山歩き

二軒小屋…恐羅漢山…三本栃…横川越
2021/4/19

二軒小屋…牛小屋…夏焼峠…恐羅漢山…旧羅漢山…三本栃…オオアカ谷…ボーギノキビレ…水越峠…二軒小屋

■ブナ林 1131m:広島県山県郡戸河内町中ノ甲(点の記 点名:ブナ林) (安芸太田町)
■恐羅漢山(オソラカンザン)1346.4m:広島県山県郡戸河内町横川(点の記 点名:羅漢) (安芸太田町)
■旧羅漢山(キュウラカンザン)1334m:広島県山県郡戸河内町横川 (安芸太田町)

サバノ頭
ヒエ畑ゲレンデ
牛小屋付近
山毛欅乃木小屋
かやばたゲレンデのスイセン
登山道を進む
セラピーデッキ
夏焼峠
ブナ林三角点
管理林道への分岐
登山道のブナ
かやばたゲレンデは進入禁止
立山ルート分岐
雪の登山道
那須付近の雲海
恐羅漢山
十方山
旧羅漢山
平太小屋原
旧羅漢山
広見山
巨石の間を下る
カマノキビレ
三本栃
三本栃
ハゲノ谷林道終点
ハゲノ谷入口
水が溜まる基礎跡 三井木材広見工場跡
レンガのかまど 三井木材広見工場跡
基礎跡 三井木材広見工場跡
ナメラ谷
オオアカ谷
オオアカ谷の滝
トチノキ
スギ林を進む
横川越
マゴクロウ谷水源
スギ林を下る
マゴクロウ谷入口
下山橋
古い石垣
ナメラ渕の滝
十方山林道崩壊地点
水越峠
八百ノ谷
舗装終点 死人谷から北は未舗装
死人谷付近
6:05 二軒小屋 気温2度 晴れ

6:30 牛小屋
7:10 夏焼峠
7:20 1131P(ブナ林三角点)
8:10 恐羅漢山
8:30 平太小屋原
8:45 旧羅漢山
9:20 カマノキビレ
10:00 三本栃
10:30 ハゲノ谷入口
10:55 三井木材広見工場跡
11:30 オオアカ谷
11:45 トチノキ
13:20 横川越(ボーギノキビレ)
14:10 マグクロウ谷入口
15:00 水越峠
15:50 二軒小屋 
   
 夜明けを背景にサバノ頭のシルエットが浮かぶ。気温2度で冷える。車道を進み分岐をぶな板スキー場へ上がる。ゲレンデは昨日の雪で真っ白になっていた。日が当たる立山リフト下のゲレンデを牛小屋へ上がる。牛小屋へ上がる車道が無かった昔、ここから牛小屋へ上がる小道があった。

 牛小屋手前まで進むと雪が覆いはじめる。ゲレンデの上の方はスキーが出来そうだ。ゲレンデを横切り広島大学の山毛欅乃木小屋の横を通り、かやばたゲレンデに進むと、一面の雪の中にスイセンが群生していた。

 スイセンの傍にノウサギの足跡がある。かやばたゲレンデを横切り夏焼へ上がる登山道に出る。百本杉辺りの登山道の雪は疎ら。ナナカマドの葉が出始めている。セラピーデッキで一休み。キブシが咲く。1時間ほどで夏焼峠。

ノウサギの足跡
ショウジョウバカマ
カヤバタのスイセン

 峠から日が当たる登山道を登る。内黒山の山並みが見えてくる。山道は雪で被われる。10分ほどで1131ピーク。雪の林を進む。ヤハチ谷のキビレを過ぎてほどなく管理林道へ降りる分岐。葉を出すナナカマドが多い。

 大きいブナを過ぎるとかやばたゲレンデへ降りる分岐、登山者進入禁止のロープが張られている。ほどなく立山尾根へ降りる登山道の分岐、ここにも進入禁止のロープ。雪は10cmほど積もっている。二軒小屋から2時間ほどで恐羅漢山。彦八の頭の峯の向こうに雲海が見える。

 南へ進む。羅漢山の頭が見え、十方山が見える地点に出る。雲海は那須を覆っているように見える。大きいスギの倒木の横を通る。スギ林の平太小屋原へ下る。恐羅漢山から30分ほどで旧羅漢山。獅子岩に梯子が設置してある。登ってみたが西風が強く立てない。降りて展望岩に進むが、ここも猛烈な風。

進入禁止の立山ルート
ナナカマド
ナナカマド
目印の滑車 扇沢

 早々に北側へ下る。巨石の間を通り、北尾根のスギ林に入る。旧羅漢山から40分ほどでカマノキビレ。ここからジョシのキビレへの山道と分かれてヒノキ林を谷側へ下る。山道は扇沢のゴーロの中を通っている。林下にエンレイソウが咲く。

 目印の滑車がぶら下がる地点に進む。トイシ谷に通る林道終点の鞍部を見てゴーロを下る。キビレから40分ほどで三本栃。現在二本栃になっているが、根本に大きな洞がある。三本栃の又の間にエンレイソウが咲いていた。後ろ側に標柱が残っている。もう文字が薄くなっているが、17年前には「天然記念物 広見の三本栃 周囲八・五米、樹高二十五米、推定樹齢四百五十年」とはっきり見えた。

 スギ林を下る。谷を渡り右谷を渡り林道終点に進む。ハゲノ谷で一休み。終点は石垣が組まれており、橋が架かっていたと思われる。右谷上流左岸にも長い石垣が残っている。林道を進み、三本栃から30分ほどでハゲノ谷林道入口。「広見の三本栃」の道標が立ち、近くに水源林造成事業の標識がある。

三本栃のエンレイソウ
ネコノメソウ
クマシデ

 ハゲノ谷の橋を渡り林道を進む。広見川右岸にノドガエキの谷が見える。落ち口下流は急流の岩盤になっている。湿地にネコノメソウが咲く。橋を渡って右岸を進むと、スギ林の倒木が林道に被さる。倒れたスギの根本を見ると根が短く、倒れ易くなっている。

 ヨコガ谷を過ぎた所にコンクリートの基礎が残っている。コンクリートから鉄筋が出ていた。西側の奥に基礎らしきものが見えたので入って見た。コンクリートの枠が3列並び水が溜まっていた。その西奥にも基礎がある。

 その南側にレンガ積みの壁が残っていた。さらにその南にレンガのかまどのようなものが二基並んでいた。その東側にはコンクリートの長い基礎が残っている。おそらくナメラ谷にあったという「三井木材広見工場」の跡と思われる。ベニヤ板の生産のため昭和17年頃から広見工場で製材し、益田工場へ送っていたという。

イカリソウ
ショウジョウバカマ

 工場跡からすぐに橋を渡り左岸を進む。クマシデが花を下げる。工場跡から200mほどでナメラ谷、奥に滝が見えたので入って見た。滑り落ちる二段の滝が見える。落ち口に基礎のようなものは無かった。広見川対岸にノノハラ谷が見える。薮になっている作業道の入口がある。

 スギ林の奥に大きいトチノキが見える。広見川左岸の崖の上にイカリソウ、ショウジョウバカマが咲く。ハゲノ谷から1時間ほどでオオアカ谷。橋の上にクロモジが咲く。左岸のスギ林に入る。マムシグサが葉を出す。谷の奥に滝が見える。エンレイソウが咲く。

 スギ林下に長いゴーロが続く。スギ林の切れ目に大きいトチノキがある。ヨゴウ谷付近で、ハイイヌガヤかと思ったが触ると痛いのでチャボガヤのようだ。右岸にヨゴウ谷が見える。オオアカ谷の小滝の横を通る。長いゴーロを抜け植林地を進む。スギ林下にミヤマカタバミ、エンレイソウが咲く。

クロモジ
マムシグサ

 2時間ほどでササ薮の横川越。十方山の尾根が見える。猛烈なササ薮を分けてブナの木まで進むと、マゴクロウ谷の水源に出る。水源の谷を下る。エンレイソウが咲く。途中からスギ林を下る。オオカメノキが咲いている。ササ薮を抜けて十方山林道に出た。鞍部から1時間ほど掛かった。

 林道にキケマン、ネコノメソウが咲く。下山橋に立入禁止の立札がある。ネコヤナギが咲く。林道上に倒木がある。キチダイゴヤを過ぎた辺りに古い石積みがあった。ナメラ渕の小滝を過ぎる。ケンノジ谷をUターンしたところにある林道の崩壊地点は以前のままだった。

 鎖止めを過ぎると水越峠。林道に出てからここまで1時間ほど。旧羅漢山と十方山の登山口を過ぎる。八百ノ谷から激しく水が落ちる。キブシが咲く。その先からシビト谷まで舗装されていたが、死人谷の先は未舗装。ミツマタが咲く。水越峠から1時間ほどで駐車場に帰着。

ミツマタ
エンレイソウ
エンレイソウ
チャボガヤ
ミヤマカタバミ
ミヤマキケマン
ネコノメソウ
キブシ
タネツケバナ


地名考

 恐羅漢山という山名

 「恐羅漢山という山名は、広島県戸河内町の呼称である。『戸河内森原家手鑑帳』(1715年)の他村境覚書きにおそらかん山≠ニあるのが初見と思われる」(「西中国山地」桑原良敏)。

 「おそらかん」に漢字が当てられたのは、今のところ、『山県地誌略』(1880年=明治13年・三宅彰編)の「尾曾良寒」が最初である。

 「山県地誌略」によれば、十方山の西に「尾曾良寒」があり、北に那須の山々、東に立岩山、北に大箒山などを示しており、「尾曾良寒」は恐羅漢山であることが分かる。

 その後、恐羅漢山の三角点が選点され(1895年=明治18年)、点名は「羅漢」となっている。陸軍局測量部の地形図(1888年)の大亀谷山が恐羅漢山に改められたのは1895年以降であると考えられる。

 恐羅漢は最初、「おそらかん」と仮名で表されていたが、明治になって「尾曾良寒」の漢字を当て、その後、恐羅漢と表すようになった。

 周辺の対になる山名

 周辺には昔から対になる山名が多い。
 
 冠山 ウシロカムリ山
 深入山 向真入山
 西十方山 東十方山
 外黒山 内黒山
 奥三ツ倉 前三ツ倉(丸子頭)
 恐羅漢山 旧羅漢山

 ソカヒ山は恐羅漢山のことと言われているが、『日本地名箋』(1874年)、安藝、山縣の項に「背向山」があり、「ソガヒ」と仮名書きしてある。「背向山」は後ろの山と言う意である。

『日本地名箋』

背向山(ソガヒ)


 「後ろ」の方言

 宮古弁(岩手県) ウッソ 後ろ

 気仙沼(宮城県) ウッショ 後ろ

 相馬弁(福島県) ウッショ 後ろ

 茨木県 ウッショ 後ろ

 金沢弁 オシロ 後ろ

 伊勢(三重県) オシロ 後ろ・おしり 

 出雲弁
 オッソ 後ろ(出雲・大田)
 (用例 おっそから ぼいちゃげてくー)
 (用例訳 後ろから 追いかけてくる)

 出雲地方における促音便の変化
 sir が促音 ss に変化
 おしろ(後ろ) osiro おっそ osso

 大社方言アクセントにおける類と音調型の対応
 後ろ(usIro/osso)

 出雲・平田 くじける=崩れる
 おっそ山がくじけて(うしろ山が崩れて)

 隠岐五箇村 オシロ 後ろ

 八束町(大根島=島根県)
 オシロマエ 後ろ前

 八丈島(東京都) オシロ 後ろ

 東日本から島根地方にかけて、「後ろ」方言に、ウッショウッソ オッソなど音韻の共通性が見られる。石見、芸北地域に出雲方言の影響があったと仮定すると、次のように推定できる。

 「背向羅漢」(ソガイラカン)と表すと「後ろの羅漢」

 「おっそ羅漢」と表すと「後ろの羅漢」


 昭和3年頃、広見から旧羅漢山へ登る登山道があり、旧羅漢山が羅漢山と呼ばれていたことがわかる。

 『石見物語』(木村晩翠 昭和7年=1932年)
 昭和3年頃の羅漢山登山の記録

 「匹見の大森林と開拓の祖」の項では、索道を上空に見て虫ヶ谷に入り、広見集落を経て登山道を登る。「峻険を攀じ、喘ぎ登る事二時間…海抜四千尺(1212m) 登山者の誰もが味ふ最大の壮快味 見渡す限り雄大なる峰らんの波濤 美濃一帯の連山が鳥瞰」などと記されている。

 
「匹見を彩る文化」の項には「匹見川工業の発電所が大資を投じ三年を経て竣工した。羅漢山の谷水は四百尺の落差を作って電力を発し」と記されている。


 羅漢山と恐羅漢山は双耳峰であるが、羅漢山とオソ羅漢山とみれば、恐羅漢山は「後ろの羅漢山」と意とも考えられる。

 また「ウシロカムリ」の地名から、元は「ウシロラカン」であったとも考えられる。

 usiro-rakan

 ro ra の重複が省略されて、usi-rakan

 u → o の転訛

 osi-rakan oso-rakan のように変化した。


 アイヌ語の「後ろ」

 si-oka-un シ・オカ・ウン
 自分・の後・の方へ(萱野茂 アイヌ語辞書)

 si-y-oka シヨカ
 自分・挿入音・の後(田村すず子 アイヌ語辞書)

 この例から次の言葉が考えられる。
 si-oka-hi シ・オカ・ヒ(ソカヒ)
 自分・の後・の所

 アイヌ語では母音は二つ続くと、どちらかが省略される。



 三本栃と処女林の皆伐

 
昭和22年に伐採された虫ヶ谷のトチの木は実に巨大なもので、虫ヶ谷の大谷重光の談によると切株の上は優に畳八敷(周囲14m)に達するという。これこそ匹見町内では見たこともない巨木だったという(『石見匹見町史』)。

 三本栃は根本にある匹見町教育委員会の標柱では、周囲8.5m、樹高25m、推定年齢450年という。ハゲノ谷の原始林は皆伐されたが、三本栃は奇跡的に残った。かつては三本栃のような巨木が覆う谷だったと思われる。

 三本栃は二度伐採される危険があった

 禿ノ谷鈩(タタラ)による伐採

 「禿ノ谷・オウコウ・河崎原で藤井氏によって鈩(たたら)が行われていた」(天保年間『石見匹見町史』)。

 『たたらの立地条件は「粉鉄七里に、炭三里」といわれ、砂鉄の採取範囲を七里(約21Km)としているのに対して、製炭範囲は三里(約12km)以内に限定したため、広大な山林を必要とした』(『和鋼博物館』HP)。

 
ハゲノ谷入口にあった禿ノ谷鈩は周辺の山林を広く伐採したと思われる。

 ベニヤ板生産のための広見の原木伐採

 『三井木材益田工場は…ベニヤ板を生産することになった…二百年ないし三百年のナラ・ブナの純林で被われた処女林があり…広見のナメラ谷に広見工場を設け(昭和17年)、原木を伐採の上、この工場で製材し益田の本工場へトラックで送ったのである。広見の原木伐採は、ハゲノ谷・ミチガ谷・ヨコオノ谷・ナメラ谷・ノノハラ谷において行ったもので、さしも原始林の全部を切り払ったのである。広見工場の絶頂期には百五十人の労役者がここに働いていた。

 …昭和36年にもなると、広見の原木も伐りつくしたので、ボルネオ島のサンダカンからラワン材を浜田港に輸入し、さらにトラックで搬入して今日に及んでおる』(『石見匹見町史』矢富熊一郎)。

トラックで原木を運ぶ

『索道のしおり』(匹見ウッドパーク)

 
 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

カシミール3Dデータ

総沿面距離20.6km
標高差636m

区間沿面距離
二軒小屋
↓ 3.3km
夏焼峠
↓ 3.1km
旧羅漢山
↓ 6.1km
オオアカ谷
↓ 3.0km
マグクロウ谷
↓ 5.1km
二軒小屋
 

『石見物語』木村晩翠 昭和7年=1932年

「匹見の大森林と開拓の祖」(昭和3年頃の旧羅漢山登山)
「匹見を彩る文化」(羅漢山=旧羅漢山)
 
 
1974年(昭和49年)の空中写真+カシミール3D ハゲノ谷流域ば伐採されている
 
広見地区のロクロ

『索道のしおり』(匹見ウッドパーク)
合板工場の面々

『索道のしおり』(匹見ウッドパーク)
合板工場の面々」のカラー化
 
かやばたゲレンデ
恐羅漢山
十方山
旧羅漢山
広見山
三本栃
三本栃
三井木材広見工場跡
三井木材広見工場跡
三井木材広見工場跡
三井木材広見工場跡
 
登路(「カシミール3D」+「地理院地図」より)