山歩き

津久根島 2001年7月14日
つくねじま

■佐伯区五日市の東南約4kmに位置する無人島。広島湾のほぼ中央に位置する。


私はいつのころからか睡眠が浅くなった。
朝、4時前には起きだして散歩に出かける。
堤防に立つと、正面に絵の島の灯台がゆっくり点滅している。
その右手前にあるのが、津久根島だが暗闇でまだ見えない。
漁船の灯が、左右に走っている。

一往復すると、あたりが少し薄明るくなる。
厳島を背景に、津久根島が見えてくる。
巨大船が東へ進み、厳島と絵の島の海峡を埋め尽くす。
やがて、絵の島を飲み込んだ。

私は津久根島を見るともなく歩いている。
津久根島は周囲300メートルの無人の島。
津久根島にはあまんじゃくの父、道空の墓があるという。

昔、海老山の麓に道空という人がいた。
その息子は、
父が「海にいこうか」といえば、「山にいく」と言い、
「山にいこう」といえば「海へ行く」と言う。
とにかく親の言う事の反対ばかりをするので
「あまんじゃく」と呼ばれていた。
月日がたって、年をとった父は
自分が死ぬ時に
「住み慣れたこの土地に葬ってくれ」
と言っても望みはかなうまいと思い、
「ワシが死んだら、海の向こうの津久根島に葬ってくれ」と
思ってもいない反対のことを息子にいった。
そうすれば、陸に葬ってくれると考えたのです。
ところが、父、道空が亡くなったあと、
息子は
「父の最後の望みをかなえてやろう」と
言われた通り、津久根島に墓を立てた。


最初、津久根島は遠く霞んでいるが、
30分も歩くと、島は目の前に迫ってくる。

ふり返ると、今まで追い風で感じなかった風が
からだ全体に心地よく吹き抜ける。
景色は一変する。
右手に広島市街の建物群。
左には大田川放水路を隔てて、コイの大茶臼山、鈴ヶ峰の山々。

津久根島はこころさびしく、広島湾に浮かんでいる。
私はただ黙々と堤防を歩きつづける。

 

津久根島の手前の漁船の灯

 

 

背景の厳島の手前が津久根島

 

津久根島

 

大茶臼山

 

 

夜明けの広島市街

 

左から絵の島 厳島 津久根島