山歩き

2015/10/10
スキヤドウ

オシガ谷…ノブスマ谷…1158峯 2004/8/13
長者原林道…十方林道…オシガ谷…細見谷…ノブスマ谷…1158峯…カネヤン原中ノ谷…十方林道…長者原林道

■1158峯 島根県匹見町

国道488号線と十方山林道入口

押ヶ峠

 オシガ谷 上は十方林道

 細見谷 手前はオシガ谷

 タキワケ谷 細見谷

 ノブスマ谷の導水ホース

 ワサビ田跡 ノブスマ谷

 ノブスマ谷

サワガニ ノブスマ谷 1030m付近

十方山南西の稜線と下山林道峠 1158峯から

食痕 カネヤン原中ノ谷1000m付近

カネヤン原中ノ谷

ワサビ田跡 カネヤン原中ノ谷

6:00出発 晴れ17℃
 

大向長者原線

 車で186号線大向から長者原林道に入る。林道は、しばらく大町谷に沿って走る。6月に歩いた角兵衛の墓、お関の墓を通って、お関ヶ峠を下り、セキヤ谷を走って、細見谷からロクロ谷を抜けたところにある峠から下ったあたりの広場に車を止めた。ここから林道を西へ歩いて15分ほどで国道488号線に出た。150m余り歩くと、十方林道の入口に到着する。

十方山林道
入口の道標

押ヶ峠

6:50押ヶ峠
 「ケモノたちの暮らし・『大規模林道化』の危険性」(金井塚務)の報告書で、細見谷は中国地方に残された多様な生物の最後のストックであると指摘し、ツキノワグマの生活史を明らかにしている。その中で、クマの爪痕やクマ棚、フン、足跡などからクマが集中的に利用している地域は、@国道488号線から十方林道入口付近 A立野キャンプ場から入る下山林道終点から上流 B細見谷上流の渓畔林地域の三ヶ所で、クマの痕跡の濃い地点だったという。

 十方林道入口付近はクマの通り道のようだ。。ロクロ谷とオシガ谷に挟まれた地域は原生的な自然が残された地域であり、クマの好みの山域のひとつなのかもしれない。細見谷を立野から遡上すると、ロクロ谷とオシガ谷の間は、細見谷下流域では、原生的な自然を色濃く残しているところのように思われる。

 しばらくヤマダチ谷に沿って十方林道を歩く。広葉樹を突き破って杉が散在する。アシオスギだろうか。林道入口から30分ほどで押ヶ峠に到着。峠の手前に西山林業組合の林道がある。峠には十方山林道開通の記念碑が建っており、昭和26年4月着工、28年11月竣工とあった。オシガ谷は峠まで伸びていた。ここからオシガ谷へ降りた。

8:10細見谷
 十方林道は押ヶ峠から七曲≠フグルグルまがりくねった道を通って祠へ出る。七曲とは当を得た地名をつけたものだ。押ヶ峠から七曲を抜けたところにある祠まで高度差160m、直線距離で僅か1.3kmだが、林道を通ると、4km余りある。地図で見ると、七曲付近はオシガ谷に向かって幾つかの谷と尾根が複雑に絡み合っており、七曲のような林道になったのだろう。

押ヶ峠
林道開設記念

 「細見谷と十方林道」(森と水と土を考える会等発行)によると、七曲付近は北東―南西系断層と北西―南東系断層が交差するところであり、全体として脆弱化した地盤状況の地域だと指摘している。七曲というのは断層が交錯する地形から成るべくして成ったのである。脆弱化した地盤、地すべり地帯に道路建設を行うというのだから無謀と言うほかない。

 押ヶ峠はオシガダオと呼ぶ。この峠名はオシガ谷から取ったようだ。「『吉和村絵図』(江戸末期)にも押ケ谷とあり、昔からよく知られていた谷の名で、その頃も細見谷へ入る径が通じていたものと思われる」(「西中国山地」桑原良敏)。
 江戸の時代から押ヶ峠を通って細見谷へ入っていた径は、七曲のような径でなく、オシガ谷に沿ってあったのだろう。

オシガ谷のタイヤ

 オシガ谷は杉の植林帯の中にある平凡な谷だった。3、4mほどの滝が一つあった。ところどころ車のタイヤが転がっていた。林道から投げ込んだものだろう。オシガ谷は林道の橋の下を二ヶ所通っている。1時間余りで細見谷へ抜けた。押ヶ峠から細見谷へ降りるなら、オシガ谷が良いだろう。

9:40ノブスマ谷
 細見谷へ降りると、右が堰堤の上部、左は祠への登り口がある。少し休んで細見谷を遡上した。虻がまとわりついてうるさい。釣り人の足跡がある。釣り上がっているようだ。タキワケ谷を過ぎるとノブスマ谷である。「ノブスマ谷というのは、ムササビの多い谷の意という」(「西中国山地」)。

 ノブスマ谷へ入るとヤマドリが驚いて飛び立った。谷の入口から少し入ったところで野生化したワサビが生えている。ワサビの葉を喰いちぎった痕がある。ウサギだろうか。ノブスマ谷へ入った研究者のレポートをみると、クマはこの谷でワサビの根茎を食べているという。根茎を食べた痕は確認できなかった。研究者はよく調べているものだ。しばらく登ると導水用のホースが沢へ転がっていた。

 開けた左側(右岸)を見るとロープが張ってある。この辺りから上がワサビ田のようだ。ワサビ田はどうも手入れをしているように見えない。ワサビ田は沢の中央に石を積み上げ、片側が沢の本流、もう片側に石を敷き詰め、ホースで水を流すようにしているが、肝心のワサビ田に水が通らず、廃田のようになっている。ワサビは上流へ行くほど喰いちぎられた痕がなく、食痕は沢の下流が多いようだ。ワサビ田は谷の930m付近のかなり上部まで続いていた。
 ノブスマ谷は伐採を免れ、ブナやトチの大木が多く、自然林が残っていて、荘厳な感じだ。ノブスマが利用していそうなサワグルミの虚があったが、残念ながら夜行性のノブスマには会えなかった。

12:30稜線
 1030m付近で3cmほどのサワガニを見つけた。ずいぶん高いところにいるものだ。クマはサワガニなども食べているという。稜線が近づくにつれ涸れ沢となり、背丈を越えるササが進行を阻む。

 涸れ沢に沿ってササを掻き分けて進んでいると、急に頭の周りがうるさくなった。ハチだと分かり、その場にしゃがんで見上げると目前に15cmほどのハチの巣がぶら下がっていた。ササの中を低い姿勢で、数十メートル登った。よくそんな体力が残っていたものだ。周囲を見回して追っかけて来る気配はなかったが、念のため防虫ネットを頭に被った。風で揺れるササにハチが巣をつくるとは予想もしなかった。スズメバチよりひと回り小さいハチだった。

14:00 1158峯
 稜線が近づくにつれ、ササがますます深くなる。12時30頃、稜線に出たが、ササが密集し、少し迂回して稜線の赤松の枝に上がって周囲を見た。1158峯まで250m余り。距離は僅かだが、背丈を越える密集したササとブッシュでとても進めない。一旦カネヤン原中ノ谷へトラバースして少し下り、谷筋から登り直した。ササは深かったが、稜線手前100mほどに出ると意外にササは腰ほどの高さになり、楽に登れるようになった。トンボが群れている。振り返ると十方山南西の稜線からロクロ谷へ落ち込むところまで見渡せる大展望だった。

15:40十方林道
 カネヤン原中ノ谷を降りた。稜線から少し下ると湿地で膝下まで埋まった。谷はノブスマ谷の自然林と違って杉の植林帯だった。植林帯の谷は単調でつまらない。杉の倒木で谷は荒れている。少し下るとワサビ田の跡があった。標高1050m付近だ。ずいぶん高いところまで作ったものだ。ノブスマ谷より100m余り高い。しかし中ノ谷のワサビ田は下るにつれて崩壊して少ししか残っていなかった。

 ノブスマ谷のワサビ田は手入れがされてないにしても、その跡はしっかり残っていて、崩壊も少ない。おそらくブナなどの自然林の残っている谷と杉の植林帯の谷との差なのではないか。ブナ帯ではしっかりと根を張り、谷を守っているのだろう。
 谷を下りていて、一抱えもある大岩に足をかけると、グラときてそのまま崩れた。もう少しで岩と一緒に落ちるところだった。荒れた谷は怖い。沢をネズミが横切った。比較的大き目のネズミだった。アカネズミか。1時間余りで林道へ出た。

16:05祠
 ロクロ谷を通って帰る予定だったのだが、稜線で時間を食ったため、十方林道祠から七曲を歩いた。押ヶ峠までずいぶん長かった。
17:10押ヶ峠
17:50長者原林道出発点
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押ヶ峠手前の西山林業組合林道入口の看板

カシミール3Dデータ
総沿面距離 16.4km
標高差 440m
区間沿面距離
長者原林道出発点
↓ 2.7km
押ヶ峠
↓ 1.5km
細見谷
↓ 1.8km
ノブスマ谷
↓ 1.5km
1158峯
↓ 1.2km
カネヤン原中ノ谷
↓ 0.9km
十方林道祠
↓ 6.8km
長者原林道出発点

広葉樹林帯の杉

オシガ谷

 オシガ谷

細見谷

 ワサビ葉の食痕 ノブスマ谷

ノブスマ谷

ノブスマ谷

ワサビ田の石積 ノブスマ谷

  ノブスマが利用しそうなサワグルミの虚

 ノブスマ谷 稜線手前

黒ダキ山とザザラのタキ 1158峯から

 カネヤン原中ノ谷

カネヤン原中ノ谷

 

 
手前 オシガ谷
タキワケ谷
ノブスマ谷 ワサビ田跡
ノブスマ谷
ノブスマ谷 上部ワサビ田跡
十方山と下山林道峠
黒ダキ山とザザラのタキ 女鹿平山
恐羅漢山 京ツカ山 丸子頭 十方山
カネヤン原中の谷 ワサビ田跡
 
沼長トロ山上空2288mから撮影 カシミール3D(ランドサット衛星画像ETM<2002/5/25>+50mメッシュ 16mm画角93°カメラSTD)
登路(黒線は緯線経線 間隔1分 WGS84 青線は磁北線)
1158峯から展望 左から十方山 下山林道峠 黒ダキ山
1158峯から撮影 カシミール3D(ランドサット衛星画像ETM<2002/5/25>+50mメッシュ 16mm画角93°カメラSTD)
1067峯から見た1158峯 手前はタキワケ谷 2004/5/22