山歩き

立岩ダム…境谷…立岩山…日の平山
2019/11/3

立岩ダム…大休ミの丘…境谷…市間山南尾根…立岩山…日の平山…下山広瀬…大井原山…県道…立岩ダム

■立岩山(タテイワヤマ)1134.9m:広島県山県郡筒賀村大字上筒賀字立岩山(点の記 点名:観音) 安芸太田町
■日の平山(ヒノヒラヤマ)1091.3m:広島県廿日市市吉和字下山広瀬(点の記)
■下山広瀬(シモヤマヒロセ)882.9m:広島県廿日市市吉和字下山広瀬(点の記)
■大井原山(オオイハラヤマ)860.5m:広島県廿日市市吉和字駄荷(点の記 点名:石原=イシワラ)

立岩ダム
押ヶ垰集落
立岩ダム
立岩貯水池
立岩ダム下流
大休ミの丘へ入る道
大休ミの丘のクマ糞 中はクリーム色
境谷へ下りる山道
小滝を越える
谷の分岐 左にワサビ田跡がある
左岸の石垣
右岸の石垣
伏流水の出口の石積
炭焼跡の窪み
境界柱のある登山道に出る
クマ棚
ウリハダカエデが覆う山道
十方山は雲が掛かる
市間山と手前の紅葉
霞む押ヶ垰集落
日の平山
立岩観音
坂原分岐
日の平山
作業道終点に出る
切開き山道を下る
小室井山
薮の中の882m三角点
ハグリ谷水源に下りる
作業道に出る
大井原山三角点
県道に出る
小松原橋上流の湖水面
水没した樹木
6:35 立岩ダム 曇り 気温11度
 

6:55 大休ミの丘
7:35 境谷
8:10 ワサビ田石垣
9:10 市間山南の尾根
9:55 立岩山
10:25 坂原分岐
10:35 日の平山
11:00 作業道終点
11:45 下山広瀬三角点
12:05 ハグリ谷水源
12:25 作業道
12:45 林道
13:05 大井原山三角点
13:40 県道296号
14:00 立野キャンプ場入口
14:15 十方山登山口
15:15 立岩ダム


 明るくなったところで出発。曇り空のためか、渋い紅葉が山肌を覆う。断層上の押ヶ垰集落を見て、ダムへ下る。日当たりにアキノキリンソウが咲いている。ダムの壁を見ると、水平にクリーム色の線が走る。修理した跡なのだろうか、老朽化したダムの顔色を見ているようだった。

 湖面は風も無く対岸の峯が鏡のように映っている。ダム下流の谷は両岸が紅葉の終わりを告げる色に染まっている。右岸に渡り山道に入るとすぐ鉄塔へ上がる道に標柱があり、ダム東側の山腹へ山道が上がっている。落葉が覆う山道を登る。イノシシの掘り返した跡が多い。

 15分ほどで大休ミの丘入口の尾根に出る。そこから東へ山道が通じている。鉄塔道を示す標柱が倒れている。南へ少し入った所にも標柱が倒れていた。さらに東へ進んでいると、イノシシが南側の山中へ走り去った。イノシシが居た湿地には多数の足跡があった。

アキノキリンソウ

 タユウ谷水源の湿地を渡り、尾根に出る山道に入るとすぐ大きいクマ糞があった。表面は黒いが枝で突くとクリーム色だった。ドングリやクリを食べた糞のようだった。進んで行くとクマ糞があちこちにあった。コナラの枝が散乱し、クマ棚もあった。

 タユウ谷へ向かう分岐道がある。小尾根を越えて谷へ下りる山道を進む。だんだんと境谷の水音が大きく聞こえるようになり、眼下に泡立つ水流が見えた。ちょうど10m滝付近だった。山道が谷側へ入る所で足許が悪くなる。山道が薮で覆われ寸断された所で谷へ下りる。

 数分谷を進むと、5mほどの小滝がある。その先で谷の分岐に出る。左側にはワサビ田跡がある。右岸に上がると踏み跡がある。おそらくワサビ田へ入る山道だろう。左谷にもイノシシの踏み跡があった。

マムシグサ

 分岐から数十メートル進むと両岸に石垣が残っている。ワサビ田跡である。ワサビはもう見られない。おそらく大雨のたびに流されたのだろう。石垣は両岸に50mほど続いている。ノイバラに実が付いていた。谷の水源の末端に石垣が組まれていた。そこから上流は伏流水になったいた。ここから出る湧き水をワサビ田に利用したのだろうか。

 伏流水の谷を登る。モミジガサが実を付ける。ササの谷を進むと大きな窪みがあった。石積が残る炭焼跡だった。サラシナショウマが実を付ける。境谷左谷の水源を登り、小尾根に上がる。オトコヨウゾメの実が残る。そこからほどなく尾根の登山道に出た。ちょうど境界柱が3本立っている所だった。ダムから2時間半ほどで、気温は12度、北風が吹き空は雲が覆う。

 落ち葉が埋まる登山道を南へ進む。1071ピーク手前にクマ棚があった。ブナの黄葉を見上げる。倒れたブナは以前計測したことのある2,9mブナだろうか。実を付けたマムシグサがあった。登山道はウリハダカエデの落ち葉で真っ赤な絨毯になっている。

アキノタムラソウ

 尾根に出てから45分ほどで立岩山。向かいの十方山は雲が掛かっていた。眼下に押ヶ垰集落と立岩貯水池を望む。市間山の先も霞んでいるが、手前の山は全体が紅葉していた。岩尾根を進む。前方に日の平山が見える。立岩観音に下る。岩下に椀があった。

 立岩山から30分ほどで坂原分岐。国道186号線への道標がある。そこから10分ほどで日の平山。周辺は薮で覆われていた。ササ薮の西尾根を下る。20分ほど下ると作業道終点に出た。作業道は南へ下りている。作業道から尾根に入ると、ササが刈られ切り開かれていた。

 切開き道を下る。林間から小室井山が見える。途中、切開き道と分かれ、西側のヒノキ林を下る。黄葉したクロモジ群落の尾根を下る。途中、南へ下り平岩で一休み。そこからほどなく882m三角点。薮の中に新しく見える三角点があった。各面に「基本」「062 715」「国地院」「四等三角点」の書かれていた。

ノササゲ

 三角点から南へ下り、ハグリ谷水源に下りる。谷を少し下って山腹を回り作業道に出た。作業道を進む。所々、草薮になっている。20分ほどで林道に出る。林道は東側は駄荷へ出る。林道を西へ進み、途中、分岐を南へ進み大井原山三角点に出る。林道傍に三角点があった。

 林道をジグザグに下り、三角点から30分ほどで296号線に出た。林道は鎖止めがしてあった。時折雨粒が落ちてきたが、雨にはならなかった。20分ほどで立野キャンプ場入口。小松原橋に出ると、橋の上流が湖水面になったいた。ダムに相当水が溜まっている。貯水池左岸を進むと、湖岸の木々が水没していた。右岸の紅葉を眺めながら1時間ほどでダムに帰着。
  

リンドウ
チャノキ
キクバヤマボクチ
ヤクシソウ
モミジガサ
ノイバラ
サラシナショウマ
イヌタデ
ハイイヌガヤ
フシグロセンノウ
ニノ原谷のスズメバチの巣
カワラナデシコ


■地名考


 立岩山

 「立岩山の名は、『国郡志御用に付下調べ書出帳・上筒賀村』(1819年)に見えるし、、『芸藩通志』上筒賀村絵図(1825年)にも記されている」

 「『芸藩通志』(1825年)の山県郡内古蹟名勝の項を見ると

 石窟 上筒賀村、立岩山上にあり、中に実乗観音あり

と記されている。…『実乗』は読み方はわからないが地名ではないかと思われる。…吉和村側の村人にもこの峯に観音のあることはよく知られており、『ミノジの観音』と呼ばれている。『ミヨウジ』とか『ミヨジ』と言う人もある。『ミノジ』とは何であろう。…『吉和村絵図』(江戸末期)には、この峯付近の山に『三の氏山』という山名が付されている。『ミノジ』は『ミノウジ』が転訛したものと思われる。

 ミノウジ観音 ミノジ観音 実乗観音と変化してきたもので実乗は当て字ではなかろうか」(「西中国山地」桑原良敏)。


 タテは『険しい』という意

 「立岩山の山頂付近の岩塊には呼称が付いていないようだ。そうなると立岩山は『立岩という岩塊のある山』という意ではないと考えざるを得ない。タテは『険しい』という意で、タテ岩は『岩が立っているように険しい』という意味となり、立岩山は、単に『険しい山』という意味となる。恐羅漢山の立山尾根も、これと同じように『険しい尾根』という意と解してよかろう」(「西中国山地」)。

 桑原氏は、立岩山は「立岩のある山」の意でなく、「険しい山」の意としている。


 「tate タテ」は、島根県隠岐島では共有の林の意。 

 奈良県十津川のタテカベは絶壁の意。

 アイヌ語 tap は肩の意で、山や崖などの上がった上の部分のこと。

 tap-te タプテ は「(山の)肩の所」の意。

 アイヌ語 tapkop タプコプは、「孤山」の意で、
 tapkop=tap-ka-o-p タプカオプ 「肩・の上・にある・もの」の意。

 アイヌ語 ta は、「打つ」「断つ」「切る」などの意がある。
 ta-te タテ は、「断つ・所」の意となる。

 アイヌ語 iwa イワ は、「岩山、山 この語は今はただの山の意に用いるが、もとは祖先の祭場のある神聖な山をさしたらしい。語源は kamuy-iwaki-i (神・住む・所)の省略形か」(『アイヌ語小辞典』)。

 「ミノジ観音」がある立岩山は神聖な山の意であったのかもしれない。


 「芸藩通志」上筒賀村絵図の立岩山

 「芸藩通志」上筒賀村絵図では、市間山のとなりに立岩山が描かれ、大歳神社の奥に立岩山があるように見える。

立岩山と市間山

「芸藩通志」上筒賀村絵図



 「芸藩通志」吉和村絵図の立岩

 十方山の南、吉和川の右岸に立岩の地名、左岸に大畠、一ノ原、二ノ原の地名が見える

立岩山と市間山

「芸藩通志」吉和村絵図


 「芸藩通志」戸河内村絵図の清水

 立岩ダム下流右岸の清水は「セイズイ」と呼ぶが、絵図では「シミヅ」となっている。シミヅの西側に押ヶ垰の地名が見える。

清水(セイズイ)の地名

「芸藩通志」戸河内村絵図



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

カシミール3Dデータ

総沿面距離18.7km
標高差636m

区間沿面距離
立岩ダム
↓ 3.4km
市間山南尾根
↓ 3.1km
日の平山
↓ 5.4km
県道
↓ 6.8km
立岩ダム
 

 
立岩ダム下流
境谷水源のワサビ田跡 830m付近
市間山
立岩貯水池
立岩観音
立岩貯水池
1023ピーク東から見た作業道と冠山
北側の周回路へ入る作業道
沼長トロ山と作業道
 
登路(「カシミール3D」+「地理院地図」より)