山歩き

カブリ山…のべり…一兵衛山…来尾峠
2017/9/18

大歳神社…カブリ山…谷峠…のべり…ヒツガイケ鞍部…都川越…一兵衛サンカ山…来尾峠…大歳神社

■カブリ山(カブリヤマ)1002.9m:島根県那賀郡旭町大字都川字弥居谷(点の記 点名:冠=かんむり)
■のべり(ノベリ)939.7m:島根県那賀郡旭町大字都川字ひっが溢(点の記 点名:ひっが谷)
■一兵衛山(イチベエヤマ)951.7m:島根県那賀郡旭町大字都川字市兵衛サンカ(点の記 点名:都川)

大歳神社
大歳神社西側
北側の胡子神社
冠山登山口
小雨の登山道
尾根の分岐
ガスのカブリ山
ガスの尾根を進む
ヤオノ谷から上がる林道
左に大平山その後右に雲月山 ノベリ南の開地から
のべり
ノベリから見た高杉山 小マキ山 井屋山
ノベリから見た雲月山
大佐山から雲月山の峯 ノベリ北の開地から
ノベリ北の開地から見た風車群
ノベリ北の開地から見た大佐山と柏原山
伐採地 ヒノキ幼木林の枯れ木
左へ分岐道 ヒツガイケ谷鞍部
カケノ溢造林地
ヒツガイケ谷水源の林道
ヒツガイケ谷水源の林道から見た天狗石山
ヒツガイケ谷水源の林道から見た天狗石山、オクビ山、高杉山
土塁の上の山道 933ピーク付近
都合越
一兵衛山
右 エノキ谷分岐
三ツ石山と天狗石山
登山道の東側に作業道
左 一兵衛山 右 天狗石山登山口
来尾峠
カブリ山
7:50 大歳神社 気温15度 雨後晴れ
 

8:05 登山道入口
9:10 尾根分岐
9:15 カブリ山
10:15 谷峠
11:20 のべり
12:50 都川越
13:05 一兵衛山
14:10 京良原峠(来尾峠)
15:15 大歳神社 

 雨が止んだところで大歳神社の駐車場を出発。大歳神社の右横に胡子神社の小社がある。周辺の山々はまだ雲が下りている。濡れた稲穂が黄色に染まっている。車道沿いに電気柵が張り巡らしてあり、「キケン!注意」の看板がある。放牧牛が逃げないためと、イノシシから作物を守るためと書かれている。

 車道を少し進んだ所の民家の間に、「冠山へ」の道標がある。登山道入り口にコスモスが咲き、ツリバナがピンクの実を付け、ミゾソバの花が咲く。ガマズミは赤い実を付ける。道を奥へ進むと、登山道は水路になっていた。

ムラサキツユクサ
ツリバナ

 時々小雨が降る登山道を進むが、林の中なので雨は気にならない。ナナカマドの赤い小さい実がたくさん落ちていた。1時間ほどで山頂手前の尾根の分岐に出た。ツリガネニンジン、ツルリンドウ、アキノキリンソウ、ワレモコウ、ガンクビソウなどが咲いている。

 分岐から5分ほどで山頂。周りはガスで展望が全くない。小雨が降りだしたので、早々に引き返す。オオウラジロノキの実が落ちていた。見上げると、たくさんの実を付けていた。昨日の台風による風のためか、クリのイガがたくさん落ちている。ガスが漂う林を進む。ミズナラ、クヌギのドングリが落ちている。

クリのイガ
オトコヨウゾメ

 濡れて滑りやすい、長い下りが続く。ヤマボウシの赤い実が落ちている。谷峠に下りると、東側から林道が上がっている。ヤオノ谷から山道が上がっている。峠から少し進むと、前方が開けて登山道が通る尾根が見える。山道は東へ折れる。ヤマボウシ、ガマズミが実を付ける。872ピークはアカマツが多い。

 シシノ谷鞍部を過ぎて少し進むと、西側が開ける。雲月山が見える。開けた山道にはキンミズヒキ、ツルリンドウ、ガンクビソウなどが咲いている。そこから少し進むと東側が開け、三角点のある「のべり」に出る。東に高杉山、小マキ山、井屋山が見える。西側に雲月山が見える。

オオウラジロノキ
オオウラジロノキの実
ガンクビソウ

 のべり山から進むと、オオウラジロノキの実が落ちていた。西側が開け、雲月山の山並みが見える。北方向に巨大な風車群が見える。この辺りの西面は伐採地で、背丈ほどのヒノキが育っている。高い幹のアカマツがあるが、伐採地のミズナラはどういう分けか皆、枯れていた。登山道の東側のミズナラは枯れていない。

 開地にはツルリンドウが多い。伐採地からヒツガイケの鞍部へ下る。ヤマジノホトトギスが咲いていた。鞍部へ下りると西側へ山道が通っている。分岐に水源林造成事業の看板がある。看板の地図に「カケノ溢造林地」と書かれている。鞍部から少し進むと、東側に林道が通っている。林道から天狗石山と高杉山の間にオクビ山が見える。林道にはオミナエシが咲いていた。

ヤマジノホトトギス
ナナカマド

 林道から登山道を進むと、ナナカマドの実が落下せず枝に付いていた。コシアブラのまだ青い実が、台風のためか、たくさん落ちている。土塁の山道を進む。都川越を過ぎる。天狗石山が見える。ヤマハギが咲いている。都川越から15分ほどで一兵衛山。マムシがササの中に逃げる。東側の開地から天狗石山、三ツ石山が見える。リョウブの花がまだ残っている。

 山道を東へ進む。天狗石山の左にアンテナ塔が見える。エノキ谷の鞍部に谷へ下る道がある。東へ登り、南へ下る。作業道が東側を通っていた。オオカメノキが赤と黒の実を付ける。1時間ほどで来尾峠登山口、車道の東側が天狗石山登山口、北側が来尾峠で、浜田市の道路標識が見える。

 高杉山を見ながら峠を下る。前方にカブリ山が見えてくる。ヤマボウシの実が残る。車道沿いにシナノキがあった。稲は大半が刈り取り前だが、刈られた所もあった。黒い牛が3頭放牧されていた。白と赤紫のゲンノショウコが咲く。池田橋の下に大きい葉のオタカラコウが咲いていた。来尾峠を振り返る。峠から1時間ほどで大歳神社。
 

ツルニンジン
ミヤマガマズミ
ミゾソバ
ツリガネニンジン
ミズナラ
ワレモコウ
ヤマボウシ
ツルリンドウ
コシアブラ
ヤマハギ
アキノキリンソウ
オオカメノキ
アサクラザンショウ
ゲンノショウコ
リョウブ


地名考

 「広島県西部および島根県中部には冠山という名の山が多い。それには必ずといってよい程、山頂付近に懸崖がある。しかしこの冠山1002.9m峯の山頂、山腹をいくら探しても懸崖、露岩は見あたらないばかりか、山頂部分は無毛のササ原になっている」

 「『国郡志御用に付しらべ書出帳・大利原』(1819年・文政2年)に1002.9m峯を<大かむり>、その西の916m峯を<小かむり>としてある。『書出帳・草安村』には916m峯を<小かむり>と記され、いずれも平仮名である。『芸藩通志』(1829・文政12年)大利原村絵図、草安村絵図、『山県郡全図』には<冠山>と漢字が使われている。地元の庄屋から出されたものは平仮名であったのが編集者により漢字化されたものと考えられる」

 「島根県側の『旭町史』には<大かぶり><小かぶり>の山名が使われている。周辺の谷、谷中、大利原、才乙の古老数名から聞き取りを行なったが、島根県側も広島県側も<大カブリ><小カブリ>の山名が使用されていた」

 「カブリによく似た古語にカブロ(禿)がある。木の生えていない山をカブロ山という。この山はもともと懸崖などなく、現在と同じように木のないササ原か草付きの禿山だったのだろう。カブロ→カブリ→カフリと転訛したものと考えられる」

 「冠山の呼び方の特殊な例をこの山の北東、島根県の石見町と瑞穂町の町界にある冠山・859m峯に見ることができる。この山は『石見外記』(1820年・文政3年)に<カフリ山>または<カウムリ山>と記され『島根県誌』(大正12年)には<コーブリ山>とルビがふってある。現在も<コウブリ山>と呼ばれている」(以上「西中国山地」桑原良敏)。


 出雲風土記に冠山がある。出雲風土記、神門郡の山野にある冠山は「かがふりやま」と読む。

 出雲風土記原文

 冠山 郡家東南五里二百五十六歩。〔大神之御冠。〕

 現代語訳

 冠山(かがふりやま)。

 郡家の東南五里二百五十六歩の所にある。〔大神の御冠(みかがふり)である。〕

 出雲風土記の冠山の由来は、大神の「みかがふり」ということから、山の形が大神の冠に似ているので冠山と呼んでいる。


 古事記に「みかがふり」がある。「次に投げ捨てた御冠(みかがふり)に生まれた神の名は、 飽咋(あきぐひ)のウシノの神」とあるように、冠(かんむり)の意として使われている。


 万葉集に「かがふり」を含む歌が3首ある。

 歌番号892
 麻被 引可賀布利(原文)
 あさぶすま ひきかがふり(かな)
 麻ぶすまをかぶる(かける・ひっかぶる)(訳)

 「かがふり」はかぶる、掛けるの意。

 歌番号3858
 五位乃冠(原文)
 ごゐのかがふり(かな)
 五位の位階(冠は位を示す文書に代わった)

 「かがふり」は位を示す。
 古くは位階によって冠の色が違った。

 歌番号4321
 美許等加我布理(原文)
 みことかがふり(かな)
 天皇の命令を受け(訳)

 「かがふり」は受けるの意。

 上代語「かがふり」は、以下のように音韻変化したと思われる。

 かうぶり

 こうぶり・かんむり

 かふり・かぶり・かむり

 以下のようなアイヌ語がある。

 kamu カム かぶさる・覆う
 kamu-re カムレ かぶせる・おおう
 kakka カッカ を掛ける
 inaw-ru(inaw-ri) イナウル・イナウリ 幣の・冠(幣の・頭髪)

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カシミール3Dデータ

総沿面距離11.5km
標高差320m

区間沿面距離
大歳神社
↓ 2.1km
カブリ山
↓ 2.3km
のべり
↓ 2.4km
一兵衛山
↓ 1.6km
京良原峠
↓ 3.1km
大歳神社
 

のべり北の展望地から 中央が雲月山
 
来尾峠の南から 高杉山とカブリ山
  
登路(「カシミール3D」+「地理院地図」より)