山歩き

深山…ツチダキ谷…阿佐山…谷の小屋谷
2010/10/16

ミヤマ…大暮川…ガンジョウジ谷…ツチダキ谷…ツチダキ…ツチダキ谷…カタラ谷…阿佐山…二十丁峠…谷の小屋谷…深山

■阿佐山(アサヤマ・ドウゲン山)1218.2m:広島県山県郡芸北町大字大暮字阿佐山(点の記・阿佐山) 北広島町

深山大橋と毛無山
大暮川右岸の林道を進む
尾関神社とツガの大木
スギ林の中の墓所
阿佐山橋を渡ると登山口
小屋の横のシラカバ
林道が山へ上がる地点
大暮川水源
最奥の堰堤
左ガンジョウジ谷・右ツチダキ谷
ガンジョウジ谷の滝
ツチダキ谷
林道終点 ツチダキ谷左岸
根元周囲1.9mのオヒョウニレ
オヒョウ群生地のゴーロ
登山道のツチダキと呼ぶ鞍部
東のツチダキ谷水源からスキーコースに出る
石多いツチダキ谷跡のスキーコース
ゲレンデの水路と化したツチダキ谷
ツチダキ谷・カタラ谷合流点
カタラ谷のゴーロに生えるオヒョウニレ
スギ林を登る
岩の谷
阿佐山山頂の避難小屋
ブナの登山道を進む
二十丁峠
植林地を下る
阿佐山登山口
6:40 深山 晴れ 気温7度
 
ノコンギク

7:00 登山口
8:10 ツチダキ谷
8:20 ガンジョウジ谷の滝
10:25 ツチダキ(鞍部)
11:20 カタラ谷
13:40 阿佐山
14:15 二十丁峠
15:00 登山口 
15:20 深山


 深山大橋の下の辺りを出発。「林道 細見大塚線」の標識がある。深山大橋から毛無山へ上がる林道は上峠に続いている。大暮川右岸の舗装されていない林道を進む。林道沿いにシナノキが点々とある。尾関権之守の尾関神社にはツガの大木がある。ハリギリの大木の先に墓所があった。植林地の下には石垣が残っている。

 阿佐山橋を渡るとすぐに阿佐山登山口の道標がある。左岸の林道を進むと小屋の横に数本のシラカバが植えられていた。その先に大きいシナノキがあった。川には小さいヤマメが居た。堰堤を過ぎると林道は山へ上がる。その辺りから谷へ降りた。

群れるヤマメ ツチダキ谷・ガンジョウジ谷分岐

 早水越へあがるスグミチの谷付近はスギの大木が多い。「阿佐山公団造林地」の看板がある。右岸の切り開き道を進む。二番目の堰堤を過ぎるとツチダキ谷とガンジョウジ谷の分岐に出る。分岐の下流に小さいヤマメが群れていた。ガンジョウジ谷左岸に切り開きがあり、少し上がってみた。分岐から150mほどの所に10mほどの小滝があった。

 ガンジョウジ谷の入口は寺があったと伝えられている。引き返してツチダキ谷を進む。左岸に林道が上がっていた。林道終点から少し上がった所で、探していたオヒョウニレがあった。二本立ちの下部で周囲1.9mほどあった。そこは900mを越えた所であった。

 点々と生えるオヒョウを数えながら登った。30ほど数えた所でゴーロ帯に入ると、そこはオヒョウの群生地であった。長いゴーロを上がり、右岸の植林地からツチダキと呼ぶ鞍部に出た。登山道はササが刈られていた。

ツチダキ谷のオヒョウニレ
オヒョウ

 東のツチダキ谷へ下ると、すぐにスキーコースに出た。コース上は石が多く、この辺りはゴーロであったと思われる。そこから薮を下ると、すぐにコースである。ツチダキ谷はスキーゲレンデの水路と化して、跡形も無かった。水路のツチダキ谷を下った。ココノ峠の先に大朝の里が見える。ツチダキ谷に昔からあったカツラの巨木が黄葉していた。

 ケレンデ下部に残るツチダキ谷の谷に入った。すぐにカタラ谷の分岐に出た。こちらのツチダキ谷に残るオヒョウは谷の下流だけである。植林地のカタラ谷を進む。少し登ると大きいオヒョウがある。そこは植林地の中だが、ゴーロとなっており、オヒョウが残ったと思われる。周辺に10本ほどのオヒョウの小木がある。

ウスゲタマブキ
モミジガサ

 植林地の谷を進む。キバナアキギリが残っていた。炭焼き跡を通り、岩の谷を登る。ハスノハイチゴが現われると尾根が近い。1時間半ほどで登山道に出た。避難小屋の横を通り山頂。林で展望は無い。

 ブナ林を下った。登山道は西側を回って南へ下る。1116ピークを通り30分ほどで二十丁峠。峠を下ると植林地に入る。登山道は谷の小屋谷の左岸を下りている。下の堰堤に小魚が群れる。最後の堰堤下から右岸に渡り登山口に出た。登山口にカラマツがある。二十丁峠から45分ほどであった。

マムシグサ
ノリウツギ
シナノキ
アキチョウジ
アキノキリンソウ
アケボノソウ
ハルタデ
フウリンウメモドキ
ガマズミ


地名考

 日本の縄文語(日本列島共通語)を受け継いだのは、アイヌ語系民族であった。

 アイヌ語によって西日本の古い地名が合理的に説明できることは、その一つの証でもある。

 西中国山地にアイヌ語地名が存在することは、その地名は縄文時代から呼ばれていた可能性のある地名と思われ、またアイヌ語地名が存在することは、その地名の周辺に縄文遺跡が存在することを予見している。


 アイヌ語の「nay」(ナイ)、「pet」(ペッ)は、「川」の意であるが、東北地方が南限とされる地名である。西中国山地に「ナイ」「ペッ」地名はあるだろうか。

 西中国山地の「ナイ」と思われる地名を以下の表に掲げた。西中国山地では「ミズナシ」が一番多い地名である。「水無」「水梨」などと表す。「ナシ」がアイヌ語「ナイ」と考えれば、「ナイ」は縄文語である。

 「naye」は「nay」の第3人称形で「その川」の意。

西中国山地「ナイ」地名
西中国山地地名 アイヌ語 アイヌ語 日本語
ミズナシ
水梨
pet-nay ペツ・ナイ 谷・川
シリナシ sir-nay シリ・ナイ 山・川
イロナシ
色梨
i-ru-o-nay イ・ル・オ・ナイ クマの・足跡・多い・川
クチナシ kuchi-nay クチ・ナイ 崖・川
エナシ pe-nay ペ・ナイ 水・川
ヨナシ i-o-nay イ・オ・ナイ それ・多い・川
コスギナエ kutu-ke-naye クツ・ケ・ナィエ 崖の・所の・谷川

 アイヌ語地名
★pet-pet-nay ベツベツナイ(北海道)沢沢川
★sir-nay シリナイ(北海道・尻苗・シリナエ)
★i-ru-o-nay イルオナイ(北海道・色内・イロナイ)
★pe-pe-nay ペペナイ(北海道・弁辺・ベンベ)水水川
★i-o-nay イオナイ(北海道・米内・ヨナイ) 


 アイヌ語「ペッ」地名は、「ミチ」「ハタ」「マツ」「ミズ」などに転訛したと考えられる。アイヌ語「pet」(ペッ)は「peti」(ペチ)、「pechi」(ペチ)の第3人称形があり、「その川」の意である。

西中国山地「ペッ」地名
西中国山地地名 アイヌ語 アイヌ語 日本語
フルミチ hur-peti フル・ペチ 丘・川
ミチガ peti-ka ペチ・カ 川・岸
ウエミチ wen-peti ウェン・ペチ 悪い・川
シンミチ sin-peti シン・ペチ 山・川
スグミチ tuk-peti ツク・ペチ 小山・川
シラハタ sir-pet シリ・ペツ 山・川
フルハタ hur-pet フル・ペツ 丘・川
フルハタ hure-pet フレ・ペツ 赤い・川
ハタガ pet-ka ペツ・カ 川・岸
マツオ pet-po ペツ・ポ 小川(川・子)
ミズナシ pet-nay ペツ・ナイ 谷・川

 アイヌ語地名
★ur-pet ウルペッ(北海道・居辺・オリベ)丘川
★wen-pet ウェンベッ(北海道・雨煙別)
★sir-pet シリペッ(北海道・尻別)
★hure-pet フレペッ(北海道・布礼別)
★pet-po ペッポ(北海道・別保)


 pet の変化 peti(ペチ) miti(ミチ) mitu(ミツ)

 pet の変化 petu(ペツ) patu(パツ) pata(パタ)

 pet の変化 petu(ペツ) metu(メツ) matu(マツ)


 天の川は、万葉集原文では「天漢」「安麻能我波」などと表す。「天漢」は中国からの移入で、「天の川」はその翻訳とも言われるが、元々日本に「アマノカワ」の呼び名があったとも考えられる。それに「天漢」を当てた。「アマノカワ」が縄文期からの呼び名であれば次のように考えられる。

 天の川のアイヌ語は「pet-noka」(ペッ・ノカ)で、「川・形」の意である。「アマノカワ」の呼び名をアイヌ語で表してみると次のようになる。

 an-pet-noka-oma-i
 アン・メッ・ノカ・オマ・イ
 彼方の・川の・形・ある・もの(空)

 a-me(tu)-noka-ma の転訛。

 石狩地方のアイヌ伝説では、天の川は石狩川が天に写ったもので鮭が上る季節、天の川の河口に横たわる黒い影が見えると鮭が上がらないという(石狩市HP)。


 七夕は万葉集原文では、「織女」「棚機」と表し、「たなはた」と読む。これも当て字であり、「タナハタ」は古い呼び名と考えられる。「タナハタ」が縄文期からの呼び名であれば、アイヌ語では次のように表すことができる。

 tanne-pet タンネ・ペツ 長い・川

 tane-petu → tane-pata の転訛。

 タナバタは天の川のことである。

 石見弁「ハタ」は「川端」の意。
 茨城弁「ハダ」は「川岸」の意。

 アイヌ語「タンネ」「ペツ」は縄文語であると思われる。


●阿佐山(アサヤマ)
 at-sam
 アッ・サム
 オヒョウニレ・の傍

●ツチダキ谷
 atu-us-tak-pet
 アツ・ウシ・タク・ペッ
 オヒョウニレ・群生する・岩・沢

●カタラ谷
 atu-yar-pet
 アト・ヤラ・ペッ
 オヒョウニレの・樹皮・沢

●ドウゲン山(阿佐山古名)
 atu-ke-us-i
 アトゥ・ケ・ウシ・イ
 オヒョウの樹皮・剥ぎ・つけている・所

●青雲(アオクモ・ツチダキ別名)
 at-o-tokom
 アッ・オ・トコム
 オヒョウニレ・群生する・小山

 a-sa の転訛。
 tu-shi-tak の転訛。
 atu-yara → at-ara の転訛。
 to-ke-u の転訛。
 a-o-kom の転訛。

 阿佐山周辺はオヒョウニレが多い。猪子谷川水源、タテバシリ、カタラ谷、東西のツチダキ谷、ココノ峠周辺にオヒョウがある。西のツチダキのゴーロにオヒョウが群生し、カタラ谷のスギ林のゴーロにオヒョウがある。東西のツチダキ谷に滝や懸崖(タキ)は無い。

 アイヌ語地名・アイヌ語
★at-sam アッサム
★at-us-nay アツウシナイ(北海道・朝里・アサリ)
★yar-pet ヤラペツ(北海道・厚田・アツタ)
★hup-yar フプヤラ(トドマツの樹皮)
★at-o-wa アトワ(樺太・音羽)
★at-ke-us-i アツケシ(北海道・厚岸)
★ota-tokom オタツコム(砂の小山)


●深山(ミヤマ)
 piye-oma-i
 ピィエ・オマ・イ
 ヤマメ・居る・所

 pie-ma の転訛。

 大暮川水源の深山は、さらに奥の水源までヤマメの多い所である。

●大暮川(オオグレガワ・滝山川上流)
 o-kur-un-pet 
 オ・クル・ウン・ペッ 
 そこに・マス・入る・川

 onne-kur-un-pet 
 オンネ・クル・ウン・ペッ 
 親の・マス・入る・川

 o-kuru の転訛。

 アイヌ語地名
★o-kur-un-nay オクルンナイ

●才乙川(サヨウト・サヨト・サイオト・滝山川上流) 
  ichaniw-ot-pet 
 イチャニウ・オッ・ペッ 
 マス・多くいる・川

 chani-oto → sani-oto の転訛。

 アイヌ語地名
★ichaniw-ot-pet イチャニウオッペッ 鱒多くいる川
★ipe-ot-i イペオッイ(北海道・江部乙)鮭多くいる所
★pe-ot-pe ペオッペ(北海道・辺乙部)水多くある川

●大佐川(オオサ・滝山川上流) 
 ooho-ichan
 オオホ・イチャン
 深い・マス産卵場

 oo-cha の転訛。

 アイヌ語地名
★ooho-ichan オオホイチャン 深い産卵穴

 アマゴの降海型サツキマスの遡上が太田川で復活しているが、江戸期には才乙川下流の川小田にサツキマスが遡上していた。縄文期にもサツキマスが遡上していたと考えられる。
 
 「『芸藩通志』に『鱒(マス)、石鮒(イシフナ)、呉岐(ゴギ)、立貝(タチガヒ)並に川小田村等の大川にあり』と記されており、現在の山県郡芸北町川小田付近には、文政年間(1818〜1830年)初期の頃ゴギが生息していたことになる」(『戸河内町史』)。

 滝山川上流の各支流はサツキマスの産卵場であったと考えられる。


●ガンジョウジ谷 
 nokan-so-us-nay 
 ノカン・ショウ・ウシ・ナイ 
 小・滝・ある・沢

 kan-sho-shi の転訛。

 「深山の奥にあたる大暮川水源にガンジョウジ谷というのがある。この谷の入口付近に寺があったと伝えられているが、寺跡ははっきりしない」(「西中国山地」)。

 ガンジョウジ谷に小滝がある。滝は縄文時代から「ショウ」と呼んでいたと考えられる。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

カシミール3Dデータ

キバナアキギリ

総沿面距離13.1km
標高差464m

区間沿面距離
深山
↓ 5.0km
ツチダキ(鞍部)
↓ 3.7km
阿佐山
↓ 1.5km
二十丁峠
↓ 2.9km
深山
  

 
 
 
ココノ峠と大朝の里
黄葉のカツラ ツチダキ谷
阿佐山のオヒョウニレ
登路(薄茶は900m超 茶は1000m超)  「カシミール3D」+「国土地理院『ウォッちず』12500」より