山歩き

裏匹見…鈴ヶ岳…青路頭…アオジガ谷
2011/11/27

裏匹見…ダンナゴヤ谷…鈴ヶ岳…青路頭…アオジガ谷…ゲンカ橋…488号線…裏匹見

■青路頭(アオジガシラ)989.3m:島根県美濃郡匹見町大字匹見字広見イ1028番地(点の記) (益田市)

夫婦橋
夫婦橋を渡って遊歩道へ入る
広見川・赤谷合流点
階段の遊歩道を進む
新しい石の階段の遊歩道
エンコウの棚の橋
オオコウ谷
ダンナゴヤ谷の石垣
ダンナゴヤ谷左岸の石積み
谷の分岐のダンナゴヤ谷に石積みが続く
谷の分岐に入るとすぐに滝
滝の上の涸れ谷を進む
谷の水源を登る
鈴ヶ岳
御境
青路頭
新しいクマ糞
アオジガ谷鞍部
アオジガ谷水源のスギ林
アオジガ谷上部の小滝
アオジガ谷右岸のワサビ田跡
アオジガ谷下流の滝
左岸の石垣を進む
小屋跡
広見川渡渉地点
広見川左岸の石垣
7:00 裏匹見駐車場 曇時々晴 気温3度
 

7:40 ダンナゴヤ谷
9:40 鈴ヶ岳
10:25 922P
10:55 青路頭
11:45 アオジガ谷鞍部
13:30 国道
13:35 ゲンカ橋 
13:55 鈴ヶ嶽の清水
14:40 小河橋 
14:50 裏匹見駐車場


 夫婦橋を渡り、広見川右岸の遊歩道を進む。広見川と赤谷の合流点を過ぎると、遊歩道は階段の道となる。遊歩道は広見川右岸の崖を通っている。ヤマグルマが果実を付けていた。右岸を進むと、遊歩道に新しい石の階段が作られていた。遊歩道はエンコウの棚で左岸に渡っているが、猟具使用禁止区域の赤い表示のある右岸の踏み跡を進み、石垣の横を通ってオオコウ谷に出た。

 オオコウ谷からスギ林の尾根端を越えるとダンナゴヤ谷に出る。谷の落口に大きい石垣が組まれ、ワサビ田であったようだ。左岸に渡ると、そこにも石垣がある。野生化したワサビの葉が残っている。左岸に長い石垣が続き、その途中から左岸に小谷が下りていた。

ヤマグルマ

 小谷を登ると、すぐに高い滝に阻まれた。左岸を高く巻く。滝の上にさらに滝があった。そのまま左岸を巻く。滝の上は岩の涸谷であった。大分登った所で、頭上の木にギャギャとうるさいほど鳴いて鳥が留った。カケスの番のようであった。谷の入口から2時間ほどで尾根に出た。そこから5分ほどで鈴ヶ岳の810ピーク。林で展望は無い。アカマツが一本あった。三角点のような石柱がある。

 林間から恐羅漢方向への展望がある。引き返して青路頭へ向う。尾根道のササは低く、歩きやすい。大きいツガのある尾根を進む。鮮やかなモミジの赤と黄と紅葉が残っている。922ピークを越えたところで、クマの新しい糞があった。暖かい日には、クマがまだ徘徊しているようだ。尾根にはアカマツが所々ある。

ダンナゴヤ谷のワサビ

 右手に五里山の峯が見える。ササを分けて三角点のある青路頭に出た。開けた所に出ると御境が見えるが、冠山は霞んでいる。千両山が尾根の間に覗き、小郷山、大神ヶ岳が見える。左手に五里山の峯が続き、十方山が見える。

 ササ尾根を進む。左手に広見山、半四郎山が見える。古いクマ糞が転がっていた。そこから5分ほど進んだところに、こんどは新しいクマ糞があった。青路頭から1時間弱でアオジガ谷とウチミチの谷の鞍部に下りた。鞍部から北に春日山が見える。南のアオジガ谷に下った。

 ササの斜面を下るとスギ林に入る。谷に入ると、右岸が植林地。谷はスギの倒木が多いので、植林地の踏み跡を下った。林が開けた所は滝となっていた。谷にワサビの葉が残る。倒木を避けて右岸の植林道を進む。ワサビ田跡の石積みが残っている。

シロダモ

 ピンクのテープが続く植林道の目印に沿って、谷の右岸を下った。谷にワサビ田の石積みが見える。右岸の植林道は谷のゴルジュや小滝を回り込んで作られていた。谷の落口の手前で左岸に渡り、薮となった竹林にテープが続く。竹林を抜けると石垣のある道に出た。

 山道は広見川の右岸を下る。前方にゲジガ谷の山が見える。ピンクのテープはまた薮の竹林に入る。竹林を抜けて下り、小屋跡に出た。河崎原鈩跡であろうか。建物の基礎が残る道を通り、やっと広見川右岸に到着。岩伝いに左岸に渡り、石垣の道を登って国道に出た。道路端の反射ポールにピンクのテープが巻いてあった。ここが広見川への降り口である。

ミヤマハハソ
ウバユリ
ムラサキシキブ
ヤブツバキ
ミヤマシキミ
 
 
国道の反射ポールのテープがアオジガ谷入口
ゲジガ谷
アオジガ谷鞍部
鈴ヶ岳
ダンナゴヤ谷



地名考

 日本の縄文語(日本列島共通語)を受け継いだのは、アイヌ語系民族であった。

 アイヌ語によって西日本の古い地名が合理的に説明できることは、その一つの証でもある。

 西中国山地にアイヌ語地名が存在することは、その地名は縄文時代から呼ばれていた可能性のある地名と考えられ、その地名の周辺に縄文遺跡が存在することを予見している。


 匹見町は縄文銀座と呼ばれるほど縄文遺跡の多いところである。とくに裏匹見峡の下流に遺跡が集中している。紙祖川の石ヶ坪遺跡からは、縄文時代に網漁に使われた石錘がたくさん出土している。縄文期に名付けられた地名が現代まで継続している可能性がある。


 アオジがスズメ目ホオジロ科の鳥であれば、青路頭は「アオジの山」の意と考えられるが、そうでなければ次の意が考えられる。
 
●青路頭(アオジガシラ)
 ao-sir
 アオ・シリ
 アオバト・山

 ao-usi
 アオ・ウシ
 アオバト・たくさんいる所

 アオシリ → アオシ の転訛。
 アオシ → アオシ の転訛。

 アイヌ語「ワオ」はアオバトの鳴き声からきている。アオバトは「ワオワオ」「アオアオ」「マオマオ」などと鳴く。

 アオバトのアイヌ語に以下がある。

 wawow ワウォウ
 wao ワオ
 wawo ワォ
 eao エアオ

 次のようなアイヌ語地名がある。

 青苗川(アオナエガワ・奥尻島)
 wao-nay
 ワオ・ナイ
 アオバト・川

 和宇尻(ワウジリ・札幌)
 wao-siretu
 ワオ・シレト
 アオバト・岬


 「アオバト 全町33cm、芸北地域では臥竜山でよくみられる。緑色のハトで、『ワォオーワォオー』と奇妙な声で鳴く。ドングリなどの果実を主食としているが、ブナの新芽がでるころには臥竜山で十数羽の群れを見ることができる。臥竜山では繁殖もしており、ブナの高い位置に小枝を集めて巣をつくる。しかし、雛が孵るとたいていカケスに捕食されることが多い」(『フィールドガイド芸北の自然』)。

 「アオバト ハトと同じぐらいの大きさ。キジバトより力強く、大きなはばたきをして飛翔する。山地の森林に生息する。特徴のあるアオー、アーアオーオーという声で鳴く。県民の森、吾妻山、吉和の細見谷、庄原市本町、御手洗川河口、八幡川河口、芸北町、廿日市極楽寺、広島市牛田で記録されている」(『広島県の鳥』)。


 『遠野物語』に「馬追鳥」(うまおえどり)がある。馬追鳥はほかに、マオー・アオー・オエオ・魔王鳥などの別名を持ち、いずれもアオバトの鳴き声によって命名されている(『ワオとマオ−−アイヌと東北と』HP要旨)。

 馬追鳥の伝承は東北に多い。『馬追鳥<動物昔話・小鳥前生>伝承資料』から紹介してみる。

★「馬追(まお)鳥の前生」(青森県三戸郡五戸町)

 侍の下男が一寸眠った間に馬が逃げ、下男は手打ちになる。下男の魂は口惜しくてマオ鳥になり、マオマオと鳴いて馬を探している。

★「馬追鳥」(岩手県久慈市)

 意地の悪い継母の十歳ばかりの男の子が野原で馬を逃がしてしまった。継母は馬を見つけて来いといって、家を追い出す。子供は「馬(んま)ーおー馬ーおう」と呼んで、そのまま鳥になった。

★「馬鳥」(岩手県滝沢村)

 馬を見つけられない子供が「馬おおう、馬おおう」と鳴いて鳥になる。

★「おわあ鳥」(島根県仁多郡横田町馬木)

 「おわあ(負いましょう)、おわあ」と鳴く


 同様のあらすじの伝承が多くあり、その中でアオバトは以下のように鳴く。

 「あーほう まあーほ」
 「あおー」
 「ママアオウ」
 「あほ、あほ」
 「マオー、マオー」(魔王鳥)
 「アオー、アオー」
 「マオードリ」(馬追鳥)


 匹見町の昔話集(島根大学昔話研究会)には「おおもう鳥」として、アオバトが登場する昔話が二点ある。馬はでてこないが、子どもがアオバトになる点が共通している。

 おおもう鳥

   匹見町臼木谷  竹田イツ(明治27年生・女)

 昔ね、麻を作って、から、苧(お)を績(う)んで、何、績んで、それを何で、子供が、すこいでから、いっそどがあもならんようんなったけえ、お母さんのぶんが腹あ立ってね、そえから山奥に、その子を負い捨てたちゅうて。

 そいて、何だ、ほしたらそれが鳥んなって、おおもう鳥ちゅうて。この方でも、晩げやなんぞに、どがいりゃ時によりゃ、

 「おおお、おおおう、おおおうもう」ちゅうて言う鳥がおるいね。

 (昭和50年8月2日収録)
 
 おおもう鳥

   匹見町広瀬  藤谷一夢(明治44年生・男)

 夜業、「ゆうなべ」ちゅうて夜業にね、苧を績みよったんじゃが、その、子供がねぶとうて仕事をせんちゅうて、苧を績むのを。で、山へ捨てたんじゃげな。仕事をせんで。 それで、

 「おをうもう、おを、おを」

 ちゅうて山鳩になるちゅうて子供をおそらかしょった。
 あれは青鳩ちゅうんじゃねえ。
 そいじゃけえ、いけん子をすりゃ「おをうもうになるでえ」ちゅうて。

 (昭和50年7月31日収録)


 アオバトはアイヌ語で「ワオ」と呼び、アイヌの人々の中では、神謡として伝承されている。

 「昔、山へ木を伐りに行った夫が、道に迷ったか、木に打たれたかして帰らないので、哀れな妻が泣き泣き山を探し歩いて、ついに死んでしまった。それを可哀想に思って神様が鳥にしたので、今も青鳩の姿をして山の中を泣きながら探しているのであるという。

 帰ってこない夫を探しに山へ行き、そこで死んだかわいそうな妻がワオになったという内容である」(『ワオとマオ−−アイヌと東北と』HP)。

アオバト名 呼び名 地域
wawow wauou アイヌ語
馬追鳥 mao 東北
魔王鳥 mao 東北
おわう鳥 owau 島根県横田町
おおもう鳥 oomou 島根県匹見町


 江戸時代の産物帳(1730年代)によると、長門国で「青鳩(あおばと)」、周防国で「青はと」がある。

 アオバトの呼び名、「ワウオウ」「マオ」「オワウ」「オオモウ」は、古い時代のアオバトの呼び名(鳴き声)から派生したと考えられる。

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カシミール3Dデータ

総沿面距離15.6km
標高差665m

区間沿面距離
裏匹見
↓ 4.0km
鈴ヶ岳
↓ 1.6km
青路頭
↓ 3.7km
アオジガ谷
↓ 6.3km
裏匹見
 

 


青路頭から
           五里山                           御境              千両山
青路頭から
             十方山              京ツカ山                         1158P
アオジガ谷鞍部
鈴ヶ岳
カシミール3D+植生図(環境省「第2回自然環境保全基礎調査 植生調査」から) 
10:ブナ−ミズナラ群落 12:アカシデ−イヌシデ群落 15:タラノキ−クマイチゴ群落 
17:サカキ−ウラジロガシ群集 26:コナラ群落 44:アカマツ植林 46:スギ・ヒノキ植林 
登路(薄茶は900m超 茶は1000m超)  「カシミール3D」+「国土地理院『ウォッちず』12500」より