥に<ウシロカムリ>の山名が見える。
冠山はカムリ山でなく<カンムリ山>と呼び、後冠山は<ウシロカムリ山>と呼んでいたようだが、この呼称は、現在も汐原・中津谷で使われている」
「冠山は山頂の北面に懸崖があり、周辺の山々から眺めた場合、すぐそれとわかる特徴的な山容をしている。『芸藩通志』の佐伯郡山林の項に
冠山、吉和村の西南にあり、山の形状、冠に似たり
とあるとおり、冠山という山名は明らかにピークの名として付けられ、山の形が山名となったものである。<後冠山>は、『冠山の後方にある山』という意で、この山には懸崖はない」(「西中国山地」桑原良敏)。
「西中国山地」「吉和村誌」によると、冠山、後冠山の山名は次のようになっている。
★高そん加むり山(吉和村御建野山腰林帳・1725年)
★かむり山(下調べ書出帳吉和村・1819年・吉和村誌)
★冠山(芸藩通志・1825年)
★カンムリ(吉和村絵図・江戸末期)
★ウシロカムリ(吉和村絵図・江戸末期)
時代順に考えると冠山の呼称は、はじめ「カムリヤマ」と呼ばれ、後に「冠山」の字が当てられ、「かんむりやま」と呼ぶようになった。
才乙の冠山=カムリヤマ
才乙の「冠山」も、元の呼び名は「かむり」と呼ばれ、地元では「かぶりやま」と呼ばれている。
「『国郡志御用に付しらべ書出帳・大利原』(1819年・文政2年)に1002.9m峯を<大かむり>、その西の916m峯を<小かむり>としてある。『書出帳・草安村』には916m峯を<小かむり>と記され、いずれも平仮名である」
「島根県側の『旭町史』には<大かぶり><小かぶり>の山名が使われている。周辺の谷、谷中、大利原、才乙の古老数名から聞き取りを行なったが、島根県側も広島県側も<大カブリ><小カブリ>の山名が使用されていた」(「西中国山地」)。
島根県瑞穂町の冠山=カフリヤマ
「冠山の呼び方の特殊な例をこの山の北東、島根県の石見町と瑞穂町の町界にある冠山・859m峯に見ることができる。この山は『石見外記』(1820年・文政3年)に<カフリ山>または<カウムリ山>と記され『島根県誌』(大正12年)には<コーブリ山>とルビがふってある。現在も<コウブリ山>と呼ばれている」(「西中国山地」)。
出雲風土記に冠山=カガフリヤマ
出雲風土記に冠山がある。出雲風土記、神門郡の山野にある冠山は「かがふりやま」と読む。
出雲風土記原文
冠山 郡家東南五里二百五十六歩。〔大神之御冠〕
訳
冠山 郡家の東南五里二百五十六歩の所にある。〔大神の御冠(みかがふり)である。〕
出雲風土記の冠山の由来は、大神の「みかがふり」ということから、山の形が大神の冠に似ているので冠山と呼んでいる。
古事記の御冠=ミカガフリ
古事記に「みかがふり」がある。「次に投げ捨てた御冠(みかがふり)に生まれた神の名は、
飽咋(あきぐひ)のウシノの神」とあるように、冠(かんむり)の意として使われている。
万葉集の可賀布利=カガフリ
万葉集に「かがふり」がある。
歌番号892
麻被 引可賀布利(原文)
あさぶすま ひきかがふり(かな)
麻ぶすまをかぶる(かける・ひっかぶる)(訳)
「かがふり」はかぶる、掛けるの意。
上代語「かがふり」は、以下のように音韻変化したと思われる。
かうぶり
こうぶり・かんむり
かふり・かぶり・かむり
万葉集(4238)に「かづらかむ」がある。「かづらを付ける」の意である。
アイヌ語カムレ
kamure (kamu-re) カムレ
〜に〜をかぶせる
sikakamure (si-ka-kamure) シカカムレ
自分・の上に・かぶせる
kamu-re カムレ
かぶせる・おおう
toy-kamure トイカムレ
土・をかぶせる
si-ka-kamure シカカムレ
自分・の上に・かぶせる
tek-u-kamure テクカムレ
手を・互いに・合わせる(かぶせる)
上記の例から次のようにあらわすことができる。
ka-kamure-i
カ・カムレ・イ=カカムリ
上・にかぶせる・もの
「カカムリ」は古代語「かがふり」に近い。
「カカムリ」が「カガフリ」に転訛したとも考えられる。
「カガフリ」は「上にかぶせるもの」の意であり、「かんむり」「かぶる」の意となった。
カムリ山・カフリ山
カムリ カフリ
鼎冠山 カノウカムリヤマ(長崎県対馬市)
鍋冠山 ナベカブリヤマ(長崎市)
冠山 カムリヤマ(福岡県福津市)
蓑(箕)冠山 ミカブリヤマ(長野県茅野市)
箕冠山 ミカブリヤマ(新潟県上越市)
冠着山 カムリキヤマ(長野県)
カシミール3Dデータ
総沿面距離18.0km 標高差732m
区間沿面距離
中津谷
↓ 3.5km
出合橋
↓ 5.4km
小川林道終点
↓ 2.0km
冠山
↓ 2.3km
魚切林道
↓ 4.8km
中津谷
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