山歩き

小川林道…ホン谷…冠山…ウオキリ谷 2007/7/8
出合橋…小川林道…林道終点…ホン谷…冠山…赤土峠…ユウレイ谷…ウオキリ谷…作業道…魚切林道…2号橋…出合橋

■冠山(カムリヤマ)1339m:広島県佐伯郡吉和村字吉和西(点の記) (廿日市市)

小川林道から
ミヤマハハソ
コブドチ谷
シラグチ谷
背丈のウバユリ・オオウバユリ
冠山(カムリ)
株立ちのススキ
後冠(ウシロカムリ)

小川林道終点

ホン谷
ホン谷の分岐
緩やかなホン谷水源
水源碑
エゾハルゼミ?
広高山と大神ヶ岳
冠山直下の岩崖
ブナの尾根を下る
クマの糞
クルソン岩 赤土峠から
ウオキリ谷
ウオキリ谷作業道
カワトンボ
7:00 出合橋出発 晴れ 気温15度
 
コアジサイ 

8:10 奥出合橋
9:40 林道終点
10:35 登山道
11:00 冠山
13:00 赤土峠
14:05 魚切林道
14:50 出合橋


 気温15度で涼しい別天地の出合橋を出発。山々は薄く煙っている。オカトラノオが咲き始めている。ヤマウグイスカグラの赤い実がまだ残っていた。マタタビの花が咲いているが、雄花ばかりである。林道終点までにマタタビの雌花を付けたものは一本だけであった。マタタビの雌花は両性花といわれているが、雄花は落ちたのか、全く退化したように見える。ミヤマハハソの小さな花が、ツボミのように開いている。
 
 林道を上がるに連れて、道沿いにキツリフネが現れてくる。ムラサキシキブはツボミ、ヤマアジサイはほとんどブルー、クロタキカズラの実、ハナイカダ、トチバニンジン、ニシノヤマタイミンガサに似たオオモミジガサが花を付けていた。

ウグイスカグラ
マタタビの雄花
マタタビ雌花 両性花?
オオモミジガサ

 シナノキ谷を過ぎると、小川林道沿いはシラグチ谷と呼んでいる。シラグチはサルナシの方言だが、サルナシよりマタタビの方が多いように思われる。広高山から下りるコブドチ谷はそのまま読めば「瘤のトチノキ」の意だが。

 林道沿いに背丈ほどのウバユリがある。まだ高くなりそうである。オオウバユリであろうか。花の終わったコアジサイは、別の花のように見える。花後のハンショウズルに、白い髭の玉がぶら下っている。キブシは大きな玉になっている。毛部田橋を流れる川名は「小川」とある。林道沿いにキツリフネがあるのは、ケブタの谷までで、そこから上にはキツリフネが見られない。

 林道沿いに所々、ススキが株立ちしている。ケブタの谷をUターンして少し進むと冠山が見えてくる。冠山と後冠がホン谷を挟んで見える位置に来ると、双耳峰に見える。ここから見る後冠は、冠山に劣らない山に見える。出合橋から2時間半ほどで林道終点、追い越していった車が終点に止まっていた。

ハナイカダ
キツリフネ
ムラサキシキブ

 登山道に入り、木の階段を登ると、ホン谷とボーギノキビレの分岐。谷道は涼しい、冷たい水で顔を洗った。ホン谷を登る道は右岸、左岸を渡りながらの道となる。踏み跡があるので迷うことはない。谷沿いに赤い石が多い。ニシノヤマタイミンガサが花穂を出している。ほどなく谷の分岐を過ぎると緩やかな登りとなる。木の標柱があった。水源碑であろうか。標柱から先は登山道を枝が覆う。ぬかるみの湿地帯を過ぎて、松の木峠から上がってくる登山道の分岐に出た。分岐付近は大沼ヶ原と呼ぶが、ホン谷水源の沼のような湿地のことであろうか。

 登山道を上がる。羽化したばかりのセミ(エゾハルゼミ?)が道に留まっていた。ほどなく冠山山頂。展望地から見る風景は霞んでいる。広高山、女鹿平山、坊主山。大神ヶ岳から東へ続く尾根は遠く霞んでいる。

 少し休憩して、冠山の北の尾根を降りた。山頂直下は急な岩崖になっている。回り込んで東側の尾根に出た。冠山は大きな岩崖の上に乗っている。幹に棘のある大きなタラノキがあった。尾根筋は大きなブナが多い。赤土峠へ続く尾根へ移ると、クロモジ、ウリハダカエデが目立ち、ハスノハイチゴが多い。クマの新しい糞があった。林間からクルソン岩が覗くと赤土峠である。冠山から2時間ほどだった。

 ユウレイ谷、ウオキリ谷を下った。ミヤマタニソバが小さい白い花を付けている。しばらく下ると作業道に出た。作業道はそこから少し上まであるが、今の所、ウオキリ谷の右谷を上がるようだ。作業道を降り、魚切林道終点の手前に出た。ヤマアジサイの咲くウオキリ谷入口でしばらく休憩した。スギ林の魚切林道を下った。コアカソが花を付けている。小谷にキツリフネがあった。冠山から4時間ほどで出合橋に帰着した。

ツクシガシワ
ハンショウヅル
トリアシショウマ?
ミヤマイボタ
ギンリョウソウ
ハスノハイチゴ

地名考

●冠山・後冠と旧羅漢山・恐羅漢山
 (カムリ・ウシロカムリとキュウラカン・オソラカン)
 
 小川の水源のホン谷の東西に、冠山・後冠があり、亀井谷の水源の東西に、恐羅漢山・旧羅漢山がある。小川と亀井谷は、谷の置かれている状況がよく似ている。

 小川の川尻、中津谷川の合流点は岩である。亀井谷の川口、匹見川の合流点も岩である。小川の川口から3号橋の700mの間にミツバウツギが群生している。亀井谷の入口から車の鎖止めのある1000mの間はミツバウツギが多い所である。

 それぞれの水源には、冠山・後冠と恐羅漢山・旧羅漢山の、同じ地名を源としていると思われる山名がある。「西中国山地」の山名は、同じ名の「谷名」を持っている場合が多い。山麓地名が山名に先行する原則が貫かれている。冠山も恐羅漢山も、山名の由来となる谷名があったと思われる。

 小川林道の終点手前から冠山、後冠を見ると、同じように大きく見える山である。

 



●ボーギノキビレと大沼ヶ原とキンカネリ

 ホン谷水源は沼のようなところであり、大沼ヶ原の語源とも考えられる。

 小川の水源をブドウゴヤへ上がるとボーギノキビレ、ホン谷を上がると大沼ヶ原、東へ上がるとキンカネリである。

 「ホーシ、ボーシ、ボーギ、ボージは国境や村境の呼称であり、キビレ、クビレが鞍部、峠を意味する…一般に国境の標示には木柱が使われていた。村人はこれを榜示木とか榜木と呼んでいた」(「西中国山地」桑原良敏)。

 


●ケブタの谷

 

 小川林道に点々とキツリフネがあるが、ケブタの谷から上の林道にはないようだ。昔はケブタの谷付近にキツリフネが多かったのであろうか。

 『この草の熟した果実は、それに一寸でも触れると、とたんに果実がくるりと揺れて種子を弾き飛ばす。
 opke-mun オプケ・ムン 放屁する・草』

 『この植物は、その凾フ熟したものに触れると、忽ち果皮が弾けて種子を飛ばす。赤子が生後1年以上も経つのに尚歩かぬ時は、この植物の莖葉で体をさすり、また着衣の間にもそれを入れる。この果皮のはじける様に元気になれ、という呪法であろう。膝の関節がふくらみ筋が伸びぬ病気に、この葉をもんでつける。生葉の無い季節には、予め乾し蓄えてあったものを出して来て布に包み、或いは袋に入れて患部に巻いておく』(『知里真志保著作集』・平凡社)。

 


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

カシミールデータ
総沿面距離12.0km
標高差616m

ヤマアジサイ

区間沿面距離
出合橋
↓ 5.3km
林道終点
↓ 1.8km
冠山
↓ 1.5km
赤土峠
↓ 3.4km
出合橋
 

小川林道
コブドチ谷
小川・シラグチ谷
シラグチ谷
ウシロカムリ
冠山
小川林道終点
ホン谷
ホン谷水源
水源碑
登山道
冠山
広高山
恐羅漢山
坊主山
冠山北側直下の岩崖
3.7mブナ
クルソン岩 赤土峠から
赤土峠
ウオキリ谷水源
小屋跡
ウオキリ谷
工事中の林道
工事中の林道
ウオキリ谷
ウオキリ谷
魚切林道
 
登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)