山歩き

オガワ林道…アシガ谷…馬立…トロン谷 2007/5/19
出合橋…小川林道…アシガ谷…馬立…1112ピーク…馬立鞍部…ウオキリ谷…赤土峠…トロン谷…中津谷川…出合橋

■馬立(ウマダテ)1065m:広島県佐伯郡吉和村吉和西 (廿日市市)

出合橋下の釣り人
アシガ谷右岸のスギ林
アシガ谷川口
ヤブデマリ
馬立四等三角点
スギ林の1112ピーク
ウオキリ谷水源 馬立鞍部の下
ワサビ ウオキリ谷

ヤマブドウ ウオキリ谷

小屋跡 ユウレイ谷
クルソン岩 赤土峠から
ウリハダカエデ 赤土峠
チュウゴクザサの開花
ウグイスカグラ トロン谷鞍部
トロン谷のブナ
バイケイソウ群落
シダの群落
ワサビ田の石積
増水した渡し場 中津谷川
オオモミジ
コガクウツギ
ムクノキ
6:15 出合橋出発 雨
ネコノメソウ 

7:25 アシガ谷
9:05 馬立
10:00 1112P
10:10 馬立鞍部
11:20 赤土峠
13:10 トロン谷鞍部
14:50 中津谷川
15:35 出合橋


 雨の中を出発、出合橋の下に釣り人が入っている。しばらくながめていたが、釣れない。餌はイクラだった。林道沿いはミツバウツギが多く、ガマズミが咲き始めていた。アシガ谷の川口周辺で、ウグイスカグラを探してみた。四ヶ所で見つかったが、思っていたより少ない。周辺は伐採され、アシガ谷右岸の山手はスギ林となっている。伐採された辺りに、ウグイスカグラが多かったのかもしれない。ウグイクカグラの幹径は、大きいものでも15ミリほどであった。

ウグイスカグラ

 アシガ谷を登った。谷の左岸に作業道が上がっている。入り口の開けた所はミツバウツギが咲いている。スギ林を200mほど上がると終点。谷沿いを登り、枝が覆い始めたところで、右岸の尾根を進んだ。ササもブッシュもない歩きやすい尾根である。株立ちのブナを通り、アシガ谷入り口から1時間半ほどで、四等三角点の馬立に着いた。三角点はピークより東へ数メートル下がったところにある。

 風や強く、濡れた手はかじかみ、軍手をはめた。山頂から南西の尾根を進んだ。踏み跡が残っており、ブッシュも少ない尾根である。鞍部へ降りて、尾根が西向きに変わると1112ピークへの登りとなる。馬立から1時間で大きいスギ林のあるピークへ到着。そこから西へ少し下ると、馬立の鞍部である。

 「木地屋は製品の運搬に馬を使っていたし、この付近の木地屋の製品は吉和村に集められ焼山峠を越えて宮島へ送られていた。ヒロコウ谷→オサカエ→馬立→吉和村潮原への馬道があったことは三葛の古老から聞いた」(「西中国山地」桑原良敏)。

ウスノキ
コマユミ

 馬立は、ニシノヤマタイミンガサの林床に背の高いブナがあり、そのブナにツルアジサイがびっしりと絡み付いていた。緩やかなウオキリ谷の水源を下った。ワサビが群生していた。岩にワサビの根を擦ってみた。ワサビの香りが広がった。ワサビ田がウオキリ谷の水源まで作られていたようだ。

 ヤマシャクヤクが咲いているが、ツボミも多い。林の開けたところで、枯れた木に絡みついたヤマブドウの蔓から、葉が出始めていた。朽ちた巨木の跡からカツラが株立ちしている。右岸の尾根が開けた所で、そこへ上がった。

 小鞍部を越えてユウレイ谷へ下ると、潰れた小屋の残骸が残っている。ワサビ小屋であったのだろうか。ユウレイ谷を上がるとすぐ右岸が開ける。そこが赤土峠である。

 「ウオキリ谷、シラグチ谷の水源のワサビ田に通うには今日のように小川廻りの林道ができていなかった頃、ウシオ谷→赤土峠→キンカネリの小径が使われていた。この小径はシラグチ谷の奥より県境を越して広高谷水源に出て三葛と結ばれていた」(「西中国山地」)。

ウスギヨウラク
ヤマシャクヤク

 キンカネリはユウレイ谷水源の鞍部のことである。赤土峠の林間からクルソン岩が見える。峠にウリハダカエデの若木の、薄緑の樹に濃い緑の縦縞の特徴ある幹が二本並んでいた。赤土峠から東へ続く尾根は入り組み、見極めにくいところである。右往左往しながら尾根を進む。チュウゴクザサが開花していた。ようやくトロン谷の鞍部に下った。

 鞍部にあるダンコウバイの下の、膝下ほどの小さな木を見るとウグイスカグラに似ていた。幹径5ミリで、小さすぎてまだ実が付いていない。周辺を探してみると、背丈ほどのウグイスカグラがあった。こちらは小さな実を付けていた。幹径14ミリ。周辺を探してみると、膝下ほどの小さい木が数本、枝を伸ばしていた。

 ウグイスカグラは谷沿いの開けた所にあると思っていたので、鞍部の樹林の下にあるとは思わなかった。ただ少し明るい所ではあった。ここのウグイスカグラは、葉に毛のあるヤマウグイスカグラのようである。

サルメンエビネ
コケイラン
ウバユリ

 トロン谷を下った。右岸に踏み跡がある。バイケイソウの群落があった。その隣はネコノメソウの群落であった。ヤブデマリが咲いている。シダの群落が翼を広げているように見える。トチバニンジンの花芽が出始めている。トロン谷の下の方は、ワサビ田の石垣が残っている。ウバユリの葉が出ている。2時間弱で中津谷川に出た。

 雨で増水し、簡易の渡し場の所まで水流がある。水に入って橋を渡った。車道沿いにコガクウツギが咲き始めていた。1時間ほどで出合橋に帰着した。

クルマムグラ


地名考

●アシガ谷とウグイスカグラ

 アシガ谷の川口にウグイスカグラがあったのは、ただの偶然なのかどうか分からない。

 ウグイスカグラの由来については、「別府街角ウオッチング」のHPに詳しい。以下抜粋。

『ウグイスカグラについては、「和名抄」(源順、931−38)十七−四菓類の項 漢語抄に、

 鸎実(アウ実) ウグヒスノキノミ と云ふ。(鸎をオウと読む)

 とある。「和名抄」はウグイスカグラを「アウ実」、すなわち菓類(果実)として記述している。アウはウグイスの意で、鶯と同字である。

 「和名抄」の解説書である「箋注和名類聚鈔」(狩谷えき斎、1827)にも、次のような注釈が載っている。

 アウ実  西宮記・射礼儀や台記・天養三年条・伊勢広本には、ウグヒスノキノミ、俗にいう阿宇之(アウシチ)に作るとある』(「別府街角ウオッチング」のHPより)。


 これによると、ウグイスカグラは、古名をウグイスノキと言い、「アウノミ」「オウノミ」「アウシチ」「アウスチ」など呼ばれていたようだ。この呼び名はアイヌ語では以下の意が考えられる。

○アウノミ・オウノミ
 aw-us-numi
 アウ・ウシ・ヌミ
 枝に・ある・粒

○アウシチ・アウスチ
 aw-us-chi
 アウ・ウシ・チ
 枝に・ある・熟した実


 ウグイスカグラの古名は、「アウノミ」「オウノミ」など呼ばれていたが、「アウ」「オウ」の呼び名に「鸎」の字を当てたため、後に「ウグイス」と呼ばれるようになったのではないだろうか。

 クロミノウグイスカグラは、ウグイスカグラと同じスイカズラ属でハスカップとも呼ぶ。アイヌの人々は、これを不老長寿の実として珍重し、果実を生で食べた。北海道から本州中部以北に分布している。クロミノウグイスカグラのアイヌ語名は二つある。

 enumitanne エヌミタンネ
 e-numi-tanne
 エ・ヌミ・タンネ
 頭・の粒・長い

 この漿果には、粒の細長いのと丸いのがある。細長い方が大きくて甘い。enumitanne という名は、本来この細長い方に付いた名である。和人もそれを訛ってエノミダニと言う。

 haskap ハシカプ
 has-ka-o-p
 ハシ・カ・オ・プ
 枝・の上・に沢山なる・もの

 胆振東部の日本語方言がそれを取り入れてやはりハシカップと言い、室蘭線沼ノ端駅ではハシカップ飴やハシカップ羊羹の呼び売りをしている。

 (以上、『知里真志保著作集別巻T』から)


 ウグイスカグラの「カグラ」の意味はいろいろな説がるようだ。「カグラ」がアイヌ語であるとすると、ナマコのアイヌ語に「kakkura カックラ」「kakura カクラ」がある。

 『知里真志保著作集別巻T』に、マナマコを uta ウタ と呼び、ナマコ類のフジコ、キンコのアイヌ語を以下のように書いてある。

 kakura フジコ;キンコ

 kakura-uta (モシオグサ) 

 kakura は、ナマコのフジコ、キンコの意であり、参照例として、「カクラ・ウタ」を挙げている。「カクラ」の意味については書いてないが、「カクラのマナマコ」の意と思われる。フジコやキンコはマナマコとは違う特徴をもっている「カクラのナマコ」と言う意味であろうか。

 フジコ・キンコの特徴に、海中にひろげられたキンコの触手が、海草のアマモのように見えることから、「カクラ・ウタ」と呼ぶのであろうか。
 
 そうであるとすれば、アマモの根は甘いことから、その名の由来があるが、ウグイスカグラのアイヌ語は以下のように、表すことができる。

 aw-us-numi-kakkura
 アウ・ウシ・ヌミ・カックラ
 枝に・ある・粒の・アマモ

 e-numi-tanne-kakkura
 エ・ヌミ・タンネ・カックラ
 頭・の粒・長い・アマモ


 「ウグイスカグラ」は、ヤマウグイスカグラが基本種で、全体に毛が多い。変種のウグイスカグラは無毛。同じく、ミヤマウグイスカグラは腺毛が多い点で区別される。

 クロミノウグイスカグラは、葉の両面に毛があり、基本種のヤマウグイスカグラに近いのであろうか。


 先週、たまたまアシガ谷近くで、ヤマウグイスカグラを見つけたのだが、アイヌの人々はそれをハシカプと呼んでいたのかもしれない。 

 アシガ谷は、アイヌ語で以下の意が考えられる。

 haskap-us-nay
 ハシカプ・ウシ・ナイ
 ウグイスカグラ・ある・沢

 haskap → ashika の転訛。

 クロミノウグイスカグラは、北海道の中でも、火山灰に覆われた原野を生育場所にしている。冠山は死火山の山だが、今から約10万年前、活発な火山活動をしていた。冠山の北東側は、中・古生代の火山活動に伴う輝緑凝灰岩の地質で、林木が生育する褐色森林土壌となっている。
 アシガ谷、トロン谷は湿性褐色森林土壌で、スギの生育に最適な土壌であると言う(「都道府県土地分類基本調査・1978年」)。4200年前の急激な寒冷化とともに、クロミノウグイスカグラやミヤママタタビ(シラクチ)が南下し、冠山周辺を繁殖の適地として選んだ時代があったのであろうか。


 アシガ谷がウグイスカグラと関係ないのであれば、アイヌ語で以下の意がある。

 has-kara-pet
 ハシ・カラ・ペッ
 潅木を・取る・沢

■トロン谷

 to-oro-un-nay
 ト・オロ・ウン・ナイ
 沼・の中・にある・沢


 「オオウバユリは北海道方言では『おばいろ』『おべーろ』などという。この百合根の澱粉が大切な食物で、アイヌ葱(キト=ギョウジャニンニク)と並んで貴重な天然野菜であった」(『アイヌ語地名の研究』)。

 アイヌの人々は、ウバユリをオオウバユリと呼んでいたのか、あるいは、寒冷化とともに、オオウバユリが南下していたのであろうか。細見谷にはオオウバユリがあるようだ。

 トロン谷
 to-oro-wen-nay
 ト・オロ・ウェン・ナイ
 沼・の中・悪い・沢


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カシミールデータ
総沿面距離8.7km
標高差463m

タツナミソウ

区間沿面距離
出合橋
↓ 2.0km
馬立
↓ 2.0km
赤土峠
↓ 1.9km
トロン谷鞍部
↓ 2.8km
出合橋
 

 
中津谷川
登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)