山歩き

判蔵原…イシキド峠…鬼ヶ城山…鍋倉峠
2009/8/2

バンゾウハラ…イシキド峠…ラジコン飛行場…稗原峠…鬼ヶ城山…オニガジョウ…三つ岩…平岩…飯山…鍋倉峠…判蔵原

■鬼ヶ城山(オニガジョウヤマ)1030.9m:山口県玖珂郡錦町大字宇佐字鬼ヶ城(点の記) (岩国市)

霧の濃い判蔵原
イシキド峠へ上がる林道入口
レンゲツツジの碑
イシキド峠
ラジコン飛行場
尾根道を進む
道標のある稗原峠
床越南の層状の岩
鬼ヶ城山
上から見たオニガジョウ
三つ岩の表面
三つ岩の表面
平岩の表面 ウロコ状になっている
飯山から見える鬼ヶ城山
飯山の水田
鍋倉峠へ上がる道の伐採地
鍋倉峠
オスグロトモエ(ヤガ科) 食草アカシア
6:10 判蔵原出発 晴れ 気温24度
 
ヤブカンゾウ

6:50 イシキド峠
7:10 ラジコン飛行場
8:15 稗原峠
9:00 床越
9:25 鬼ヶ城山
9:40 鬼ヶ城
10:10 平岩 
10:55 飯山  
11:30 鍋倉峠
11:45 判蔵原
 
 
 霧の中の判蔵原を出発。車道沿いにカシワの木がある。リョウブが花をたくさん付ける。スキー場跡の林道を西へ上がる。林に入るとまだ暗い。林道沿いの石を叩いてみると金属性の高い音がするものがある。板状に重なる石を叩くと薄く剥がれ、切り口がナイフのように鋭い。石器に使用された冠山安山岩である。

 レンゲツツジの石碑を過ぎるとイシキド峠。アズキナシが実を付けている。この辺りは牧草地だが、草薮となっている。引き返して林道を進む。林道終点は広い空地になっている。「冠RCクラブ専用飛行場」の看板があった。ラジコン飛行場である。

ユウスゲ

 飛行場から林道沿いの有刺鉄線を越えて樹林を進んだ。大きいアカマツが目立つ鬱蒼とした広葉樹の林である。バンゾウ原から上がる小谷を渡り尾根に出ると、尾根沿いに赤いテープが続く山道がある。875ピーク付近のスギ林を通って行くと、道がはっきりとしてくる。

 ササの道を下り、874三角点の東を通って稗原峠に出た。峠には新しく道標が立ててあった。「松の木峠、万草ヶ原、牧草地」「飯山、河内神社」とある。この辺りに岩の露出している所はなく、石も転がっていない。冠山火山から流出した安山岩は鬼ヶ城山の南側まで達している。

アラゲハンゴンソウ

 稗原峠から西へ進むとすぐに分岐。西へ下りる道は林道「ようたあ」線から登る登山道である。尾根道を南へ登る。涼しく感じて温度計を見ると20度に下がっていた。シロモジの多い山道に岩の露出はなく、床越の大分手前の倒木の跡に、掘り返されて出てきた石があった。

 床越から少し登ると大岩がある。ここの岩は板状に重なる岩であった。そこからほどなく山頂。山の由来となっているオニガジョウへ下った。裂けた大岩の上側に出てから大岩の下側に回りこんだ。この大岩も層状の岩であった。下から大岩を見ると岩の裂け目は西側にもう一つあることが分かった。西側の裂け目は貫通しておらず、穴になっている。

アテツマンサクの実

 オニガジョウから小尾根を下り登山道に出た。三つ石に下ると、大岩に沢山の小岩がくっついたような岩がある。そこからすぐに平岩、表面がウロコ状の平たい岩がある。そこから林道を進み飯山に出た。オオバギボウシ、ヤブカンゾウが咲いていた。

 飯山に広がる田の稲はまだ穂を付けていない。鬼ヶ城山が見える。アテツマンサクが実を付ける。飯山橋を渡り186号線を進む。鍋倉峠に上がる車道に入る。鍋倉峠の標識はまだ吉和村となっている。上空をラジコンが飛び回る。そこからほどなく出発点に帰着。

層状の安山岩と叩いて薄く剥がれた破片


地名考

 日本の縄文語(日本列島共通語)を受け継いだのは、アイヌ語系民族であった。

 アイヌ語によって西日本の古い地名が合理的に説明できることは、その一つの証でもある。

 西中国山地にアイヌ語地名が存在することは、その地名は縄文時代から呼ばれていた可能性のある地名と思われ、またアイヌ語地名が存在することは、その地名の周辺に縄文遺跡が存在することを予見している。


●判蔵原(バンゾウハラ)

 「バンゾウ原一帯より旧石器時代の遺跡が発見され、冠山火山の噴出した安山岩で石鏃を作る大規模な作業場があったことが判明した。原野にすぎないこの場所が、何故に『芸備国郡志』[1664年]に取り上げてあるのか不思議に思っていたが、旧石器時代より有名な場所であったとは想像の域を超えていた」(『西中国山地』桑原良敏)。

 「冠山産安山岩は山口県に県境を接する冠山(広島県廿日市市吉和)を火山活動によって流出した安山岩の総称である。肉眼的にはいくつかの種類に細分することが可能であり、石材の原産地分析によると、冠高原の南側一帯(飯山)、冠高原、冠高原の東側の頓原付近(冠山東)のおおきく3ヶ所に分かれるようである」(「広島大学埋蔵文化財調査室」HP)。

 『西中国山地』によると、判蔵原の呼び名は以下のようになっている。

★波牟佐宇原 『芸備国郡志』(1664年)
★バンゾウ原 『佐伯郡廿ヶ村郷邑記』(1806年)
★萬象ヶ原 『防長風土注進案』(1845年)
★ハンソウカ原 『吉和村絵図』(江戸末期)
☆バンドウ原 常国・宇佐の呼び名
☆バンゾウ原 汐原・中津谷・飯山の呼び名

○判蔵ケ原(バンゾウガハラ) 
 hani-us-so-ka-hur 
 ハニ・ウシ・ソウ・カ・フル 
 ハンノキ・群生する・高台の・丘

○波牟佐宇原(ハムサウハラ) 
 hani-us-so-hur 
 ハニ・ウシ・ソウ・フル 
 ハンノキ・群生する・一面の・丘

 アイヌ語・アイヌ語地名に以下がある。

 『樺太アイヌ語地名小辞典』 hani-us-kot-nay 
 『知里真志保著作集』別巻T hani 
 『アイヌ語地名V北見』 so-ka 地面・上(高台)

 ハンノキ方言
 バンゾー(兵庫・岡山・広島)
 ハンベ(青森・秋田)
 ハヌキ(岩手・宮城・栃木)

○判蔵ケ原(バンゾウガハラ) 
 pancho-mukar-us-i 
 パンチョウ・ムカラ・ウシ・イ 
 手斧・群在する・所(安山岩・石鏃作業場)

 pancho-uka-ara の転訛。

○波牟佐宇原(ハムサウハラ)
 pancho-us-hur
 パンチョウ・ウシ・フル 
 斧・群在する・丘(安山岩・石鏃作業場)

 pansho-huru の転訛。 

 アイヌ語・アイヌ語地名に以下がある。

 『アイヌ語辞典』(萱野茂) pancho-mukar 手斧 
 『アイヌ語方言辞典』 panco mukar,hanpir,hanpiro 斧
 『沙流方言アイヌ語辞典』 
  pancomukar パンチョムカラ 手まさかり


「牟」は「佐」の濁点である場合、以下の意が考えられる。

 『縄文語の発掘』(鈴木健・新読書社)に以下の指摘がある。 
 於無佐加倍(オザカベ)  「無」は「佐」の濁点
 牟波良岐(バラキ) 「牟」は「波」の濁点
 和可祢牟波(我が寝ば) 「牟」は「波」の濁点

○波牟佐宇原(ハザウハラ) 
 iwa-so-us-hur 
 イワ・ソウ・ウシ・フル 
 岩・床・群在する・丘(冠山安山岩)

 wa-so-u-huru の転訛。

 アイヌ語・アイヌ語地名に以下がある。

 『アイヌ語地名T網走川』 ni-so-us-nay 木・床 

●イシキド峠
 si-kite-o-p 
 シ・キテ・オ・プ 
 大きい・鏃(やじり)・ついている・もの(安山岩)

 si-kit-o の転訛。

 『沙流方言アイヌ語辞典』に以下がある。

 sikite si-kite 大きい・銛先(牙) 
 kite キテ 銛先・鏃(やじり)

 『知里真志保著作集』別巻Tに以下がある。

 kite-o-p 銛先・のついている・もの 
 marek-o-p 鮭銛・のついている・もの 
 ay-o-p 矢・のついている・もの

 kite-op は「銛の柄」、marek-op は「鮭銛の柄」、ay-op は「矢柄」をそれぞれ表している。

 「si-kite-o-p 大きい鏃ついているもの」とは「冠山安山岩」そのものをあらわしていると思われる。

 1994年度の冠遺跡群調査でイシキド峠周辺のグリッド調査(格子状試掘溝)が行われた。下の写真のような安山岩が出土している。

イシキド峠北の34グリッド 1m×6m
(『冠遺跡群W』1994年度の調査
広島県教育委員会 1995年)

●松の木峠(マツノキ)
 matne-kite-o-p 
 マツネ・キテ・オ・プ 
 女の・鏃・ついている・もの(冠山安山岩)

 『アイヌ語方言辞典』 
  matne-op 女の槍の柄 pinne-op 男の槍の柄

 matune-kit-o の転訛。

●傍示峠(ボウジダオ)
 pa-us-taor
 パ・ウシ・タオル
 煙・多い・高所
 (3万年前から石器製作場で安山岩を焼いて割っていた)

 アイヌ語に以下がある。

 『知里真志保著作集』別巻T
  pa-kor-kamuy 煙を・もつ・神

 『地名アイヌ語小辞典』 taor 川岸の高所
  反対語 ra-or 低い所 沢の中 

 西中国山地地名方言 峠 タオ・タワ・トオ・トウ

●稗原峠(ヒエハラ) 
 pihe-hur-us-taor 
 ピヘ・フル・ウシ・タオル 
 石・丘・付いている・高い所(冠山安山岩)

 アイヌ語・アイヌ語地名に以下がある。

 『地名アイヌ語小辞典』 piye pihe 石・小石 
 『北海道蝦夷語地名解』
  ota-huru 沙・丘 yu-huru 湯・丘

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カシミールデータ

ネジバナ

総沿面距離10.6km
標高差316m

区間沿面距離
判蔵原
↓ 3.3km
稗原峠
↓ 2.0km
鬼ヶ城山
↓ 2.6km
飯山
↓ 2.7km
判蔵原
 

 

イシキド峠北の34グリッドの位置 『冠遺跡群W』1994年度の調査 広島県教育委員会(1995年)から
●数字はグリッド調査地点(格子状試掘溝)
 
下から見たオニガジョウ
オニガジョウの西側の岩
登路(薄茶は900m超 茶は1000m超)  「カシミール3D」+「国土地理院『ウォッちず』12500」より
赤太線は冠山安山岩・玄武岩の流出範囲