7:10 瀬戸滝登山口出発 曇り 気温-1度
9:40 黒ダキ山登山道
10:15 黒ダキ山
10:55 十方山南西尾根
11:50 下山林道峠
12:50 下山橋
13:30 水越峠
15:15 十方山
16:05 三ツ倉
17:05 瀬戸滝登山口
思わぬ雪が止むのを待って出発。車道を小松原橋まで戻り、トチノキの大木の横から尾根を上がる。踏み跡はナガ谷の左岸をかすめて、急な登りとなる。20分ほどでナガ谷へ降りる分岐。分岐を過ぎると、道は緩やかになり、ツガが多くなる。ところどころ、ツガの大木が残っている。
出発から1時間余りで882ピーク。882ピークを下ると、広いササ原に出る。雪を纏ったササは、頭を下げている。882ピークから30分で914ピーク。黒ダキ山登山道の尾根が、だんだんと近づいてくる。急な岩場を登り、赤い灰皿のある登山道に出た。雪で視界が利かない。
登山道を進むと、ヤセ尾根の岩場になる。そこがゴロシのタキである。十方山への展望の良いところだが、今日は展望は望めない。前方に黒ダキ山が見える。登山道に出てから30分ほどで黒ダキ山。積雪は20cmほど。
仏石へ下った。谷を隔てて、下山林道の終点がすぐ先に見える。黒ダキ山から40分ほどで、十方山の南西尾根に上がった。ササはまだ雪の下に没しておらず、雪を身に付けて、ゴムホースのようになって、垂れている。そのため、雪のない時期の薮ササより、かえって歩きにくい。気温はマイナス5度。
雪ササの薮を掻き分けて、ようやく1142ピークに到着し、下山林道へ下った。林道の雪はくるぶしの深さ。峠から見る細見谷は、雪とガスで視界が利かない。下山林道を下った。雪の下は凍りが張っている。大分下ったところで、細見谷の視界が開けた。京ツカ山辺りが見える。ちょうど1時間ほどで下山橋。細見谷も十方林道も雪を被っている。
十方林道を上がっていくと、鳥の巣箱がたくさん掛けてあった。近くに「哺乳類調査」の張り紙があり、「この周辺に小型哺乳類用の巣箱を設置しています。手を触れないようお願いします」とある。張り紙の主は「株式会社ウエスコ広島支社」とあった。緑資源機構の委託による「環境調査」のようだ。
「ウエスコ 細見谷」で検索すると、「細見谷に大規模林道はいらない」のホームページが一件だけヒットしたので、次の一文を紹介しておく。
「緑資源機構が進める、細見谷を縦貫する緑資源幹線林道でも、環境保全調査の内容や同調査検討委員会の議事進行をを見ればそうしたことがあったであろうことはおおよそ推測できる。同機構は、日本生態学会や地元の環境NGOの再三の申し入れにも拘わらず、共同調査を拒み続けてきたし、検討委員会での参考意見聴取でも、自分たちに不利なデータを出す可能性の高いNGOを完全に無視したのである。その一例がツキノワグマに関するものだ。ツキノワグマに関する保全策を検討するために一部の委員からは議論に耐えうるだけのデータを示すよう意見が出され、NGOからも現地調査をしている研究者の参考人招致を求める意見書も提出された。しかし、機構は頑としてその要求には応えることはなかった。調査の委託を受けている「ウエスコ」の職員ももっとも事情に明るい研究者(私のこと)への聞き取りさえ行っていない。これは、自主規制なのか機構側からの指図なのかわからないが、その結果、実質的な議論は深まることはなかった」(「細見谷に大規模林道はいらない」HPより)。
細見谷の巣箱 |
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哺乳類調査の張り紙 |
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雪道の十方林道を上がり、40分ほどで水越峠。予定では、ここから尾根を北の十方山に登るつもりだったが、思わぬ雪のため、シシガ谷の登山道を上がることにした。
水越峠を下ると、旧羅漢山の登山道へ足跡があった。今日は、シシガ谷から十方山へ登った人はなかった。樹林帯を抜けると、急に雪が深くなった。北の十方山の南へ上がると、雪は膝下ほどあった。急に足取りが重くなる。登山口から1時間余りで十方山山頂。雪とガスでまったく視界がない。早々に瀬戸滝登山口へ下った。踏み跡があり、今日、瀬戸滝から上っているようだ。踏み跡の上を楽して下った。まだ山頂のササは雪で覆われていないので、登山道の白帯が続いている。
下り道の途中に昭和59年の遭難碑がある。昭和59年12月22日に遭難した永吉氏は、翌年の四月四日に大谷川左谷で発見された。遭難碑は大谷川左谷を見下ろす位置にある。永吉氏は登山の下見で軽装でシシガ谷から入ったが、山頂付近で天候が急変して大雪になり、迷って大谷川上流へ降りたようだ。
登山道から東を見ると、微かに立岩山のシルエットが見えた。視界が開けて、黒ダキ山が見える。下るに連れて立岩山も見えてきた。視界がないのは、十方山山頂のガスと雪のためのようだ。1時間ほどで三ツ倉。三ツ倉を過ぎると、急に雪が少なくなり、数センチ程度。三ツ倉からキリイシのタキが見えるが、山頂はガスがかかっている。山頂から2時間ほどで瀬戸滝登山口に帰着した。
カシミールデータ
総沿面距離21.8km
標高差808m
累積標高+2186m
累積標高-2211m
区間沿面距離
瀬戸滝登山口
↓ 4.9km
黒ダキ山
↓ 2.0km
下山林道
↓ 6.2km
水越峠
↓ 3.4km
十方山
↓ 5.3km
瀬戸滝登山口
■地名考
●ゴロシのタキ
「ゴロシのタキ」は、細見谷から上がる黒ダキ山への登山道と、小松原橋から登る尾根道の合流点の少し先の岩場のことである。十方山と瀬戸谷への眺望が良いところである。
「瀬戸谷の支流、アライ川の奥にブツダンタキとあるのは、この懸崖(タキ)が、仏壇を開いたような形になっている所からつけられた呼称だという。細見谷左岸の尾根にクロ懸崖(ダキ)、ゴロシの懸崖(タキ)がある」(「西中国山地」桑原良敏)。
「西中国山地」にある「ゴロシのタキ」についての説明は、上記の一節だけである。和語としての「ゴロシ」は、意味がわからない。
「金田一先生はその『北奥地名考』の中で次のように書かれた。
五十嵐(イガラシ)をアイヌ語に訳すことはまだ少し盲断に近いが、北海道にはインカラウシ(inkar ushi)という地名はいくらでもある。inkar は「物を見る、見物する、監視する」意味、ushi
は「場所」である。
越後の五十嵐浜、五十嵐川及び伊加良志神社のある五十嵐。岩代にある五十辺(イガラッペ)である。
尤も此の解釈の成立する為には、五十嵐、五十辺は見晴らしのよい所でなければならぬ。 |
道内のインカルシペ(inkar-ush-pe 眺望する・いつもする・処)或は語尾が僅か違ったらしいイカルシ(inkar-ush-i
語義前に同じ)を見て歩いて来たが、いずれも小高い丘上で、広い平野とか或は魚群を眺めるとかした場所だったらしい」(「東北・アイヌ語地名の研究」山田秀三)。
カシミールで「いがらし」を検索すると、北海道、青森、新潟だけである。「ごろし」の検索では、北海道に「五郎四郎沢川」(ゴロシロウザワガワ)があった。「ゴロウシロウ」が訛って「ゴロシロウ」となったのかもしれない。
地名アイヌ語小辞典(知里真志保)の「インカルシ」に、次の二つがある。
inkar-us-i インカルシ
いつもそこへ上って敵を見張ったり、物見をしたり、行く先の見当をつけたりする所。物見をし・つけている・者
inkar-us-pe インカルシペ
見張り・つけている・者
「ゴロシのタキ」は、「インカルシ」にある二つの意味、「眺める」「見張る」を兼ね備えた場所である。
「ゴロシのタキ」はアイヌ語で、
inkar-us-nup-tapkop
インカル・ウシ・ヌプ・タプコプ
眺める・いつもする・野の・タンコブ山
インカルシ→カルシ→ゴロシ の転訛。
イガラシ地名の南限は新潟県だが、「ゴロシのタキ」が「インカルシ」だとすれば、インカルシ地名は、「西中国山地」まで南下するのかもしれない。
ゴロシのタキから見た十方山と三ツ倉 2005/3/6 |
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ゴロシのタキから見た三ツ倉と十方山登山道
2005/3/6 |
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