6:15 寂地登山口バス停 晴れ 気温12度
ヒメアザミ |
 |
6:50 寂地林道
8:00 林道終点
9:10 ニシオク谷鞍部
11:00 休ミ岩上流分岐
13:00 アダミ谷入口
15:50 ガクガク山
16:20 1229P(額々山)
16:45 ガクガク尾根分岐
17:30 寂地林道
18:05 寂地林道分岐
18:30 寂地登山口バス停
寂地登山口バス停を出発。バス車庫の横の車道を進むと林道に入る。スギ林を抜けると、草ぼうぼうの林道がクシノ谷左岸を上がっているが、クシノ谷へ下りる小道が竹林の中にある。小道を下り、クシノ谷を渡り広い林道のようなスギ林の道へ出て西へ進むと、次の谷に石垣がある。
さらに次の谷にホースが延びる小道が下りていて、谷に小さいタンクがある。小谷を渡ると北西の寂地林道に向って掘り下げた道が真っ直ぐに延びている。その道に沿って登り、カーブミラーのある寂地林道に出た。林道から見ると地形図にある道が南の尾根に降りているのが分かった。寂地登山口バス停から寂地林道に上がる道は、荒れてはっきりしない。
林道の西側の尾根は竜ヶ滝から上がる尾根である。ススキの林道を進む。展望地の斜面にオオバヤシャブシが実を付ける。犬戻の滝へ下りる分岐にクマノミズキが実を付けていた。1時間ほどで林道終点。メウゼン川に架かる橋を渡ると「寂地(じゃくち)国有林」の看板がある。道にケヤキの葉がたくさん落ちている。
ジンジソウ |
 |
ジンジソウ |
 |
登山道はニシオク谷を上がり、途中からヒガシ谷を登っている。スギ林を登る。スギ林の中に「国有林のブナ結実調査箇所」の看板があった。「ブナ種子の豊凶を明らかにしてツキノワグマの出没との関係解析などに活用」すると言う。尾根の手前付近にシナノキがあった。寂地山からミノコシ峠の尾根の東側にシナノキが多い。
尾根の手前から登山道を外れ、ニシオク谷の鞍部に出た。鞍部から河津谷水源を下る。こちら側にシナノキは無いようだ。水源部を少し下ると岩を削った水路の谷となる。サワダツが赤い種子をぶら下げる。右岸のゴーロを下る。滝が連続するゴルジュに入る。右岸を下り、ツルが這う岩壁の下を通る。ヨケ岩から下りる谷の分岐に出た。サワグルミが実をぶら下げる。分岐の下流左岸に休ミ岩があるが、気が付かず通り過ぎてしまった。
谷を登ってくる人に会った。登山道に出て右谷山から谷を河津谷に下ると言う。そこから少し下ると滝があった。左岸に巻き道がある。銅鉱山があったと言うカネホリ谷落ち口を通り、アダミ谷落ち口に出た。アダミ谷入口は水が涸れ岩で埋まっている。少し登ると小水流の谷となる。さらに登ると崖の谷となっていた。
サワダツ |
 |
ルイヨウショウマ |
 |
谷の東側の薮尾根を登った。やがてスギ林に変わり、尾根に抜けるまで1時間半ほど掛かった。尾根道にクマの糞があった。踏み跡の続く尾根に層状の岩が点在している。これらの岩は冠山安山岩のようだ(「西中国山地」)。展望岩に出た。ガクガク山から寂地山、茅帽子山、小五郎山への展望がある。寂地山は雲で隠れている。
尾根を進むと層状の岩が点在している。ガクガク山の西にあると言うガクガク石はよく分からなかった。似たような岩がこの辺りに点在している。またクマの糞があり、ガクガク山に到着。ここは林で展望は無い。広高谷分岐のすぐ先が1279ピーク(額々山)で、そのすぐ東側に懸崖となっているヨケ岩があり、ノゾキ岩とも呼ぶ。
スギ林を東に進み、冠山登山道のガクガク尾根分岐に出た。寂地山を下り寂地林道に出たのが17時30分。寂地登山口に下る林道の分岐に着いた時には18時を回っていた。林道は明るかったが山道の林の中は真っ暗である。ヘッドランプを着け急坂を下った。
オオバヤシャブシ |
 |
クマノミズキ |
 |
キクバヤマボクチ |
 |
ガンクビソウ |
 |
アケビ |
 |
|
■地名考
日本の縄文語(日本列島共通語)を受け継いだのは、アイヌ語系民族であった。
アイヌ語によって西日本の古い地名が合理的に説明できることは、その一つの証でもある。
西中国山地にアイヌ語地名が存在することは、その地名は縄文時代から呼ばれていた可能性のある地名と思われ、またアイヌ語地名が存在することは、その地名の周辺に縄文遺跡が存在することを予見している。
●ヨケイワノエキ(東ヨケ岩に上がる谷)
yoke-iwa-nay-ekimne
イ・ヨ・ケ・イワ・ナイ・エキムネ
ヨケイワの・川の・山へ行く
yoke-iwa-na-eki の転訛。
●ヨケ岩(東ヨケ岩)
i-yo-ke-iwa
イ・ヨ・ケ・イワ
それ・居る・所の・岩
yo-ke-iwa の転訛。
●ノゾキ岩(東ヨケ岩別名)
no-sotki-iwa
ノ・ソッキ・イワ
尊い・寝床の・岩
no-sotki-iwa → no-soki-iwa の転訛。
「それ」とはクマのことであろう。ヨケ岩の岩穴にクマの棲む寝床があったと思われる。「ヨケ岩」「ノゾキ岩」は同じ内容の別の表現である。
●ガクガク岩(ガクガクイワ)
kakkok-un-iwa
カクコク・ウン・イワ
カッコウ・いる・山
●ガクガク石(ガクガクイシ)
kakkok-us-i
カクコク・ウシ・イ
カッコウ・多い・所(山)
kakkok-un-iwa → kakukok-u-iwa の転訛。
kakkok-us-i → kakukak-usi の転訛。
ガクガク山の西に似たような岩が散在している。その中にヨケ岩のような特徴のある岩は無いようだ。近辺の山には、鬼ヶ城山のオニガジョウ、平岩、三つ岩、羅漢山のオオカミジョウ、鬼石山の鬼石、小室井山の鬼爪石、青笹山のニワトリ石などひと目でそれと分かる岩がある。ガクガク山のような奥山では、特徴のある岩でないと見分けるのは難しいと思われる。
「ガクガク岩の名は周辺の村里ではよく知られているが、実際に見に行ったという人は少ない。『匹見町史』や渡辺友千代著『三葛小誌』にも紹介されているがこれらの著者も見ていないようである…
『防長風土注進案』(1847年)に『石の動貌をがくがくという故この名有り』
『吉賀記』(1804年)に『何れの国よりも境かと問へはうなづく故、がくがく岩といふ』
…三葛、河津、常国の古老の話では、この岩はかなり前から動かなくなっているという…
筆者らが訪れたときも『防長風土注進案』に記してある岩は確かに動かなかったが、そのすぐ横に一メートル平方の岩があり…ゴトゴトと音をたてて動く岩があった」(「西中国山地」桑原良敏)。
古い文献に「石の動く様子が、がくがく」であったり、「石がうなづく故に、がくがく」であったり、また「動かなくなっている岩」であったりしている。「ガクガク」と言う呼び名にいろいろと尾ひれが付いたものではないだろうか。
国語辞典に「がくがく」「ごとごと」の用例をみると、
「がくがく」 固く締まっていた物がゆるんで動くさま 「いすの脚ががくがくする」「膝ががくがくする」「入れ歯ががくがくになる」「兎飛びで膝ががくがくになる」などがある。
「ごとごと」 堅く重い物が触れ合う音を表す語。物が煮える音を表す語。「天井でごとごと音がする」「ごとごと里芋を煮る」
カシミール検索では「がくがく」の地名は他に無いが、福井県に「ゴトゴト谷」がある。石の「ゴトゴト」する音からその名があるようだ。
桑原氏は「ゴトゴトと音をたてて動く岩」と表現された。「がくがく」は岩が動く様ではないように思われ、何か別の意があるのではないかと思われる。
三段峡右岸、餅ノ木の南に「郭公岩」(カクコウイワ)がある。最近の三段峡案内に「郭公岩」の説明はないが、熊南峰がしたためたと思われる『名勝天然記念物三段峡の概説』(大正13年)に次のように記されている。
「郭公岩(カクコウイワ)、丸渕ヲ過ギテ約六町路ハ左岸ニ移ル、上ルコト僅ニ二町ニシテ対岸ニ郭公岩ノ険崖ヲ望ム、高サ約三百尺露出側面約百五十尺雑樹半バ之ヲ掩フ、岩容耶源ニ酷似シ石理鮮カナリ」
また「峡中に生息セル動物」に「目白」「鶯」「時鳥」(ほととぎす)などがある。カッコウの托卵相手にメジロ、ウグイスなどがある。
「夏鳥として全国の平地や丘陵、高原の明るい林、耕作地や海岸に近い林や低木の散在する高原などに渡来する。県内では平野部では渡りの途中以外はほとんど生息せず、寂地山や羅漢山、長野山、徳地町長者ケ原など県境の山地や秋吉台などでよく記録されている(カッコウ「レッドデータブックやまぐち」HP)。
ガクガク山、寂地山周辺はブナ・ミズナラ群落(第6回・第7回自然環境保全基礎調査 植生調査)の山である。「山口県産の蝶の83%が寂地山周辺で採集される」(「西中国山地」)と言う。
周辺はチョウやガが集まり、毛虫や青虫を食べるカッコウが渡来していると思われる。ガクガクイワの「イワ」は「岩」のことでなく、「山」のことである。アイヌ語の「iwa」は、「岩」の意もあるが、「山」の意で使われる場合が多い。
寂地山南の羅漢山の古名は「車前子ヶ峠山」(オハコカタオヤマ)と呼ぶ。これはカッコウのいる山の意と思われる。
●車前子ヶ峠山」(オハコカタオヤマ・羅漢山古名)
o-pakko-kamuy-un-taor
オ・パッコ・カムイ・ウン・タオル
そこに・カッコウ・いる・高所
●イワシノイギ川(河津谷古名)
iwa-chi-nuye-ki-pet
イワ・チ・ヌイェ・キ・ペッ
山を・我ら・彫刻して・いる・川
(自然が削った川)
iwa-chi-nuye-ki → iwa-si-nui-ki の転訛。
アイヌ語地名に「chi-nuye-pira」(チヌイェピラ)がある。「我ら・彫刻する・崖」の意である。吉和の日の平山南面の谷は岩が削られた谷で、「ヒノヒラ」は「チヌイェピラ」と思われる。
河津谷は急流谷で岩を浸食して出来た谷である。
●藩界尾根(ハンカイオネ)
pon-kamuy-o-nay
ポン・カムイ・オ・ナイ
小さい方の・熊・居る・川
●三つ岩(ミツイワ・藩界尾根上にある)
pit-us-iwa
ピッ・ウシ・イワ
岩・多い・山(クマの巣がある所と思われる)
●ジャレ
chasi-rer
チャシ・レル
立岩・の向い(の沢)
「ガクガク山の南尾根は、藩政時代の藩界になっていたため、藩界尾根と呼んでいる。『防長風土注進案』によるとこの尾根に三つ岩という岩塊があるようだが所在不明である」(「西中国山地」)。
地形図を見ると藩界尾根とジャレの谷の間にかなり大きな岩記号がある。「ジャレ」の谷はアイヌ語では「立岩の向い」の意だが、この岩記号は立岩のある所と思われる。三つ岩とはこの立岩のことでないか。ガクガク尾根にクマの糞が二ヶ所あった。この尾根は今もクマの棲むところのようだ。
カシミールデータ
ウバユリ |
 |
総沿面距離16.5km
標高差761m
区間沿面距離
寂地登山口
↓ 5.2km
ニシオク谷鞍部
↓ 4.0km
ガクガク山
↓ 1.6km
ガクガク分岐
↓ 5.7km
寂地登山口
|