山歩き

おっぱい山…那須集落…奥三ツ倉…押ヶ垰
2017/4/30

恐羅漢公園線入口…おっぱい山…那須横川分岐…那須集落…藤十郎…中三ツ倉…奥三ツ倉…押ヶ峠…県道296号線

■おっぱい山574m:広島県山県郡安芸太田町大字吉和郷字遊井(あぞい)

県道を100mほど進む
民家の間から山道に入る
石垣の残る山道
植林地を登る
おっぱい山道標
アカマツ林のおっぱい山
吉和郷無線中継局
石の道標
鍋山
吉和郷町有林の看板
植林地の古道
ジャノクラキビレの東に入る谷
朽ちた鉄橋を渡り那須に入る
集落を通り林道へ
藤十郎
中三ツ倉東面の雪
中三ツ倉分岐
奥三ツ倉
女鹿平山、冠山、十方山を望む
奥三ツ倉南の大岩
キリイシのタキへ下りる尾根の先端と立岩山
1200m付近のブナ
恐羅漢公園線を望む
尾根を塞ぐ大岩
鍋山と天上山
1020m付近の大岩
植林地から雑木林を下る 900m付近
急坂の植林地を下る 700m付近
押ヶ垰断層鞍部東側の山道
鞍部から山道を下ると集落に出る
集落上部からダム方向を見る
右に立岩山
左 市間山
打梨小学校跡
打梨発電所
県道横の水路
おっぱい山へ上がる尾根
6:00 恐羅漢公園線入口 気温5度 晴れ
 

7:00 おっぱい山
7:30 那須横川分岐
9:50 那須集落
10:35 風小屋林道終点
12:10 藤十郎
10:40 中三ツ倉
13:00 奥三ツ倉
14:10 キリイシのタキ分岐
16:10 押ヶ垰集落
16:50 坂根
17:05 那須橋
18:10 大古屋古道入口
18:40 出発点


 県道252号線(恐羅漢公園線)入口を出発。気温5度で肌寒かった。太田川沿いの県道296号線を100mほど歩くと、民家の間に横川への旧道の山道が入っている。以前は「おっぱい山登山道入口」の看板があったのだが、今は無くなっている。

 民家と車庫の間を入ると、山道が林の中に入っている。坂道を登ると、対岸の上本郷の町並みが見える。道沿いに洞穴が二つあった。石垣のある道を登り、尾根を西向きに進む。この山道は石畳の路であったという。落ち葉が深く、石畳が明瞭でないが、道端に石積が残っている。

 石畳の跡なのか、道上に石垣に使うような岩が多い。山道はスギやヒノキの尾根をジグザグに登っていく。尾根西面のヒノキに皮剥が見られた。旧道の途中におっぱい山への道標がある。山道は東側へ少し登り、植林地の尾根を緩やかに登っている。

役場付近から見たおっぱい山
旧道の洞穴
ヒノキの皮剥

 出発から1時間ほどで574ピークのおっぱい山。アカマツ林で展望はない。山頂から旧道へ下る。コバノミツバツツジの花が残っている。ミヤマシキミの花がたくさん咲いていた。10分ほどで旧道に出た。中国電力の吉和郷無線中継局がある。

 植林地の尾根の平坦な山道を進む。クロヤマ谷の川音が大きく聞こえる。おっぱい山から30分ほどで那須横川分岐。「右横川 左那須」と書かれた明治の石の道標がある。右へ行くと、恐羅漢公園線に出る。左の山道を進む。

 林の間から町並みが見える。日が入る所は笹が茂っている。山道が尾根の高さになって所で、山側に入ってみると、作業道が通っていた。東側に鍋山が見える。牛首三角点の南尾根を回り、植林地を進むと、吉和郷町有林の看板がある。植栽年度、昭和35年とあるので、半世紀以上が経過しているが、周辺の樹木は細い木が多い。

コバノミツバツツジ

 大古屋へ下りる尾根を越えると、山道は下りになる。山道はジョウダンの谷の水源を通る度に、谷側へ深く入っている。道沿いに炭焼跡があった。道はジャノクラキビレの東側を通る谷に深く入る。谷は倒木で覆われていた。

 山道にマツカサの食痕が幾つか落ちていた。道はジャノクラキビレの南尾根を回り込んで、那須側に出ると強い谷風が吹いていた。植林地を下る。林間から民家が見える。崖を渡り、ジグザグに下る。ヤブツバキの花が残っている。錆びて朽ちた割れ目のある鉄橋を渡る。出発から4時間ほどで那須集落。

 那須川沿いにサクラが咲く車道を進む。林道沿いにミヤマカタバミの白い花がたくさん咲いている。ウラオレ橋から風小屋林道に入る。あまり暑いのでトウジュウロウ谷で休んだ。林道終点にヤマナシの花が咲いていた。

マツカサの食痕
ミヤマカタバミ

 終点から山道を登る。下の谷側に作業道が通っていた。植林地の谷を横切り、尾根を登る。こちらのコバノミツバツツジはまだツボミ。植林地の木の階段を登る。大岩を過ぎて、緩やかな尾根の樹林帯に入る。東の斜面に雪が残っていた。林道終点から1時間半ほどで藤十郎。

 一休みしてブナの尾根を進む。こちらもピーク直下に雪が残っている。大岩の間を通り、中三ツ倉分岐に出る。日の射す尾根は暑い。大岩の陰に雪が残っている。中三ツ倉から20分ほどで奥三ツ倉。

 女鹿平山の右手に冠山が霞む。ササを分けて南へ下る。この辺りは背丈を越える笹薮だが、雪の下にあったササは、所々まだ寝たままだった。大岩の横を通る。尾根が下り始めると、ササは腰ほどの高さになる。前方が開け、キリイシのタキへ下る尾根の先端と、その先に立岩山が見える。

ショウジョウバカマ

 左手に戸河内の里が見える。緩やかなササ尾根を下る。大きいスギが点々とある。樹林の間を1215ピークに進む。東側に山を縫う恐羅漢公園線が見える。サカネ谷鞍部の尾根を大岩が塞ぎ、巨石が水源を覆っている。大岩の西側を回り込んで尾根に上がる。市間山北尾根の向こうに鍋山と天上山が見える。

 キリイシのタキに下りる尾根の分岐に出ると、大谷川から強い風が吹き抜けた。左のスギ林の尾根を下る。ヤマザクラの花が残っている。ヒノキ林を下る。大岩の左側を通る。クロモジが多い。950m付近のヒノキ林を下る。

 植林地の急坂を下り、押ヶ垰断層帯の鞍部に出た。鞍部の東側から押ヶ垰集落へ下りる山道が通っている。植林地の山道を下ると民家に出る。民家の屋根越に立岩山が見える。坂を下ると市間山が見える。県道へ下りた。

イワカガミ

 押ヶ垰の八重桜が満開だった。サワグルミの花穂が垂れ下がる。ヤマブキやクサイチゴの花が咲く。川原の巨石の傍にはボルダリングの人々が集まっていた。坂根の打梨小学校跡を通る。川沿いにツツジが咲いている。ミツバウツギはツボミだった。

 那須橋に17時5分着。打梨発電所の水路管を見上げる。太田川左岸の車道の傍に水路が続いている。大古屋の出先の先端にある民家のシダレザクラが咲いていた。大古屋から那須へ行く古道の前を通り、押ヶ垰から2時間半ほどで出発点に帰着。

イカリソウ
イカリソウ
ユズリハ
ヤブツバキ
ミツマタ
ヤマナシ
クロモジ
サワグルミ
ミヤマシキミ
イワカガミ
アオキ
ネコノメソウ



地名考

 「タオ・タワ・トオ・トウは峠。西中国ではタオの用例が最も多い」(「西中国山地」桑原良敏)。

 「トリゴエ 鳥越。山の鞍部。鳥が通る尾根の低い所」(同)。

 「たわ」は古事記に、「たをり」は万葉集(七世紀)にある古い言葉で、山の尾根などの、たわんで低くなった所。鞍部を意味する。「タワ」「タヲリ」は7世紀以前にさかのぼる古い地名と思われる。


 『正面を越えるなら谷川の川上、山の土の最も多く消磨した部分、当世の語で鞍部を通るのが一番に楽である。純日本語ではこれを「たわ」といい(古事記)また「たをり」ともいっている(万葉集)

 「たわ」「たをり」は地名と為って諸国に存するのみならず、普通名詞としても生きている。鎌倉の武士大多和三郎は三浦の一族で、今の相州三浦郡武山村大字太田和はその名字の地である。伊賀の八田から大和へ越える大多和越、その他この地名は東国にも多く、西へ行くほどなお多い

 「たをり」という方では大隅の福山から日向の都城へ越える小山、今は馬車の走る国道であるが、その頂上の民居を通山という。伊予喜多郡喜多灘村大字今坊字トオリノ山、備前邑久郡裳樹村大字五助谷字通り山、美濃恵那郡静波村大字野志字通り沢、越後南蒲原郡大崎村大字下保田字通坂、常陸那珂郡勝田村大字三反田字道理山等も皆これである

 中国では峠を「たわ」または「たを」といい、その大部分は乢の字を当てている。乢はいわゆる鞍部の象形文字で、峠の字と同じく和製の新字である。内海を渡って四国に入れば、「たを」とは言わずに「とう」と呼ぶけれども、「とう」はまた「たを」の再転に相違ない。土佐の国中から穴内川の渓へ越える繁藤に、肥後の人吉から日向へ越える加久藤は、共に有名な峠であるがこの藤もまた「たを」であろう』(峠に関する二、三の考察 柳田国男)。


 トリゴエは「タヲリコエ」の転訛であろう。

 タオリコエ → トオリコエ → トリゴエ の転訛。

 以下の地名がある。

 通越 トオリゴエ 山形県
 切通越 キリトオリゴエ 香川県
 (馳通峠 ハセドオリトウゲ 岩手県)
 (大通峠 オオドオリトウゲ 兵庫県)
 (峰通峠 ミネトオリトウゲ 徳島県)


 西中国のタオ・タワ・トオ・トウは次のような転訛。

 タオリ → タオ → トオ → トウ の転訛。

      → タワ の転訛。

 トウゲはトウゴエの転訛であろう。

 東越 トウゴエ 愛媛県
 道越 ドウゴエ 大分県・福岡県
 おとう越 オトウゴエ 宮崎県


 小峠越(コタワゴエ) 岡山県

 タワゲ 隠岐島の峠の方言


 タオ、ダオを含む地名は中国地方に多い。オリを含む地名は東日本に多いようだ。

 万葉集にある「やまのたをり」2首は、大伴家持が越中国守の時に詠んだものである。当時、山の鞍部を「たをり」と呼んでいたが、西日本では「タオ」、東日本では「オリ」が峠の呼び名として使われるようになった。

 西中国にある「タオ」地名をみると、必ずしも峠にあるとは限らない。川沿いの字名に「タオ」がある。

 押ヶ垰は坂根、那須、打梨と同じように集落名である。押ヶ垰は断層帯の小鞍部に過ぎない。押ヶ垰の南にある立岩ダムのカヤノガダオの方が、吉和と戸河内を分ける峠である。


 アイヌ語に taor タオル がある。
 「川岸の高所」の意である。
 taor は分解すると、ta-or で、「高い・所」の意。

 アイヌ語地名に以下がある。

 ar-taor-oma-p
 アル・タオル・オマプ
 片側・高岸・ある・所(安足間=アンタロマ) 北海道

 taor-oma-p
 タオロマプ
 高岸・ある・所(タルマップ川) 北海道

 taor-oma-i
 タオロマイ
 高岸・ある・所(樽前) 北海道

 taor-kes
 タロケシ
 高岸・末端(樽岸) 北海道


 「タル」を含む峠名に以下がある。

 樽峠 タルトウゲ 山梨県
 樽口峠 タルグチトウゲ 山形県


 古事記、万葉集の峠

 (古事記)
 (訓読)山の多和より御船を引き越して逃げ上り

 (原文)山多和【此二字以音】引越御船逃上

 (万葉集4122)
 (仮名)あしひきの やまのたをりに このみゆる あまのしらくも」

 (訓読)あしひきの 山のたをりに この見ゆる 天の白雲

 (原文)安之比奇能 夜麻能多乎理尓 許能見油流 安麻能之良久母

 (万葉集4169)
 (仮名)やまのたをりに たつくもを

 (訓読)山のたをりに 立つ雲を

 (原文)山乃多乎里尓 立雲乎

 (万葉集3278)
 
(仮名)たかやまの みねのたをりに いめたてて

 (訓読)高山の 嶺のたをりに 射目立てて

 (原文)高山 峯之手折丹 射目立


 また万葉集には「峰越」「坂越」がある。

 (万葉集2694)
 
(仮名)あしひきの やまどりのをの ひとをこえ ひとめみしこに こふべきものか

 (訓読)あしひきの 山鳥の尾の 一峰越え 一目見し子に 恋ふべきものか

 (原文)足日木之 山鳥尾乃 一峰越 一目見之兒尓 應戀鬼香

 (万葉集1262)
 
(仮名)あしひきの やまつばきさく やつをこえ ししまつきみが いはひつまかも

 (訓読)あしひきの 山椿咲く 八つ峰越え 鹿待つ君が 斎ひ妻かも

 (原文)足病之 山海石榴開 八<峯>越 鹿待君之 伊波比嬬可聞

 (万葉集3962)
 (仮名)あしひきの やまさかこえて あまざかる

 (訓読)あしひきの 山坂越えて 天離る

 (原文)安思比奇能 山坂古延弖 安麻射加流


 峠名一覧

 tawa-koe
 小峠越(コタワゴエ) 岡山県

 tawa-koe → tawa-ke
 タワゲ 隠岐島

 tawa
 大多和峠 オオタワトウゲ 富山県
 ウツツキタワ(西中国山地)

 taori-koe → tori-koe 
 鳥越
 大通越 オオトリゴエ 熊本県

 taori-koe → toori-koe
 通越 トオリゴエ 山形県
 切通越 キリトオリゴエ 香川県
 (馳通峠 ハセドオリトウゲ 岩手県)
 (大通峠 オオドオリトウゲ 兵庫県)
 (峰通峠 ミネトオリトウゲ 徳島県)

 taori-koe → tao-koe
 大田尾越 オオタオゴエ 愛媛県

 tawa → tawo,too,tou
 taori-koe → tou-koe
 三頭越 サントウゴエ 徳島県
 東越 トウゴエ 愛媛県
 道越 ドウゴエ 大分県・福岡県
 おとう越 オトウゴエ 宮崎県
 (峰堂峠 ムネンドウトウゲ 香川県)
 (峰峠 ムネンドウ 高知県・愛媛県)
 (大通峠 オオドウタオ 山口県)

 taori → ori
 谷折峠 タニオリトウゲ 富山県
 栃折峠 トチオリトウゲ 富山県
 オリコシ 笹の折峠 羅漢山

 taori → taru
 樽峠 タルトウゲ 山梨県
 樽口峠 タルグチトウゲ 山形県

 taori
 田折峠 タオリトウゲ 愛知県

 「代官屋敷は天正二年(1574)甲斐の武田勢に、南西方の田折峠付近から砲火をもって攻め落とされた」(代官屋敷跡看板=下山村大字東大沼字代官屋敷)とあるので、田折峠は古い呼び名のようだ。

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カシミール3Dデータ

総沿面距離26.2km
標高差1034m

区間沿面距離
恐羅漢公園線入口
↓ 1.5km
おっぱい山
↓ 4.7km
那須集落
↓ 5.9km
奥三ツ倉
↓ 3.1km
押ヶ垰
↓ 11.0km
出発点
 

峠データベースHP 「タオ」を含む分布 141件
峠データベースHP 「ダオ」を含む分布 84件
峠データベースHP 「オリ」を含む分布 41件
峠データベースHP 「タワ」を含む分布 90件
峠データベースHP 「ダワ」を含む分布 54件
峠データベースHP 「越」を含む分布 1486件
峠データベースHP 「トリゴエ」を含む分布 99件
 
藤十郎のミズナラ
奥三ツ倉から見た女鹿平山と冠山
キリイシのタキへ下りる尾根の先端と市間山、立岩山
 
登路(「カシミール3D」+「地理院地図」より)