山歩き

シワギ…内黒峠…十方山…三段峡 2007/1/4
柴木…薮ヶ迫山…内黒山…内黒峠…彦八の頭…丸子頭…十方山…シシガ谷…十方林道…二軒小屋…横川出合…三段峡…柴木

■十方山(ジッポウザン)1318.9m:佐伯郡吉和村字吉和西(点の記) 廿日市市

大箒山と大平山
苅尾山と深入山
薮ヶ迫山(宮里山)道標

内黒峠

深入山とサバノ頭
縦走路のミズナラ
キリが立ち込める本郷の方向
立岩山
恐羅漢山スキー場
ウラオレ谷方向 カザゴヤキビレから
カザゴヤキビレのブナ
苅尾山と深入山
十方山
工事中の車止めの十方林道 二軒小屋の駐車場付近
本横川の魚切滝
横川・田代分岐
黒渕
6:15 柴木出発 晴れ 気温-3度
 
 

8:20 薮ヶ迫山(宮里山)
8:45 内黒峠
10:05 彦八の頭
10:30 藤本新道分岐
11:20 丸子頭
12:05 中三ツ倉
12:30 奥三ツ倉
13:05 十方山
14:15 十方山登山口
14:55 二軒小屋
15:45 横川出合
16:15 葭ヶ原
17:00 黒渕
17:45 柴木

 点々と灯が点く柴木集落を出発。柴木林道に入ると暗闇である。7時前、589ピーク辺りまで来ると、樹林の中は明るくなる。登山道の雪は少ない。柴木発電所に下りる尾根の導水管が見え、その先に大きな山容の大平山、その左に大箒山が覗いている。南側に市間山と鍋山が見える。

 薮ヶ迫(宮里)山周辺は伐採されて見通しが良い。この時期、真っ白な深入山は地肌が見える。深入山の左右に苅尾山、掛津山と向山。いつも雪で埋まる薮ヶ迫山の道標は、下の柱が見える。今年は雪が、大分少ない。スギの樹林の内黒山を通り、ブナ林を下って内黒峠へ降りた。柴木から2時間半だった。

内黒峠 加藤武三碑

 内黒峠の車道は雪がない。加藤武三の碑の前でコーヒータイムの一休み。内黒峠から十方山の尾根道に踏み跡が続いている。樹林の間からサバノ頭と深入山が覗く。ミズナラの古木の横を通り過ぎて進むと1166ピーク。本郷の方向の谷筋はキリが覆っている。樹林の間から恐羅漢スキー場が見えてくる。スキー場のミュージックが聞こえない。前方の一番奥に丸子頭が見える。南側に日の平山、立岩山、市間山の尾根が続いている。

 スキー場を目前に見渡せる所に出た。左側の国設は人影がない。右側の民営は一人、二人見える。ヤマドリとウサギの足跡が続く。彦八の頭を過ぎ、カザゴヤキビレへ下る。ウラオレへ降りる斜面はササが出たままである。ブナ林の雪道を通り、藤本新道分岐に到着、少し休んだ。

 丸子頭へ近づくと雪が深くなる。踏み跡がなければカンジキを履くところだが、膝ほどの深さの踏み跡を楽して登っていく。振り返ると、縦走してきた尾根の先に深入山が見える。

ヤマドリとノウサギの足跡

 中三ツ倉の手前から、苅尾山の山容を中心に、恐羅漢山から続く尾根、深入山へ伸びる尾根を望むことができる。中三ツ倉までくると、十方山は近い。内黒峠から続いた踏み跡は奥三ツ倉までだった。奥三ツ倉から引き返されたようだ。奥三ツ倉から見る十方山山頂は、誰もいない。ブナ林を通り、論所の谷を渡る。十方山の登りになると膝ほどの雪で埋まる。

 内黒峠から4時間余りで、ようやく十方山に到着した。山頂の道標周辺は雪がない。今日は見通しが良く、立岩山の先に瀬戸内海の島が見える。カシミールで確認して見ると似島辺りのようである。周辺のササ原は雪がまだらで、まだササが顔を出している。

立岩山の先の瀬戸内海 十方山から

 シシガ谷へ下った。こちらは雪が深く、膝上まで埋まる。1時間ほどで、十方山登山口の十方林道に出た。林道に足跡が続いている。林道最奥の民家の手前に、「工事中」の車止めの柵がある。いよいよ大規模林道の工事が始まるようだ。登山口から40分ほどで二件小屋の駐車場に出た。ここにも工事中の柵があった。サバノ頭を見ながら大規模林道を下った。本横川の魚切滝は水流が少ない。

 横川橋手前から旧道に入る。足跡がある。足跡はモリガ谷の神社に上がっていた。横川川の深い谷道を通り、二軒小屋から1時間ほどで横川出合。小休止して三段峡の遊歩道に入った。

 冬の三段峡は何十年ぶりだろうか。三段滝分岐までくると足跡がある。この時期、三段峡に入る人があるようだ。谷に夕日が入ってきた。葭ヶ原は雪で覆われている。黒渕のつり橋は、橋げたの板が取り除かれたいた。谷底の樹林は暗くなるのが早い。暗闇の中で激流が白く光っていた。横川出合から2時間ほどで三段峡を抜けた。

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カシミールデータ
総沿面距離30.1km
標高差990m

区間沿面距離
柴木
↓ 5.0km
内黒峠
↓ 7.5km
十方山
↓ 4.9km
二軒小屋
↓ 4.1km
横川出合
↓ 8.6km
柴木

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地名考

 恐羅漢山は、osor-kot オソル・コツ 「尻の・窪み」の意のアイヌ語として指摘されているが、青森県の恐山(オソレザン)も、osor-kot と言われている。「西中国山地」にはアイヌ語と思われる地名がいくつかある。「毛無山」もアイヌ語の kenasi ケナシ 「木原」であるという。点のようにアイヌ語で解釈できる地名が残っていることは、かつて、アイヌ語を話す人々が「西中国山地」に往来していたと思われる。

 「西中国山地」の谷や山の地名は、名付けられた時には、それぞれ意味ある地名であったと思われるが、現在、残っている地名を日本語で理解するのは不可能のようだ。「西中国山地」には、恐羅漢山や毛無山などの地名以外にも、多くのアイヌ語地名が、形を変えて残っているのではないだろうか。

●内黒峠

 「内黒峠の峠名は比較的新しい呼称のようだ。古屋敷の故隠居庄五郎老人より横川側の呼称としてイタホシ谷=Aその前はオオキビレ≠ニ呼んでいたことを聞き出したが、『戸河内森原家手鑑帳』(1715年)にオオクビレ≠ニあることにより

 オオクビレ→オオキビレ→内黒峠(戸河内の呼称)
                 イタホシ峠(横川の呼称)
 
 と変わったものと思われる。イタホシはこの峠の那須側の谷の名称で、クビレ・キビレは鞍部の方言である」(「西中国山地」桑原良敏)。

 内黒峠周辺は大きな平坦地になっている。
 
 アイヌ語でkipir キピリは、丘の意がある。


●サバノ頭

 二軒小屋からサバノ頭を見ると、「鯖の頭」に見える。サバノ頭は国土地理院の点名では「鯖ノ頭」となっている。

 「サバは砂礫土を意味する愛知、岐阜の方言で、山ヌケして押し出された崩壊土がヌケ谷をつくり、崩壊を起こす地点がサバノ頭という。横川、柴木の古老と黒淵莊の主人よりこの山名を聞き出した」(「西中国山地」)。

 

カシミールで見た地形 サバノ頭東面から





●地形方言

 「西中国山地」の巻末に、地形方言の一覧がある。地形方言とアイヌ語の意が近い言葉を並べてみる。

★ウツ 狭い谷

 ut ウッ 枝、肋骨
 ut-nay ウッ・ナイ 枝川


★クラ 断崖、岩場、鞍

 kura クラ 岩崖、鞍、仕掛け弓場


★タオ・タワ・トオ・トウ 峠
 
 taor タオル 高岸
 

★ヌタ 湿地、沼田
 
 nutap ヌタプ 川の湾曲部の平地


★ヒラ 尾根の側面、山の傾斜面

 pira ピラ 崖


★キビレ 尾根の鞍部

 kipir キピリ 崖、丘

大箒山 大平山
苅尾山 深入山 向山
サバノ頭 苅尾山 深入山
深入山とサバノ頭
ミズナラ
立岩山
恐羅漢スキー場
恐羅漢山
ウラオレ谷方向
カザゴヤキビレ
苅尾山 深入山
十方山
奥三ツ倉
立岩山越に瀬戸内海が 十方山から

女鹿平山と冠山
五里山
半四郎山
シシガ谷
二軒小屋とサバノ頭
魚切滝
横川出合
葭ヶ原
黒渕
 
登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)