山歩き

三葛…ツムギ谷…ククリキ谷…広高谷
2010/11/28

三葛…ツムギ谷…ククリキ谷…ククリキ谷鞍部…ヒロコウ谷…作業道…広高林道…三葛

三葛入口
殿屋敷遺跡とツムギ谷入口
スギ林の墓
分岐手前の滝
ククリキ谷落口
ウサゴエ谷落口
ククリキ谷
ククリキ谷最初の滝
ククリキ谷
ククリキ谷水源
鞍部手前
東の谷へ下る 中央は広高山
ワサビ田跡の石積み
谷の落口
東側のワサビ田の小谷 上を作業道が通る
ヒロコウ谷下流方向
トウダイゴヤ落口の林
山道は谷へ下りる
ノブガハラ谷落口
高井山
ヤロク谷
右岸の山道
クリノキのクマ棚
作業道と高井山
安蔵寺山と高井山
8:10 三葛 みぞれ後晴れ 気温4度
 

8:25 ツムギ谷
8:50 木地屋墓
9:55 ククリキ谷
11:40 ククリキ谷鞍部
12:25 ヒロコウ谷
14:05 作業道入口
15:20 三葛

 
 中ノ坪遺跡のある三葛入口を出発。小川崎橋を渡って紙祖川左岸の車道を進む。広高谷の奥は暗い雨雲が掛かっている。殿屋敷遺跡の前を通り、ツムギ谷の入口辺りから雨が降り始めた。魚切滝、一の谷上流の滝を過ぎると、山道は谷へ下りて行く。二の谷、三の谷を過ぎ、スギ林に入るとすぐ木地屋の墓がある。ここで雨具をつけた。この辺りは「踊り小屋」と呼ばれている。

 「ツムギ谷の中流の二つの瀬戸を登ったところにある平坦地は現在スギ林となっているが、木地屋の部落があったようで古い墓石がある。春日野満著『ひきみ川』によるとここを「踊り小屋」と呼び、周辺の木地屋の若い男女と村里の若者や娘達が集まって徹夜の踊りに興じた場所だとある」(「西中国山地」桑原良敏)。

 スギ林を通り、スギ林の東端に近づくとオヒョウニレの枯葉が落ちていた。この辺りから上流に掛けてオヒョウが多い。スギ林を抜けると谷歩きとなる。木々はすっかり葉を落とし、小雨だが谷は明るい。五の谷を過ぎると小滝がある。左岸を巻くと山道があった。ウサゴエ谷、ククリキ谷の分岐を越えたところで雨はみぞれに変わった。

スギ林のオヒョウ

 ククリキ谷に入った。まもなく小滝がある。谷にワサビの葉がある。この谷はワサビ田の谷であった。ウサゴエ谷もワサビ谷である。分岐を東へ進む。ワサビ田は水源まで続いていた。水源のササは霙で白く覆われていた。谷の分岐から1時間半ほどで白いササ原の鞍部に出た。東側に広高山が見える。

 鞍部を越えて東側の谷へ下った。下ると間もなくワサビ田跡の石積みが残っていた。30分ほどで広高谷へ下った。谷の入口は崖となっており、崖の上にワサビ田跡の石積みがあった。広高谷の下流はゴルジュとなっている。東側の小谷はワサビ田跡で、その上に作業道が見える。ヒロコウ谷に日が射して晴れ間が広がる。ワサビ田を上がり、途中から広高谷右岸の山道に入った。

ホコリタケ

 山道はトウダイゴヤの手前に下りている。この付近は川幅が広い平坦地になっている。トウダイゴヤの出口は広葉樹の林に覆われていた。右岸の林を進むと山道に出た。右岸から下りる小谷の所で山道は一旦谷へ下りる。左岸に渡り、すぐ右岸に道がある。右岸を進むと崖の谷に入り込む。ノブガハラ谷である。崖の上は岩盤の谷となっている。

 山道は右岸の高い所を通っている。前方に高井山が見える。山道はヤロク谷に入る。ここも崖の谷で上部は大岩がゴロゴロしている。山腹を進むとクリの木にクマ棚があった。山道は作業道に下りていた。視界が開け、高井山の東面は伐採されている。西側に安蔵寺山が見える。

 道沿いにケヤキ、ハリギリ、ウリハダカエデ、コナラなどの幼木が葉を出していた。オオタチヤマ谷を過ぎた所でイノシシがササの中を登って逃げ去った。里近くまで下るとクリの木にトタンが巻いてあったが、その上にクマ棚があった。畑ではワサビの植え付けがされていた。

ハリギリ
ウリハダカエデ
ケヤキ
コナラ
コナラ
ウラジロガシ
キカラスウリ
 
オオズエ谷のワサビ田
里のクリの木のクマ棚
三葛奥の畑
左広高谷 中央三葛富士 右ツムギ谷


地名考

 日本の縄文語(日本列島共通語)を受け継いだのは、アイヌ語系民族であった。

 アイヌ語によって西日本の古い地名が合理的に説明できることは、その一つの証でもある。

 西中国山地にアイヌ語地名が存在することは、その地名は縄文時代から呼ばれていた可能性のある地名と思われ、またアイヌ語地名が存在することは、その地名の周辺に縄文遺跡が存在することを予見している。


●ククリキ谷 
 yuk-kut-rikin-pet 
 ユク・クッ・リキン・ペッ 
 鹿が・崖を・登る・川

 ku-ku-riki の転訛。

 ククリキ谷、ウサゴエ谷合流点の下流は崖となっており、鹿の通り道であったと思われる。ククリキ谷の鞍部は黒ボク土で、縄文期にススキ原であったと考えられる。鹿は林と草原が点在する所を好む。周辺はブナ−ミズナラ群落で、ドングリは鹿の重要な食料の一つである。

 匹見町の遺跡では中ノ坪遺跡で石鏃の出土が突出している。また三葛では最近まで東北マタギの風習に似た「熊祭り」が行われていた。縄文の三葛は狩の村であったと思われる。

三葛の「熊祭り」
昭和57年(1982)ごろ行われた熊祭り 
(『匹見町誌・遺跡編』より)

●ノブガ谷・ノブガハラ谷
 nopu-kar-pet
 ノプ・カラ・ペッ
 サワグルミを・取る・沢

 nopu-ka の転訛。
 nopu-ka-ara の転訛。

 「ノブガ谷、ノブガ原のノブはサワグルミの樹木方言で多くの地域で採集した。水辺や湿気の多い所に多い。杉のように直立しているので判り易い木である。材が軽いので桐下駄の代用材、マッチの軸木に使われていた」(「西中国山地」)。

 西中国山地の谷にサワグルミは多い。どの谷に入っても必ずある。

 サワグルミを「ノブ」と呼ぶ地域は西中国山地周辺だけではないようだ。兵庫・奈良・鳥取・山口・徳島・愛媛・高知・福岡・長崎・熊本・大分などで、「ノブノキ」は岡山である。「ノブ」は西日本の共通語であったのかもしれない。

 「ノブ」をサワグルミの縄文語とすれば、「ノブガ」の意味が鮮明になってくる。「ノブ」を含む地名は西中国山地では「ノブガ」として登場する。

 サワグルミの樹皮は昔、小屋の屋根材や箕として使われた。縄文時代にも同様に使用されたかもしれない。

●ヤロク谷
 yar-uk-pet
 ヤラ・ウク・ペッ
 樹皮を・取る・沢

 yar-uku の転訛。

 樹皮を取る木として、サワグルミ、ヤマザクラ、ミズメ、オヒョウニレなどが考えられる。

●トウダイゴヤ
 tun-tay-ko-an-pet
 トン・タイ・コ・アン・ペッ
 ドングリ・林・そこに・ある・川

 ton-tai-ko-a の転訛。

●クミジ谷
 kum-us-pet
 クム・ウシ・ペッ
 ドングリ・群生する・川

 kumu-shi の転訛。

 周辺はブナ・ミズナラ群落、クリ・ミズナラ群落である。縄文期ドングリは重要な食料であった。中ノ坪遺跡から敲石2個、凹石14個出土している。これらはドングリなどを磨り潰したと考えられる。

●ヒロコウ谷 
 piro-kotan-pet 
 ピロ・コタン・ペッ 
 ドングリ・所の・川

 piro-ko の転訛。

 ヒロコウ谷周辺はブナ・ミズナラ群落、クリ・ミズナラ群落である。アイヌ語「コタン」は「村」の意であるが、「場所」「所」の意もある。次のようなアイヌ語地名がある。「村」と訳している場合もあるが場所を指している。

 kamuy-kotan カムイ・コタン 神の・居所(崖、滝など)
 karusi-kotan カルシ・コタン キノコ・所
 punkar-kotan プンカラ・コタン 蔓・村
 chironnup-kotan チロンヌプ・コタン 狐・村
 uray-kotan ウライ・コタン 簗・村

●オオズエ谷 
 o-tuye-us-pet 
 オ・ツィエ・ウシ・ペッ 
 川尻・崩すことが・常である・川

 o-tue の転訛。

 アイヌ語「tuye」は「トィエ」とも呼ぶ。アイヌ語地名に「音江」(オトエ)がある。

 o-tuye-us-nay
 オ・トィエ・ウシ・ナイ
 川尻・切れる・いつもする・川

 西中国山地地形方言「ツエ」「クエ」は「山崩れ」「崩れることをツエル」(「西中国山地」)の意である。 

●ツムギ谷
 atu-muk-pet
 アツ・ムク・ペッ
 オヒョウニレの皮を・剥ぐ・川

 tu-muku の転訛。

 斧、まさかりはアイヌ語で「mukar」(ムカラ)と呼ぶ。分解すると次のようになる。

 muk-ar ムク・アラ 剥ぐ・させる

 斧はアイヌ語で「剥ぐことをさせる」ものの意がある。三葛の中ノ坪遺跡から打製石斧58個、磨製石斧12個が出土している。石斧は土堀道具であるとともに皮剥ぎ道具であった。

●踊り小屋(オドリゴヤ) 
  atu-ori-ko-an-pet 
  アト・オリ・コ・アン・ペッ 
  オヒョウニレの・丘・に・ある・川

 at-ori-ko-a の転訛。

 木地屋の墓のある付近は、現在スギ林の平坦地となっている。この付近を「踊り小屋」と呼んでいる。スギ林の東端付近から上流にかけてオヒョウニレが多い。「オドリゴヤ」はこの付近の川名であったと思われる。ツムギ谷、踊り小屋はオヒョウに由来した地名と考えられる。

 アイヌ語地名にタッニナルシナイがある。周辺の駅名は「樺岡駅」である。

 tat-ninar-us-nay 
 タッ・ニナラ・ウシ・ナイ
  樺の・丘・にある・川


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カシミール3Dデータ

総沿面距離13.6km
標高差584m

区間沿面距離
三葛
↓ 3.5km
ククリキ谷
↓ 2.4km
広高谷
↓ 2.9km
作業道入口
↓ 4.8km
三葛
  

 
 
 
第2回植生調査植生図(昭和54年)+カシミール3D
10:ブナ−ミズナラ群落 11:クリ−ミズナラ群落 26:コナラ群落 46:スギ・ヒノキ植林地
カシミール3D+国土交通省土壌図
Azo-1(黒ボク土・ククリキ谷鞍部) Azo-2(厚層黒ボク土・踊り小屋東付近・ギオン谷)
ククリキ谷
安蔵寺山と高井山
伐採された高井山東面 1048ピーク
登路(薄茶は900m超 茶は1000m超)  「カシミール3D」+「国土地理院『ウォッちず』12500」より