山歩き

若生…トツサゲ谷…大佐山…カラタニオク 2007/9/30
若生(ワカオ)…周布川…栃下橋…シミズ谷分岐…トツサゲ谷…大佐山…モミエキ鞍部…カラタニオク…若生

■大佐山(オオサヤマ)1069m:山県郡芸北町大字荒神原字棒路(点の記)(点名:大佐山:二等三角点) (北広島町)

若生 左が周布川
ツルヨシが続く周布川
栃下橋
トツサゲ谷の稲穂
奥がトツサゲ谷とシミズ谷の分岐
シミズ谷手前の土石止め
滝上から見た土石止め
右岸の壊れたハシゴ
左岸へ渡る壊れた橋
オニグルミ、カツラの谷
カツラ
トツサゲ谷上部の滝
緩やかに上がる水源の谷
ワサビ田跡 850m付近
空山          弥畝山
幹囲3.6mブナ
幹周3.8mブナ
3.8mブナ
カラタニオク 上の滝
カラタニオク 下部の滝
スギ林を下る
周布川のツルヨシの川原に出た
6:30 若生出発 曇りのち晴れ 気温17度
 
キアゲハ

7:00 栃下橋(トツサゲ)
7:25 シミズ谷分岐
10:00 トツサゲ谷の滝
12:10 大佐山
12:25 大佐山
14:10 モミエキ鞍部
14:40 カラタニオク上部
16:30 ワカオ


 若生(ワカオ)に着いた頃には、雨は止んだ。若生には一軒、家があるだけだった。上流の波佐にも、同じ呼び名の若生の地名がある。この辺りの周布川はツルヨシの群落を形成している。ツルヨシとよく似たヨシはアイヌ語で「スフキ」(樺太の真岡・白浦)と呼ぶ。周布川のツルヨシは遠い昔と変わらぬ風景であろうか。

 若生辺りに落ちるカラタニオクの谷の入口は、スギ林に覆われている。周辺はツリフネソウが多い。カサメギの谷の入口もスギ林である。湿地にはガマの花が咲いている。

 30分ほどで周布川に架かる栃下橋、トツサゲバシと呼ぶのであろう。橋のたもとに周布川漁協の昭和53年の掲示板があった。この辺りの魚種は「アユ、ヤマメ、ニジマス、ゴキ、アマゴ、ウグイ、コイ、ハヤ」とあった。「ゴギ」はここでは「ゴキ」と呼んでいるようだ。

ヤマハッカ
サンヨウブシ
トツサゲ谷上部の白いトリカブト

 栃下橋周辺に数軒の民家がある。民家に「紳士服ヤマモト」の看板があった。稲穂が垂れるトツサゲ谷を上がった。ヨウシュヤマゴボウの花が咲き始めている。栃下橋の上流にあるのが亀屋前橋で、川の名は栃下川とあった。近くのおばさんが出てきて、上の橋が落ちているから通れない、クマが出るから鈴を付けなさいと言われた。

 最奥の民家を過ぎて畑を通り、谷を上がると、土石止めの鉄柱が三本立っており、その先がトツサゲ谷とシミズ谷の分岐となる。両谷とも入口は滝となっている。鈴を付け、トツサゲ谷の左岸を巻いて、滝の上に出た。
 
 「島根県側からは山頂に至る径はない。登るとすれば、トツサゲ谷をつめるのがよい。中流のシミズ谷落口付近まで小径があり、ゴギ釣りの釣人がよく入る谷である。水源部はササが少なくて歩きやすい。…大佐山山頂北面のブナ林の植生が、佐々木好之氏によって調べられている」(「西中国山地」桑原良敏)。

 環境省の「第6回・第7回自然環境保全基礎調査 植生調査」では、トツサゲ谷下部が「コナラ群落」、それより上の山頂まで「ブナ−ミズナラ群落」、周布川沿いは「ツルヨシ群集」となっている。

ジンジソウ
サラシナショウマ

 トツサゲ谷を少し登ると、右岸に壊れたハシゴが二つある。その先に左岸に渡る橋があるが、壊れている。おばさんが言っていたのは、この橋のことだろう。谷へ降りて左岸へ渡った。オニグルミ、カツラの谷であった。谷の明るいところにトリカブトがあった。

 左岸、右岸の所々に踏み跡や石垣が残っている。トリカブトが点々とある谷である。左岸から下りる小滝を過ぎると、谷は左へカーブする。その先に高い滝があった。スパイク足袋を履いていれば簡単に登れる所だが、登山靴なので右岸を巻いた。上に踏み跡があった。踏み跡を登り滝上の岩場を越えると、左岸に踏み跡が続いていた。

 滝から上は尾根に沿う平坦な谷であった。野生化したワサビが谷に点々と続き、その先に形を失ったワサビ田が残っていた。左岸から降りる小谷を利用してワサビ田が作られていた。それにしても、この山深い水源の谷に上がって、よくワサビ田をつくったものである。

オニグルミ
ワサビの葉の食痕
クロタキカズラ

 850m付近のワサビ田跡の先はオニグルミが多いようだ。ワサビの葉の食痕がある。谷の明るいところには、決まってトリカブトがある。クロタキカズラが赤い実を付けていた。ワサビ田跡に黒いホースが残っていた。最後にトリカブトを見たのは950m付近であった。ここの谷のトリカブトはタンナトリカブト、ヤマトリカブトと比べて葉の切れ込みが浅いように思われる。

 水源の低いササを分けて登山道に出た。サワフタギは青い実、ミヤマガマズミは赤い実、イヌツゲは黒い実を付けている。振り返ると、苅尾山、八幡原、嶽、空山、弥畝山の展望が広がっていた。足元のアキノキリンソウを進むとほどなく山頂、トツサゲ谷の入口から5時間ほどだった。

 山頂の気温は20度で涼しい。やっと秋の天候になったようだ。掛津山と苅尾山の間に深入山が頭を出していた。柏原山の右手の阿佐山塊は雲が掛かっていた。

サワフタギ
ミヤマガマズミ
イヌツゲ

 イヌツゲを踏み分けて北西の尾根を進んだ。少し下った所に幹周3.6mの大きいブナがあった。下るにつれてササは低くなり、歩きやすくなる。尾根上に踏み跡が残っている。オトコヨウゾメが赤い実を付けている。

 モミエキの鞍部付近の尾根上に、すらっと立つ大きなブナがあった。胸周囲3.8mあった。踏み跡の残る尾根を進み、カラタニオクの谷へ入った。少し下って、小石の谷に変わると、水流がなくなり伏流水となる。この谷も点々と葉の切れ込みの浅いトリカブトがある。水音のない静かな谷であった。

 大分下った所で、水音が聞こえてきた。そこは水流の少ない岩崖の滝であった。左岸のヤセ尾根を下りて滝下に出た。シラネセンキュウの咲く下から見ると高さ20mほどの岩壁であった。さらに下へ滝が続いていた。左岸のヤセ尾根を下りたが、厳しい所であった。たまたま太いカズラがぶら下っており、それにつかまって一つ西側の谷へ降りた。下段の滝は30mほどあった。

 探していたハルニレはなかったが、同じニレ科のケヤキの大木があった。下るとスギ林に入る。周布川右岸のツルヨシをかき分けて川に出た。車道に上がれる所まで川を下り出発点に帰着した。

アキノキリンソウ
ヤマラッキョ
オトコヨウゾメ
ギンバイソウ
シラネセンキュウ

地名考

●ツエのアイヌ語

○トツサゲ谷
 tu-tuy-sanke-nay
 ト・ツィ・サンケ・ナイ
 山が・崩れて・浜の方へ出す・川

 「西中国山地」の地形方言に「ツエ」「クエ」があり、「山崩れ」「崩れることをツエル」と言っている。以下のように、アイヌ語にも同じ呼び名で同じ意がある。

 tuy ツィ くずれる・きれる・ふる
 tuye ツィエ きる・崩す

 トツサゲ谷のシミズ谷付近より上は、狭い急な谷となっている。緩やかな上から落ちてきた水は谷の下部で勢いを増す。土砂がよく流れ出る谷と思われる。そのため、土石止めの鉄柱が設置されたのであろう。

 大佐山東の柏原山(大潰山・オオヅエヤマ)に、西からオオゼイ谷が上がっているがアイヌ語で以下の意がある。

○オオゼイ谷
 オオゼイ谷
 o-tuye-us-nay
 オ・ツィエ・ウシ・ナイ
 川尻を・崩す・いつもする・川

 「オオゼイ谷はかなり急な谷なので大崩壊したことがあるという。崩壊することをガレルとかツエルとか表現することはよく知られている。大崩壊した谷の頭にある山の意であることは推測できる」(「西中国山地」)。
 

●火を作る木

○カラタニオク
 kara-ta-ni-o-kut-un-nay
 カラ・タ・ニ・オ・クッ・ウン・ナイ
 火打を・打つ・木が・そこにある・崖・ある・沢

 「ハルニレはその根を乾してほくち(火口)にもした」(『知里真志保著作集』)。カラタニオクの北東にフジヤオク、テツヤオクの谷があるが、ここには岩崖の滝があると思われる。「カラタニ」は「西中国山地」に十数ヶ所あるが、ハルニレのことではないだろうか。

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カシミールデータ
総沿面距離8.4km
標高差626m

ヒカゲチョウ

区間沿面距離
若生
↓ 1.2km
栃下橋
↓ 4.0km
大佐山
↓ 2.0km
カラタニオク水源
↓ 1.2km
ワカオ
 

 
           掛津山                             深入山             苅尾山
登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)