山歩き

中津谷…小川林道…冠山…魚切林道
2020/10/11

中津谷…488号線…小川林道…ホン谷…水源碑…冠山…魚切林道…ササゲ峠…中津谷

■冠山(カムリヤマ・コウソンカムリ)1339m:広島県佐伯郡吉和村字吉和西(点の記) (廿日市市)

中津谷
中津谷川
側溝から上がってきたアナグマ
不栗付橋
積まれた瓦 トロン谷付近
サカサデノ谷
小川入口
出合橋
2号橋手前から左岸に入る作業道
小川林道入口
ショベルカーが林道を塞ぐ
手入れされているワサビ田
シラグチ谷の小滝
馬立橋
毛部田橋
ケブタの谷
ウシロカムリ山
冠山
林道終点
登山道を進む
冠山・広高山分岐
ホン谷を進む
ホン谷水源
朽ちた水源の碑
冠山登山道に出る
冠山
広高山
恐羅漢山・十方山を望む
クルソン分岐
魚切林道
魚切林道から下る登山道
植林地の林道
ササゲ峠
鉄塔道
41番鉄塔
急坂を下る
488号線に出る
6:35 中津谷 気温13度 晴れ
 

7:30 出合橋
8:15 奥出合橋
8:50 ウマダテ橋
9:25 小川林道終点
10:10 ホン谷の水源碑
10:20 冠山登山道
10:40 冠山
11:20 クルソン分岐
11:45 魚切林道
12:10 林道から尾根へ
12:25 ササゲ峠
12:50 877ピーク
13:10 41番鉄塔 
13:35 488号線
13:55 中津谷 


 488号線の中津谷を出発しようとすると、車道の側溝からアナグマが出てきた。道路に上がったり、側溝に降りたり、忙しくしている。苔むした法面を登ろうとするが、まだ側溝にもどり、草むらに頭を突っ込む。側溝のゲートを越えて下流の方へ行ってしまった。

 国道を進む。ミツバウツギにハート形の実が付いている。41番鉄塔へ上がる道は草が刈られていた。不栗付橋から見る中津谷川は穏やか。トロン谷落口の渡場があった地点の車道に瓦が積み重ねてあった。その付近の山側は平たん地になっている。

 実を付けたミツバウツギが点々とある。ベニバナボロギク、シシウド、アキノキリンソウが咲く。吉和村漁協の定札看板がある。岩のサカサデノ谷を過ぎる。9月1日から2月末まで禁漁の標識がある。大きい淵を見る。小川入口の曲流部に進む。

車道に出てきたアナグマ
側溝のアナグマ
ミツバウツギ

 1時間ほどで出合橋。エゴノキがたくさんの実を下げる。橋を渡ると吉和村漁協の小川川の告知掲示板がある。2号橋手前から左岸に作業道が入っている。小川林道入口はゲートが閉じられ通行止めになっていた。アシガ谷右岸に作業道が入っている。

 3号橋を渡る。オトコヨウゾメ、ミツバウツギが実を付ける。ミズノミ谷手前でショベルカーが林道を塞いでいた。アキチョウジが咲く。支谷のワサビ田は手入れがされている。コマユミが真っ赤な実を下げる。キャッチアンドリリースの標識があり、持ち帰りできませんと書かれている。

 林道上にイノシシの掘り返した跡が続く。棘の無いサンショウが実を付ける。出合橋から45分で奥出合橋、一休みしてシラグチ谷へ進む。林道沿いの谷は滝が連続する。ニシノヤマタイミンガサ、シシウド、モミジガサがある。コブドチ谷を過ぎる。冠山公益保全林の標識がある。

ベニバナボロギク
シシウド

 馬立橋を渡る。ヤマブドウが実を付けていた。黒くて大きい実を一つ食べてみたが酸っぱい。毛部田橋を渡る。上流に小滝が見える。林道はケブタの谷をUターンする。アケボノソウが咲き、キブシが実を下げる。イヌタデ、オオネバリタデが咲く。

 林道が南向きに変わるとウシロカムリ山が見えてくる。展望地に出ると冠山が見える。冠山公益保全林の看板が埋もれていた。ヌルデが葉を伸ばす。ブドウゴヤ谷を過ぎると林道終点。クマ注意の木柱、冠山登山道の道標がある。ホン谷左岸の山道を進む。

 急な登りの木の階段を進むと、冠山・広高山の分岐に出る。山道はホン谷へ下り、右岸へ渡る。キバナアキギリが咲き、フウリンウメモドキが赤い実を下げる。水源の道を進み、朽ちた木製の源流碑に出た。林道終点から45分ほどだった。テープが続く道を進む。コマユミが実を下げる。93回山の会の紙の標識が落ちていた。

アキノキリンソウ
エゴノキ

 冠山登山道に出る。小川林道への小さい道標がある。登山道を北へ進む。ウリハダカエデの落ち葉が多い。20分ほどで冠山。北の展望地に出る。広高山、大神ヶ岳、雲が掛かる恐羅漢山、十方山、吉和の里を見渡す。山頂へ戻り一休み。

 ブナ林を下る。40分ほどでクルソン分岐、山頂から1時間ほどで魚切林道に出た。東側には立入禁止の看板があった。林道を北へ進む。ヌルデが実を付け、実のような虫えい(ヌルデミミフシ)が付いているものもあった。植林地の幹が林立する林道を進む。

コマユミ
アサクラザンショウ
ノウサギの糞
美和町地籍調査

 林道がカーブするところで、東の尾根に入る。ミヤマシキミの赤い実が多い。ノウサギの糞が塊ってあった。台風の風によるものか、ヤドリギの実が落ちていた。オトコヨウゾメの赤い実。ササゲ峠に下る。太いアカマツが一本立っていた。877ピークを過ぎる。

 整備された鉄塔道に出る。42、41、40を示す標柱がある。41番鉄塔へ進む。植林地に囲まれ展望はない。引き返すと「平成五年度美和町地籍調査」の標柱が立っていた。南側から鉄塔道が上がっている。北側の急な山道を下る。200mの高度差を一気に下り、国道に出た。 

ジンジソウ
ジンジソウ
ジンジソウ
ニシノヤマタイミンガサ
モミジガサ
ヤマブドウ
アキチョウジ
アケボノソウ
キブシ
キバナアキギリ
フウリンウメモドキ
ヌルデ
ヤドリギ
オトコヨウゾメ
オクモミジハグマ

 
 ■地名考

 冠山(1339m)の呼称は、はじめ「カムリヤマ」と呼ばれ、後に「冠山」の字が当てられ、「かんむりやま」と呼ぶようになった。冠山の西の峯は「ウシロカムリ」と呼ばれている。

 「冠山の山名の初見は『吉和村御建野山腰林帳』(1725年)と思われる。『高そん加むり山、この山の内。来留尊佛と申石御座候』と記されている」(「西中国山地」桑原良敏)。

 「高そん加むり山」は、「コウソンカムリヤマ」と呼ぶのだろう。「コウソンカムリ」は「クルソンカムリ」が訛ったものと思われる

 才乙の「冠山」(1002m)は、元の呼び名は「かむり」と呼ばれ、地元では「かぶりやま」と呼ばれている。

 才乙の冠山の北東の島根県瑞穂町の「冠山」(859m)は、コウブリ山、コーブリ山、カウムリ山などの名があり、元の呼び名は「カフリ山」であった(『西中国山地』)。

 出雲風土記に冠山がある。出雲風土記、神門郡の山野にある冠山は「かがふりやま」と読む。

 「郡家の東南五里二百五十六歩の所にある。〔大神の御冠(みかがふり)である〕」(出雲風土記)。

 出雲風土記の冠山の由来は、大神の「みかがふり」ということから、山の形が大神の冠に似ているので冠山と呼んでいる。

 冠は古くは「かがふり」といった。頭にかぶるもの、かぶる、位階、頂く・受けるなどの意がある。

 古事記、万葉集に冠(かがふり)がある。

 古事記の冠(カガフリ)

 「次、於投棄御冠飽咋之宇斯神」(原文)

 「次に投げ棄つる御冠(みかがふり)に成りませる神の名は、飽咋の大人(あきぐひのうし)の神」

 ここにいう冠(かがふり)とは帽子のことで、頭にかぶるもの。

 万葉集の冠(かがふり)

 万葉集に「かがふり」を含む歌が3首ある。 

 歌番号892
 麻被 引可賀布利(原文)
 あさぶすま ひきかがふり(かな)
 麻ぶすまをかぶる(かける・ひっかぶる)(訳)

 「かがふり」はかぶる、掛けるの意。

 歌番号3858
 五位乃冠(原文)
 ごゐのかがふり(かな)
 五位の位階(冠は位を示す文書に代わった)

 「かがふり」は位を示す。
 古くは位階によって冠の色が違った。

 歌番号4321
 美許等加我布理(原文)
 みことかがふり(かな)
 天皇の命令を受け(訳)

 「かがふり」は受けるの意。
 「かがふり」は古代には、「かんむり」「かぶる」「うける」の意があったことがわかる。

 カガフリ カウブリ カウブル カウムル カブリ カムリ カンムリ などと変化したと考えられる。

 万葉集(4238)に「かづらかむ」がある。

 「縵可牟」(かづらかむ=原文)で、「かづらを被る」の意である。「かぶる」「かむる」の用例は古くからあったと思われる。


 次のようなアイヌ語がある

 kamure (kamu-re)カムレ ?
 〜にかぶさる・させる
 〜に〜をかぶせる

 sikakamure (si-ka-kamure)シカカムレ?
 自分・の上・〜に〜をかぶせる
 〜を頭の上にかぶる
 (以上『沙流方言辞典』)。

 kamu-re カムレ?
 かぶせる・おおう
 (『萱野茂アイヌ語辞典』)

 kamure カムレ?
 かぶせる・おおう・布をかぶせる
 (『アイヌ語』方言辞典)

 korkoni ham kamure コルコニ・ハム・カムレ?
 フキの葉をかぶせる

 si-ka-kamure シカカムレ?
 自分の上にかぶせる

 tek-u-kamure テクカムレ?
 手を互いに合わせる

 kamu カム
 かぶさる
 (以上『アイヌ語電子辞書』)

 上記の例から次のようにあらわすことができる。

 ka-kamure-i
 カ・カムレ・イ=カカムリ
 上・にかぶせる・もの

 「カカムリ」は古代語「かがふり」に近い。
 「カカムリ」が「カガフリ」に転訛したとも考えられる。

 「カガフリ」は「上にかぶせるもの」の意であり、「かんむり」「かぶる」の意となった。
 

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カシミール3Dデータ

総沿面距離20.0km 標高差727m

区間沿面距離

中津谷
↓ 3.7km
出合橋
↓ 6.1km
小川林道終点
↓ 2.3km
冠山
↓ 2.7km
魚切林道
↓ 5.2km 
中津谷
 

 
 
 
 
冠山 小川林道から
広高山と大神ヶ岳
恐羅漢山と十方山
吉和の里
  
登路(「カシミール3D」+「地理院地図」より)