山歩き

ウラオレ谷…サカネ谷…ツリンボウノ谷…トリゴエ谷 2005/7/16
那須集落…ウラオレ谷…中三ツ倉…奥三ツ倉…坂根谷…ツリンボウノ谷…トリゴエ谷…那須集落

電気柵で囲まれた那須集落

うらおれ橋

水田跡の石垣 ウラオレ谷右岸
取水口 イシノリ滝上部 右岸
障子ダキ手前付近
長いナメラ滝
左岸の谷 三ツ滝二段目

目印 上へ続く 右岸

3.1mブナ
エビガライチゴ ギンバイソウ
ミヤマイラクサ モミジガサ

奥三ツ倉下りの尾根から 市間山と立岩山

坂根左谷 分岐の二段滝
長い滑り台
左岸の岩壁

涸れ谷

右谷分岐付近のカツラ
坂根谷堰堤
打梨林道からツリンボウへ
6:30出発 曇り時々晴れ 気温22度

6:40ウラオレ谷
7:40イシノリ滝
8:50障子ダキ
9:40三ツ滝
12:25中三ツ倉

コオニユリ

 出発の準備をしていると小父さんが話しかけてきた。長く那須に住んでいたが、今は広島の沼田から来て畑を作っているという。ウラオレや藤十郎の由来を聞いて見たが、昔からそう呼んでおり知らないと。子どもの頃、台ヶ原で木地師が切り出したトチノキの切れ端をもらって遊んだ記憶がある。この辺りにスギ山を持っているが、今は見に行くこともないと。

うらおれ橋

 那須小学校跡を出発、クマ除けの電気柵で囲まれた水田を左に見ながら、那須川沿いの道を上がると、10分ほどで昭和52年竣工のうらおれ橋。橋のたもとに「アマゴ禁漁区、これより上流、三ツ滝までアマゴ等増殖・保護区間です」と三段峡漁業協同組合の看板がある。

 ウラオレという地名は那須だけのようだ。カシミールの全国地名検索でも、似た地名が出てこない。樹木方言でオノオレ(東北、斧折樺)、ナタオレ(鹿児島、アオモジ)があり、鹿児島県に鉈折岳があるが、ウラオレが樹木を意味するのか分からない。那須周辺ではウラジロガシを鍬などの柄に使っていたと小父さんが言っていた。

 ウラオレ谷とトウジュウロウ谷の間の等高線の間隔が広くなっているところに台ヶ原と言う棚田があった。風小屋林道から登山道を登ると分かるが、水田の石垣が残っている。

 那須には終戦当時、田が7町6反あった。因みに延享3年(1746年)今より約260年前、田が5町3反2畝18歩あったことが「萬手鑑(よろずてかがみ)」(本田屋蔵文書)で明らかである。そのうち、台ヶ原(だーがはら)に山田が5町歩余りあった。それを昔の人が開墾したのである(戸河内郷土誌考)。江戸の時代から切り開かれた、横川峠(旧道)から見下ろした台ヶ原の棚田の写真が残っている。現在、その棚田はスギ、ヒノキの下に消えてしまった。水田跡は台ヶ原だけでなく、イタホシ谷、トリゴエ谷にもある。

サワガニ

 うらおれ橋から谷へ降りた。いつもは水量が少なく穏やかな谷だが、この二週間ほどの雨で大分増水している。湿った大岩にオオミミズが寝そべっていると思ったら、小さいヘビだった。右岸に水田跡の石垣がある。石垣はイシノリ滝の上部まであった。水田跡を結ぶように、右岸に踏み跡がある。踏み跡が左岸に渡るところに壊れて流された橋があった。集落から大分離れているが、取水用の黒いホースが谷にあった。両方のツメが欠けたサワガニが居た。

 ヒコハチ谷を過ぎるとイシノリ滝。段々になったナメ滝。それを越えるとまた石垣がある。江戸の時代にこんな奥まで開墾したのだろう。那須集落の水田の大半が台ヶ原にある分けが理解できた。台ヶ原と言うのは風小屋林道終点の少し先くらいと思っていたが、等高線の広い部分全体まで開墾されたようだ。右岸に道が続いている。さらにその奥に取水口が残っていた。この辺りから水田に水を引いていたのだろう。

障子ダキの道標

 谷の真ん中に赤テープがある。これを過ぎると、だんだんと谷が狭くなり、両側に岩壁が現れると障子ダキ。岩壁の下に「三つ滝 左岸」の道標があるが、障子ダキの間違い。漁協が禁漁区の目印に立てたのかもしれない。障子ダキは滝ではなく、左岸の長い岩壁を意味する。谷は右へゆるくカーブする。禁漁区にしているだけあっって魚影が濃い。数匹のアマゴが瀬に出ていた。長いナメラ滝を越えると、ウラオレ谷核心部の三ツ滝が現れる。一段目は右岸にホールドがあり乗り越せる。一段目を上がると左岸から谷が落ちている。谷を横切り、左岸を巻いて三ツ滝上部に出た。

 三ツ滝上部は沼の原と言う。ここからは平坦な谷歩きになる。ゴギの魚影があった。移植したものだろうか。だんだんとスギ林が谷へ降りてくる。滝上に出てから1時間ほどで、1073ピークの東側付近にピンクのテープがあった。テープは上へ続いている。踏み跡があるのかもしれない。谷を少し先へ進むと枯れたトチノキの大木にカエデが葉を出していた。その横のスギ林の中に、一際目立つスギの巨木があった。計測すると周囲4メートル。スギの植林時に他の広葉樹は皆伐されたが、スギは残したのだろう。この辺りはブナやトチの巨木があったと思われる。

 水源帯に入ると水が涸れるが、更に進むとまた水が現れる。登山道に近づいたところで大きなブナが左に現れたので計ると3.1m。その先に二股ブナとミズナラがあった。ミズナラは4.4m。そこから50mほどで登山道に出た。ちょうど3mブナのある手前だった。まもなく大岩のある中三ツ倉。ウラオレ谷を抜けるのに5時間余りかかった。

 十方山への登山道でブナの森を楽しめるのは、那須から入る藤十郎付近が一番だろう。周辺の谷から藤十郎付近を歩いて見ると、ブナの大木が残っているのは藤十郎付近のみで、原生の森は皆伐されてしまい、スギ、ヒノキの植林帯になってしまった。

12:50奥三ツ倉
16:55坂根谷堰堤
18:30那須集落

ヒョウモンエダシャク
イカリモンガ

 登山道はオトギリソウが咲いている。ユキザサが青い実を付けている。湿った道に足跡がある。十方山へ登山者があるようだ。20分ほどで奥三ツ倉。十方山へ寄ってみようと思っていたが、ウラオレ谷で時間がかかった。
 奥三ツ倉から坂根谷左谷を降りた。登山道から一歩、立岩ダムへ降りる尾根へ入ると、背丈を越える猛烈なササになる。谷へ入っても見通しの利かない林とササが続く。苔むした、足場の悪い岩ゴーロが長く続く。イラクサの棘が服の上から刺さるとしばらく痛む。結局、二段滝まで1時間余り悪路が続いた。二段滝下部で少し休んだ。滝から涼しい風が吹き抜ける。顔を洗い冷たい水を飲んだ。

エノキハムシ

 ここからは谷を覆う草や林はないが、崩れやすい岩ゴロが続く。長い滑り台のような滝を降りる。左岸の岩壁がだんだんと迫ってきた。右岸の林を見るとサワグルミが林立し、果穂を下げている。途中で突然水が涸れた。伏流水のようだ。しばらく下るとまた水流が現れる。飲むと冷たくておいしい。
 左岸の岩壁が切れると右谷分岐。分岐の少し下に株立ちしたカツラの大木が谷の中央で踏ん張っている。大量の土石のなかでよく持ちこたえているものだ。大分下ると左岸に石垣がある。道はまた谷へ降りるが、ほどなく堰堤手前の川原に出た。左岸から堰堤に上がった。奥三ツ倉から4時間かかった。長くて歩きにくい谷だった。

 堰堤から左岸の踏み跡を降りると、復旧記念碑の横に出た。打梨林道を下り、ピンクのテープがある小道に入るとツリンボウノ谷へ出る。ピンクのテープは那須へ入る町道まで続いている。ツリンボウノ谷に沿う水田跡の石垣を過ぎると、まもなくイデガサコへの分岐、分岐に境界石がある。スギ林を少し登るとイデガサコの鞍部に出る。踏み跡を下り、イデガ谷上部を通り、トリゴエキビレに登る。
 那須へ下り始めると雷が鳴った。近くでも鳴ったが、幸い遠くへ去ったようだ。谷の分岐まで踏み跡があるが、その先は大半が谷径になる。ピンクのテープが続いているので迷うことはない。スギ林からようやく那須集落手前の町道に出た。

ソバナ
トチバニンジン
ヤマジノホトトギス
  


カシミールデータ

ヒグラシ

カワゲラ

総沿面距離10.3km
標高差835m
区間沿面距離
那須集落
↓ 0.5km
うらおれ橋
↓ 1.9km
三ツ滝
↓ 1.7km
中三ツ倉
↓ 0.7km
奥三ツ倉
↓ 2.5km
坂根谷堰堤
↓ 1.7km
トリゴエキビレ
↓ 1.3km
那須集落

 

増水した那須川

ウラオレ谷左岸の壊れた橋
イシノリ滝

ウラオレ谷

障子ダキ付近 ウラオレ谷左岸

三ツ滝

三ツ滝上部

スギ林の中のスギの巨木 左岸

二股ブナと4.4mミズナラ

イヌトウバナ シモツケソウ
オオバギボウシ オトギリソウ
下りの岩ゴーロ帯
足場の悪い坂根谷

坂根谷

サワグルミの林

右谷

坂根谷左岸の石垣
堰堤と坂根谷
ツリンボウノ谷の石垣
ウラオレ谷 三ツ滝
クガイソウ
ギンバイソウ
ギンバイソウ

那須川

ウラオレ谷左岸

イシノリ滝
ウラオレ谷
障子ダキ
ウラオレ谷
ナメラ滝
三ツ滝
三ツ滝

スギの植林帯の4mスギ

市間山 立岩山 奥三ツ倉から
坂根谷左谷の二段滝

左谷
長い滑り台
左岸の岩壁
涸れ谷
右谷
堰堤に出る
 
登路(青線は磁北線)
 
ホタルブクロ キツネノテブクロ オカトラノオ ニワトコ ミヤマタニソバ
ヌスビトハギ サンショウ オオカメノキ ヒヨドリバナ ユキザサ
タンナサワフタギ アマドコロ アカショウマ オオウバユリ アカソ
コイケマ ツヅラフジ ヤブムラサキ ヤマアジサイ イワガラミ
ツリバナ アブラチャン ヒメヒオウギスイセン クロズル ノブドウ