山歩き

牛小屋…カメイ谷…ジョシのキビレ…三本栃
2017/11/1

牛小屋…夏焼峠…台所原…亀井谷…ジョシのキビレ…ハゲノ谷…三本栃…旧羅漢山…恐羅漢山…牛小屋

■旧羅漢山(キュウラカンザン)1334m:広島県山県郡戸河内町横川 (安芸太田町)
■恐羅漢山(オソラカンザン)1346.4m:広島県山県郡戸河内町横川(点の記) (安芸太田町)

恐羅漢山
登山道の紅葉
夏焼峠
早手のキビレ
管理林道
聖山を望む
中之甲林道に出る
台所原
ブナ林の紅葉
カメイ谷右岸の石垣
小滝の上を渡る
カメイ谷左岸の石積
広見入口
カメイ谷からテープに沿ってジョシ谷に入る
ジョシ谷分岐を右へ
ジョシのキビレへのトラバース
ジョシ谷の紅葉
ジョシのキビレ
ミチガ谷を下る
ハゲノ谷林道入口
三本栃
三本栃の標柱
植林地を登る
巨石の横を通る
広見山を望む
旧羅漢山
十方山
恐羅漢山
風車群
カヤバタゲレンデトップから十方山を望む
1131Pから砥石川山への尾根
カヤバタリフト始点
6:40 牛小屋 晴れ 気温3度

7:15 夏焼峠
7:30 早手のキビレ
8:15 中之甲林道
8:20 台所原
8:50 カメイ谷
9:45 ジョシ谷
11:10 ジョシのキビレ
11:30 ミチガ谷
11:55 トイシ谷
12:00 ハゲノ谷
12:10 ハゲノ谷林道終点
12:45 三本栃
13:35 カマのキビレ東
14:20 旧羅漢山
14:50 恐羅漢山
15:10 カヤバタのキビレ
15:45 牛小屋


 気温3度で寒い風が吹く牛小屋を出発。朝日に輝く紅葉の恐羅漢山が美しい。夏焼峠に向かう登山道に入る。樹林は日に照らされ、真っ黄色に染まる。30分ほどで夏焼峠。峠から10分ほどで東側が開けた1131ピーク。北側に1166ピークが見える。

 ピークから5分ほどで早手のキビレ。西側の登山道を下ると15分ほどで管理林道に出る。草が伸びる林道を進む。林道は1030m標高に平坦な道が西に続いている。マムシグサが赤い実を付けていた。北側が開け、天杉山、野田原の頭の植林地の山に紅葉が点在しているのが見える。

 クロモジが黄色に染まる。水量多い小谷に滝が見える。林道が北側へ曲がる所で北側が開け、聖山が見える。さらに林道を進むと、日に照らされた中川山が迫ってくる。広場に出て、中ノ甲国有林の看板のある中之甲林道に出る。そこから5分ほどで台所原。

マムシグサ

 台所原は以前はササ薮だったが、広島山稜会が台所原からカメイ谷までの登山道を整備され、歩きやすくなっている。台所原は四差路になっており、恐羅漢山、中ノ川山への山道が通っている。美しい紅葉のブナ林を進む。県境を越えて、カメイ谷側へ入ると、日に照らされた谷側の紅葉がさらに美しかった。

 整備された山道をカメイ谷へ下る。所々、刈られたササが残っている。33曲りをジグザグに下る。北東から下りる小谷に出た所で一休み。そこからカメイ谷右岸の山道を進む。道沿いに石垣が残っている。カメイ谷の小滝の上流で山道は左岸に渡る。雨で水量が少し多かった。

 左岸にも石垣がある。少し進み右岸に渡る。アマスギ谷左岸に石垣がある。アマスギ谷を渡り、少し進むと道が消失するが、再び右岸の道を進み、銅山跡付近から左岸に渡る。ジョシ谷へピンクのテープがある。少し下ると、幹に「広見入口」と書かれた古い掘痕が残っていた。

アケボノソウ

 テープに沿ってジョシ谷に入る。この山道はジョシのキビレまで広島山稜会によって整備された。左岸に踏み跡がある。地形図に破線道があるが、途中から分岐を右谷に入る。しばらく登ると西側へのトラバース道がある。樹林の間をジグザグに登る。ホオノキの下に赤い実と黒い実が落ちていた。見上げると茶色のホオノキの葉が縮んでいた。

 ジョシ谷側の樹林の紅葉が綺麗だった。イイギリの葉が落ちている。ミズナラの大木の横を通る。ジョシ谷から1時間半ほどでジョシのキビレ。東側の尾根のササが少し刈ってあった。キビレからスギ林を下る。20分ほどでミチガ谷。右岸の山道を進む。途中二か所で渡渉する。最後にトイシ谷を渡ると広見山登山口で、広見林道が東の山へ上がっている。

 林道の真ん中にアケボノソウが咲いていた。広見山登山口から5分ほどでハゲノ谷入口。広見の三本栃の道標がある。ハゲノ谷林道にオオウラジノキの実がたくさん落ちていた。10分ほどでハゲノ谷林道終点。休憩してハゲノ谷を渡り、スギ林を進む。さらにハゲノ谷右谷を渡り、ハゲノ谷左岸の山道を進む。

オオウラジロノキの実
三本栃
標柱は2004年の写真

 小谷を渡り、植林地を登る。ハゲノ谷林道終点から30分ほどで三本栃。栃の木の紅葉が綺麗だった。三本栃の後に回ると標柱が立て掛けてあった。見えにくくなっているが、2004年に立っていた匹見町教育委員会の標柱では周囲8.5m、樹高25m、推定年齢450年と書かれていた。

 三本栃から植林地を登る。広見林道から通じている林道終点の鞍部を見ながらゴーロの山道を登る。三本栃から40分ほどでカマのキビレ東の尾根に出る。尾根の西側のササが少し刈ってあった。尾根沿いにジョシのキビレへ通じているかもしれない。ユキザサの赤い実が残っていた。

 カマのキビレから東の尾根を登る。山道は巨石の横を通る。カマのキビレから40分ほどで旧羅漢山。展望岩に上がり、眼下の山並みを眺める。風も無く静かだった。恐羅漢山へ進む。ブナの葉が黄色に染まる。十方山への展望地に出る。30分ほどで恐羅漢山。眼下に紅葉の山々が広がっていた。北側の尾根上に風車群が続いている。

 北尾根を下る。葉が落ちたサワフタギのブルーの実が残っていた。カヤバタのキビレから山道を東へ下る。ゲレンデに出ると紅葉の山並みが眼下に広がる。山道はゲレンデまでで、そこからは適当にゲレンデを下る。恐羅漢山から砥石川山に掛けての紅葉が見事だった。カヤバタのキビレから30分ほどでカヤバタリフト始点に下りた。 

ブナ
ブナ
サワフタギ
ホオノキの実
ホオノキ
ユキザサ
ミヤマシキミ
クサギ
クロモジ
イイギリ
三本栃
三本栃
三本栃
 
半四郎山と広見山
春日山
深入山
内黒峠

地名考


 春日野満の『ひきみ川』の「広見川の章」に次のように記されている。

 「広見川の流れは、中国山地を北流する谷川の中では、一番の急流で、広見の里を出外れた処から下流一里余に亘って、奇岩激流、川に沿って上り下りする事が出来ない難所である。広見の里に入ってからは、多少流れもゆるやかで、川をはさんで両岸に耕地が開けた里である…部落の下の方から数えて見ると、ゲジガ谷、八が平谷、わる谷、新山谷、霧が平谷、火の谷(オモ谷)、せいこ谷、地よし谷(ジョシ谷)、大赤谷等、相当の数にのぼるのである。その中の火の谷は、すこし登った所で二つに別れて、右の支流を子谷(ハタガ谷)と云っている。この子谷が火の谷に合流する地点の下の方は、中の原と云って、耕地も広く、従ってその周辺には人家も点在していた」

 「西中国山地」(桑原良敏)の五里山の項で記されている地名とほぼ同じ地名が『ひきみ川』に記されている。京ツカ山から北へ下りるジョシ谷は、『ひきみ川』の「地よし谷」のことである。「地よし」は「ちよし」「じよし」とも読めるが、訛って「ジョシ」谷と呼ぶようになったと思われる。

 ジョシ谷の落ち口には石垣が残っており、水田跡と思われる。それは「地良」であったのかもしれない。カメイ谷のジョシ谷落ち口には「寺床」「イヨキリ滝」「銅山跡」などがある。


 カメイ谷はオオカメ谷とも呼ぶ。オオカミの方言以下がある。

 オーガミ(茨木・千葉)、オイノ(青森・岩手・新潟)、オーイン(新潟、福井)、オーガメ(千葉)、オーカメ(静岡)、オーカメサマ(神奈川)などである。

 大亀谷はオオカミの転訛であるかもしれない。

 オオカメ谷の元の名がオオカメイであれば、オオカミのアイヌ語、オーセカムイに近い。オーカムイ、オオカメイ、オオカメのように転訛した。

 「嘯き」(うそぶき)は、@口をすぼめて息を吹き、音を出す、口笛を吹くA咆哮する、ほえる、なく などの意がある。岩手では口笛をほそ笛(ホソベ)、山形ではホソと呼ぶ。

 能楽では空吹(うそふき)と表わし、うそ(口笛)を吹いているような表情から名づけられたもので、狐、猿、狸などの写実的な動物面が使用される。

 嘯む、嘯むくは嘯くに同じである。


 狼は古語辞典では、「おほかみ」「大神」の意としている。「大神」は「立派なもの」の意で、狼は「立派な神」の意となる。

 アイヌ語では狼は「wo-se-kamuy」「ウォー・セ・カムイ」で、「ウォー・と吠える・神」の意である。

 狼=大神としたのは、後付られたものでないか。最初にアイヌ語=縄文語の「ウォーセカムイ」があり、「ウォーカム」「オオカミ」に転訛し、「大神」になった。あるいは「大亀」とも呼ぶようになった。

 マタギ言葉にオソヲタテル、オソビキがある。どちらも口笛を吹くことを意味する。


 出雲・石見地方の方言に以下がある。
 「恐ろしい」の方言 

 出雲エリア北部一帯に、オゼ・オジェの分布が見られる。これらの語形の分布域をのぞく接境地帯全域には、オゾイが広く分布しているのが見られる。地図上ではオゼ・オジェとオゾイが対立している。

 「恐ろしい」においては、『中国地方五県言語地図』と比較すると、オゼが海岸線沿いに、出雲側から石見側へと進出していることがわかる。オゼは『中国地方五県言語地図』を見ると、出雲市周辺のみに分布していた。その周囲には、広くオゾイが分布しているという状況であった。25年間に、オゼが周囲を取り囲んでいたオゾイの間に、割り込んだと見ることができる。

 「恐ろしい」におけるオゼの分布が西へ伸びている。

 オゼは、出雲市と松江市を含む、島根半島とその南部に分布していた。周囲には、オゾイの分布域が広がっており、オゼを取り囲んでいた。『中国地方五県言語地図』の調査時点から25年後の本調査時には、オゼは、出雲市からさらに西へと分布域を拡げ、接境地帯まで達している。

 オゼに関しては、出雲市の中心付近では、オジェの音形で回答があり、接境地帯付近へ近づくに従って、オゼー、オゼへと形を変えている。そして、これらの語詞が勢力を広げた背景には、出雲市の力というものがあるのではないかと考えられるのである。

 本稿で取り上げた語詞は、次のような質問を用いて収集したものである。

 「恐ろしい」 大きな犬が何匹もほえかかって、今にもかみつきそうになる。そんなときの感じをどんなだと言いますか。

 方言「オゼ」は、アイヌ語「ウォーセ」(狼)にもつながるように思われる。

 (以上 『出雲・石見接境地帯方言の動態』
 「中国地方五県言語地図」との比較を中心にして 
 野々村 憲・高永 茂 昭和61年調査)


 「カマのキビレ」はカメイ谷のキビレ、オオカメ谷のキビレであると思われる。

 カメイのキビレ → カメのキビレの転訛
 オオカメのキビレ → カメのキビレの転訛

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カシミール3Dデータ

総沿面距離18.0km
標高差704m

区間沿面距離
牛小屋
↓ 4.6km
台所原
↓ 5.0km
ジョシのキビレ
↓ 1.7km
ハゲノ谷
↓ 3.8km
旧羅漢山
↓ 2.9km
牛小屋
 

 
台所原のブナ林
三本栃
三本栃 2004年11月
三本栃
半四郎山 広見山 春日山
十方山
風車群
1131Pから砥石川山の紅葉
 
『出雲・石見接境地帯方言の動態』 「恐ろしい」の方言
  
登路(「カシミール3D」+「地理院地図」より)