山歩き

小川林道…キンカネリ…ユウレイ谷…馬立 2007/6/17
出合橋…小川林道…シラグチ谷…キンカネリ…ユウレイ谷…ウオキリ谷…馬立…アシガ谷落口…小川林道…出合橋

■馬立(ウマダテ)1065m:広島県佐伯郡吉和村吉和西 (廿日市市)

出合橋
ミツバウツギ
コアジサイ
ヤマウグイスカグラ
シナノキ谷へ上がる林道
ハンショウヅル
冠山
シラグチ谷のキンカネリへの分岐付近

キンカネリへ上がる谷

キンカネリ付近の鞍部
ワサビのあるユウレイ谷の水源
小屋跡
サルナシのツボミ
伐採地
馬立四等三角点
ミズナラの巨木
スギ林を下る
ツルウメモドキ
ツルアジサイ
マタタビ シラグチ谷
筒賀のマタタビ
6:30 出合橋出発 曇り
ヒメウラナミジャノメ

7:55 シナノキ谷分岐
9:40 シラグチ谷
10:20 キンカネリ
12:05 ウオキリ谷
12:40 馬立
13:55 アシガ谷落口
14:15 出合橋


 
 出合橋付近はこの時期、釣り人の多い谷であるが、今日はまだ姿が見られない。ミツバウツギが群生する小川林道は、よく目立つハートの果実を付けている。コアジサイが咲いている。アシガ谷付近のヤマウグイスカグラは赤い実をたくさん付けていた。ヤマウグイスカグラは幹径15ミリほどの小さな木であるが、100個以上の赤い実が鈴生りである。

 今良く目立つのは花の咲くヤグルマソウ、葉の白いマタタビ、木に登るツルアジサイの花。この時期、花や花穂を付けているので、私のような樹木の素人でも分かる。マユミ、ウリハダカエデ、アサガラ、エゴノキ、ヒメコウゾ、ウリノキ、モミジウリノキ、チドリノキ、ヤブデマリ、テツカエデ、サワグルミ、ハンショウヅル、アサクラザンショウ、クロモジ、ハクウンボク、ミヤマハハソ、ハナイカダ、エビヅル、キブシ、ヤマハンノキ、オオバヤシャブシ、タカノツメ、ヤマブドウ、ツタウルシ、ナガバモミジイチゴなど。

エゴノキ
マユミに留まるマルモンシロナミシャク

 「シラグチ谷は奥出合橋からオ川の水源にかけての本流の呼称であるがシラグチはサルナシの樹木方言でシラクチカズラとも言う」(「西中国山地」桑原良敏)。

 シラグチ谷に入ってから意識してサルナシに注意していたが、目立つのはマタタビばかりである。筒賀のマタタビは花が咲いていたが、こちらはまだツボミである。

 馬立橋、毛部田橋を渡り、ケブタの谷を大きく迂回して林道がシラグチ谷に戻ると冠山の頭が見えてくる。林道が北西に向きを変える辺りでシラグチ谷へ降りた。降りた地点がちょうど谷がキンカネリへ上がる分岐であった。

 シダとサワグルミの谷を上がる。冠山の北から降りる谷の分岐を過ぎ、平坦な尾根を上がってスギ林に入るとほどなくキンカネリの鞍部である。キンカネリは急坂を表す地形方言と言うが、シラグチ谷から鞍部へ上がる谷は緩やかであり、キンカネリとは別の場所のことかもしれない。

モミジウリノキ
テツカエデ


 キンカネリの鞍部は雑木林で尾根を通る道があったようだ。鞍部からユウレイ谷へ降りた。ユウレイ谷と呼んでも谷は普通の谷であった。ユウレイ谷の水源はワサビ田であった。大きな葉のワサビが残っている。サルナシが多いが、まだツボミが出ていない。

 1時間ほどで赤土峠の入口まで下った。そこから少し下った所で、頬の白い、尾が少し長い小鳥が数十羽頭上で騒いでいた。その先の小屋跡のサルナシは小さなツボミが出ていた。小鞍部を越えてウオキリ谷へ出た。少し下ると伐採地に出た。伐採跡を下り、ウオキリ谷とユウレイ谷の分岐の先に出た。おそらく谷のすぐ下流はウオキリ林道が上がっていると思われる。

 谷の分岐からスギ林の尾根を、三角点の馬立に上がった。この辺りのタンナサワフタギはまだ咲き始め。30分ほどで馬立。ブナの残るアシガ谷の東の尾根を下った。コアジサイは上がツボミで、下るに連れて花が開いてくる。ミズナラの巨木を過ぎるとスギ林となる。スギ林の林縁でようやく探していたウグイスカグラを見つけた。伐採地を下って小川林道の3号橋へ出た。

ミゾホウズキ
オオバアサガラ
ハクウンボク
ヒメコウゾ
ヤグルマソウ
サワグルミ
アサクラザンショウ
ヨツバムグラ ニシノヤマタイミンガサ

 

地名考

○キンカネリ
 kim-un-horka-nay-rupespe 
 キム・ウン・ホロカ・ナイ・ルペシペ
 山奥・にある・後戻りする・沢の・峠道沢

 「ウオキリ谷の奥よりシラグチ谷へ越す鞍部をキンカネリと呼んでいる。キンカネリ、キンカツギという呼称は峠径の急坂な場所につけられている俗称で、睾丸を持つ≠ニいう意である。峠の急坂の最後の登りでは背の荷ばかりでなく、前にぶらさがっている一物まで荷物のように重く感じられ、両手で持ち上げて登りたくなる気持ちを表わしている」(「西中国山地」桑原良敏)。

 「ウオキリ谷、シラグチ谷の水源のワサビ田に通うには今日のように小川廻りの林道ができていなかった頃、ウシオ谷→赤土峠→キンカネリの小径が使われていた。この小径はシラグチ谷の奥より県境を越して広高谷水源に出て三葛と結ばれていた」(「西中国山地」)。

 キンカネリと呼ぶ地名は、横川川から細見谷へ抜ける水越峠の西、白旗山北のオオ谷水源にもある。共通しているのは峠を越える地形である。

 水越峠は横川からボーギノキビレを経て広見へ抜ける道で、峠越えの道であった。

○キンカツギ
 kim-un-horka-tuk-oma-nay
 キム・ウン・ホロカ・ツク・オマ・ナイ
 山奥・にある・後戻りする・小山・にある・沢

○シラグチ谷
 sir-utur-kus-nay
 シリ・ウトル・クシ・ナイ
 崖・の間を・通る・川

 siru-kutchi-us-nay
 シル・クッチ・ウシ・ナイ
 鳥の・サルナシ・群生する・川


 サルナシのアイヌ語は、kutchi クッチ と呼び、マタタビのアイヌ語は、matatampu マタタンプだが、kutchi を使う場合がある。

 マタタビの果実は、サルナシに比して不味いので、「鳥のサルナシ」の限定詞がつく(『知里真志保著作集』)。

 chikap-kutchi
 チカプ・クッチ
 鳥の・サルナシ

 chiru-kutchi
 チル・クッチ
 鳥の・サルナシ

 siru-kutchi
 シル・クッチ
 鳥の・サルナシ

 chikap → chiru → siru と変化した(『知里真志保著作集』)。


 ミヤママタタビはアイヌ語で、シルクッチと呼ぶ。

 『果実に就いて先ず名ついた。アイヌは、この果実を生食したからである。ただ、その果実は、サルナシに比べて稍々不味なので、「鳥のサルナシ」と名ずけた』(『知里真志保著作集』・平凡社)。

 ミヤママタタビは、北海道、中部地方以北、四国に分布している。ネット検索でみると、近辺では鳥取市南の扇ノ山に見られるようだ。かつてミヤママタタビが、「西中国山地」に分布していたのだろうか。

 マタタビとミヤママタタビの違いを比べてみる。

●マタタビ
 葉の基部 円形 浅い心形
 葉が白く変化
 果実(液果)は長だ円形で大きく先が鋭い。

●ミヤママタタビ
 葉の基部 心形
 葉がピンクに変化
 枝のずいに空所がある。
 果実(液果)は小さく丸みがある。

 
 シラグチ谷のマタタビの枝を調べてみたが、空洞のものはなかった。

 昔、シラグチ谷がサルナシの多い谷であったとるすと、アイヌ語では以下の意が考えられる。

 sir-kutchi-kan-nay
 シリ・クッチ・カン・ナイ
 山の・サルナシ・を採る・川

 クッチ・カン・ナイ は北海道にある地名である。

 シラグチ谷
 sir-kus-nay
 シリ・クシ・ナイ
 崖を・通る・川

○ユウレイ谷
 yuk-ru-pes-nay
 ユク・ル・ペシ・ナイ
 鹿・路・下る・川


 吉和は昔から鹿の多い地域であったが、「鹿」を含む地名は「女鹿平山」ぐらいである。吉和の縄文遺跡から鹿取りの落とし穴が発掘されている。

 アイヌ語の樹木名でユウレイに近いものにニガキのアイヌ語がある。

 ユウレイ谷
 yukrayke-ni
 ユクライケ・ニ
 鹿・殺す・木(ニガキ)


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カシミールデータ
総沿面距離8.8km
標高差343m

トンボエダシャク

区間沿面距離
出合橋
↓ 5.2km
キンカネリ
↓ 1.2km
ウオキリ谷
↓ 0.6km
馬立三角点
↓ 1.8km
出合橋
 

 
鈴生りのヤマウグイスカグラ
登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)