5:10出発 曇り 気温−4度
7:00 女鹿平山
吉和公民館から女鹿平山へ向けて道を上がると別荘地に入る。街灯のある除雪された道を上がって行く。除雪されていない所が、一番上の別荘だった。標高800m付近で、随分高い所まで別荘がある。
足を踏み入れると膝下まで埋まる。ここでカンジキを履いた。道は上へ続いており、街灯も照らされている。やがて街灯がなくなると、展望のある広い道に変わった。吉和の町の灯かりが見える。6時過ぎ、東の山の向こうが赤く染まり始めた。立ち入り禁止の立て札がある。6時20分頃、だんだんと白み始める。工事車両のユニックが止めてある。1000m付近で林道から尾根筋を登った。
頂上に近づくと、ザーッ、ザーッと絶え間なく音が聞こえる。ほどなく右手にスキー場のリフトが現れた。頂上は目の前にあった。頂上直下までリフトが上がっている。頂上に着くと、ちょうど日の出だった。女鹿平山から見た日の出は、湯来冠付近から出ているようだ。頂上からは南東方向へ展望が開けている。南西へマツの木の後ろに白い冠山が見える。十方山方向はスギ林で展望がない。立岩山は林越しに見える。山頂からリフトを見ていると、スキーよりもスノボーが圧倒的に多い。
「『吉和村御建野山腰林帳』(1725年)に女鹿平山とある…メガは鹿または牝鹿を表わす方言で、ヒラは獣を取る装置、または山の側面や斜面を表わす地形方言…鹿を取る装置がしかけてある山、あるいは鹿が多く住んでいる場所という意になる。いずれにしろこの場所に鹿が多かったのは事実であろう」(「西中国山地」桑原良敏)。
環境庁全国メッシュ図の広島県部分 |

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十方山周辺ではシカやその痕跡を見たことがない。環境庁の「ニホンジカの全国分布メッシュ図」(1979年)では吉和地域は絶滅か生息情報のない地域になっている。広島県のデータでは、宮島を除いて白木山系を中心に2000頭余りが生息しているようだ。この辺りに居たシカは捕獲し尽くされ、絶滅したのだろう。
7:30 青笹越
7:45 905峯
8:30 955峯
9:25 ヒノ谷分岐
女鹿平山から沼長トロ山へ延びる尾根道を降りた。尾根道に沿って境界測量のためのピンクのテープが巻いてある。尾根の右側はスギの植林帯になっている。沼長トロ山が正面に見える。ノウサギやタヌキの足跡が続いている。20分ほどで青笹越。長者原林道からこの辺りまで道が通っている。林道は女鹿平山方向へ延びている。スギからヒノキの植林帯に変わっているが、混在しているのだろう。ところどころ雪でヒノキが倒れていた。
途中、「地籍図根三角点」と書かれた標柱があった。時々、林間から十方山が展望できる。955峯の大きなブナの向こうに十方山、立岩山が展望できた。目前に沼長トロ山が迫ってきた。ヤマドリの足跡があった。ヒノ谷分岐へ下る急坂からヒノ谷が一望できる。分岐へ降りた。昨年の6月、ロクロ谷からヒノ谷を通った時、分岐付近は工事中だったが、長者原林道から入る林道はヒノ谷の分岐までで、今から立野へ林道を進める計画のようだ。
ヤマドリ |

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10:00 沼長トロ山
10:35 A峯
11:20 1023峯
ヒノ谷分岐付近は雪が深い。沼ノ原を渡り、沼長トロ山から分岐へ降りている尾根を登った。振り返ると女鹿平山と降りてきた稜線が見えた。女鹿平山は吉和から見ると形の整った山だが、こちらから見ると台形に見える。ヒノ谷分岐から30分ほどで山頂。林で展望はない。雪は1.5mほどだろうか。
「吉和村の古老からはこの付近の山名を聞き出すことができなかったが、『吉和村絵図』(江戸末期)に、御留山<沼長トロ山>と記されているので、これを用いることにした。…この峯の東側のヒノ谷の水源帯の平坦地を現在<沼長><沼>と呼んでおり、それにより名づけられたものと思われる」(「西中国山地」)
アセビ |
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ヤドリギ |
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スギとヒノキの植林帯を北へ下り、周回路に入った。中電の高圧線鉄塔の向こうに冠山が見える。A峯手前の左の谷を見ると、ブナが林立していた。A峯手前にはブナの大木がある。沼長トロ山から30分ほどでA峯。
A峯から1023峯への縦走路は北側の展望がすばらしい。左から1158峯、京ツカ山、焼杉山、その後ろに重なるように旧羅漢山と恐羅漢山、手前に細見谷の上流部と下流部の交差点、その上にある十方林道七曲、正面には十方山とそこから南西に伸びてロクロ谷へ落ちる稜線、黒ダキ山、黒ダキ山の左にある仏石が黒い点となって確認できる。右手には遠く日の平山、立岩山、市間山の稜線が見える。南側はあまり展望がないが、ときどき林間から冠山、間近に沼長トロ山が見える。
1023標高は岩が数個ある岩峯になっている。周回路はここから下りになり、B峯、C峯、D峯を経てヒノ谷分岐へ出る。予定ではD峯からヒノ谷の北側の尾根道を通って立野へ出ようと思っていたのだが、案外早く来れたので細見谷へ降りることにした。
12:10 856峯
13:15 ホトケ谷
雪上のムシ |
セッケイカワゲラ |
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ゴミムシダマシ |
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ガガンボ |
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ユスリカ? |
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1023峯から856峯へ向かう急な尾根を下った。しばらく急坂が続くが、尾根が東へカーブすると、緩やかになる。この辺りはブナが多い。強風で倒れたブナも何本かあった。細見谷を抜ける風をまともに受けるのだろう。ナツツバキの樹皮が白黒の風景に彩りを添える。ヤマドリの足跡がある。50分ほどで856峯到着。ここから尾根は分岐し、緩やかな尾根の二ノ谷へ降りることもできるが、北方向のイカダ滝側へ降りた。雪上に小さな虫を見つけた。注視して見ると意外と虫が多い。
細見谷の流れがはっきりと見える位置まで降りた。オオリュウズの流れ落ちる滝が林の間から見える。イカダ滝上部まで来ると、尾根は真下へ落ちているような感じだ。昨年4月、イカダ滝から1023峯へ登った時、傾斜はそれほど気にならなかったが、登りと下りではぜんぜん違う。この尾根径は適当に木があるので掴まりながら降りれるが、他のルートだとザイルが必要だろう。谷を渡るので、浅くて流れの緩いイカダ滝上部のホトケ谷落ち口付近へ降りた。
細見谷は雪も多いが、水も多い。この時期に谷へ入ったのは初めてだ。オオリュウズをカメラに収めたかったが、流れに入らないと無理なようだ。V字滝と背後のオオリュウズが見渡せる位置まで行って見た。溪に出ている岩に積もった雪の上を飛び越えて谷を渡った。
14:10 クロダキ谷分岐
14:35 下山林道
15:45 立野
17:10 吉和公民館
アカマツの木の食痕とクマの爪痕 |

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ホトケ谷からジグザグ径を上がった。イカダ滝上部の急な崖をトラバースして、黒ダキ山からクロダキ谷へ落ちる尾根に出た。尾根に大きな足跡が残っていた。大型の動物のようだ。近くのアカマツの樹皮が剥がされ、樹脂を舐めたような痕がある。クマと思われる爪痕も残っている。古い食痕もあるが、新しい食痕もあった。冬眠から覚めて、ときどき出て来ているのかもしれない。何度も利用しているようだ。クマは冬眠前にマツヤニを食べて便秘し、冬眠明けにフキノトウを食べて通じを良くするという説もあるようだが、それにしてもこの辺りはクマの痕跡の濃いところだ。
枝に下がった
ヤドリギのタネ |
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この時期、ネバネバ状のタネのようなものが木にぶら下がっていることが多い。ネバネバはヤドリギの下にある。調べてみると、小鳥がヤドリギの実を食べると、その糞はネバネバになり、ネバネバのタネが木に絡みつく。そこからヤドリギの芽が出る仕掛けになっている。ヤドリギの実があるところには、小鳥も多くやって来るのだろう。
クロダキ谷へ降り、下山林道へ上がった。立野キャンプ場へ近づくと、雪が柔らかくなり、埋まってしまう。キャンプ場手前のアマゴの養殖場には19個の水槽があった。堰堤右岸上部から水を引き、水槽へ水を送っている。細見谷上流部の大規模林道の工事が始まり、交通が増えれば水質が悪くならないか心配だ。
細見谷橋を渡ってカンジキを外した。養殖場まで除雪してある。キャンプ場は雪で埋まっている。小さなカマクラが作られていた。山のスギが赤く枯れたように見える。雄花が膨らんでいるようだ。県道を歩いているとキツネが横切って山へ登って行った。登った辺りの林の中を見ると、キツネがじっとこちらを見ている。1、2分にらめっこした。やがてキツネは立ち去った。
カシミールデータ
総沿面距離20.5km
標高差553m
区間沿面距離
吉和公民館
↓ 4.2km
女鹿平山
↓ 3.4km
ヒノ谷分岐
↓ 0.7km
沼長トロ山
↓ 1.7km
1023標高
↓ 1.9km
ホトケ谷
↓ 0.8km
下山林道
↓ 2.9km
立野
↓ 4.9km
吉和公民館
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