山歩き

小原…イチマ谷…ユキガ原…大井谷 2007/3/25
小原…大井…石堂…布原…イチマ谷…牛首への分岐…林道…林道終点…展望地…大井谷…大井集落…小原

左小原川・右筒賀川 小原大橋から
大井谷落口付近の釣り人
山腹にある大井集落
岩盤の筒賀川
石堂谷川

小石多い石堂谷川落口

布原
イチマ谷落口付近
イチマ谷の崩壊した右岸の道
左岸へ渡る鉄の橋
 崩れた牛首へ上がる谷
スギ林から潅木の道に
市間山
小室井山
林道終点
ハチガ谷の頭と市間山
大井集落
7:55 小原出発 雨のち晴れ 
 
 

9:00 イチマ谷
10:20 牛首への分岐
11:20 林道
12:00 林道終点
12:20 尾根の展望地
13:15 大井集落
13:35 小原



 湯来温泉から県道40号を上がり、186号線に出ると筒賀の小原である。「下調べ書出帳・筒賀村」(1819年)に

 「佐伯郡多田村境峠より川下小原にて右吉和川へ落合い申し候」

 とあり、小原付近の川は筒賀川でなく、「吉和川」と呼ばれていたようだ。

 「諸色覚書」(1727年)の「用水大井出」の項目に「本郷川山崎」「本郷側小原」とあり、小原下流は「本郷ガワ」と呼んでいたようだ。「山崎」は、まだ下流の「山之廻」付近と思われる。

フライによる形の良いアマゴ

 小雨の中、「こばらおおはし」を渡り、186号線を上がった。東側の町道下大井上大井線分岐を過ぎたところで、筒賀川に釣り人がいた。釣果を聞いたところ、全然ダメの返事。ゴギを上流で釣ったことがあるとのことだった。

 国道を上がっていると、先ほどの釣り人が大きな声で呼んでいる。振り返ると、ちょうど釣れた所だった。幅広の天然ものの形の良いアマゴだった。

 大井谷は水の少ない小谷である。左岸の上の方に大井集落が見える。高いところにある集落である。ミツマタが咲いている。1800年代にはこの辺りでは、コウゾの生産が盛んであったが、楮皮を鹿が食い荒らす深刻な被害があった。

 筒賀川は岩盤の谷のようだ。その岩盤の上の橋の名は「サクラガセハシ」だった。石堂谷は「石堂谷川」となっていた。石堂谷の落口を見ると、小石の多い所だった。石堂谷付近にりっぱな社が祀ってある。その少し先は下布原のバス停。

 下布原のバス停の先に小谷が降りている。地の人に聞くと「シカタ谷」と言う。シカタガ谷のようだ。この辺りの本流をホンカワと呼んでいる。ヨシワ川の名残であろうか。その先はもうイチマ谷の入口だった。

ニホンジカの3歳ほどと思われる角

 国道からイチマ谷へ入る所に廃屋がある。ここへ住んでいた方が、ちょうど片付けに帰られた所だった。ここに長く住んでいたが、今は広島市内に居ると言う。イチマ谷でワサビを作っていたがヤマドリに食い荒らされた。ゴギは見たことがないとのこと。

 林道工事で鹿の骨が出たことがないか聞いてみた。怪訝そうに、「あんた何を調べとるんかい」と言いながら、子供のころ、親父さんについて、炭焼きでイチマ谷の奥へ入ったことがあるが、その時、鹿の角を拾ったと言う。その角を見せていただいた。

 崩れかけた廃屋の鴨居の上に、鹿の角が飾ってあった。後で調べてみると、3歳程度のニホンジカの角と思われる。

 国道からイチマ谷へ入ると、すぐ市間橋がある。林道を進むとほどなく、先の道は崩れていた。堰堤が幾つか谷を塞いでいる。道は右岸にあるが、所々崩壊している。鉄の橋を渡り、道は左岸に移るが、再び右岸に道がつづく。右岸から降りる谷に壊れた木の橋がある。その先でも右岸の道が崩壊していた。

イチマ谷のゴギ
ワサビ


 牛首へ上がる分岐付近で、ゴギの生息を調べてみた。竿を入れるとすぐに釣れた。計測すると15cmのゴギだった。リリースの後、同じくらいのゴギが釣れた。長年、市間谷に住んでいたおじさんが、ゴギは見たことないと言うのだから事実だろう。上流に林道が通っているから、上から放流した可能性もある。イチマ谷は、ゴギが棲める環境であることが分かった。

 山口大学のHPに「ゴギの遺伝的多様性」についてのページがあり、「イワナは本来変異が多く、谷ごとに系統が異なるとまで言われています。…谷ごとのゴギの遺伝的特徴を明らかにして、純系の保全に役立てようというのが、この研究の狙いです」とある。


 イチマ谷の「ゴギ」が雑種なのか、この谷に棲んできたゴギなのか、興味あるところである。

 ワサビの花が咲いていた。この辺りにワサビ田があったようだが、崩壊して跡形もない。牛首へ上がる涸れ谷を登った。途中、谷が崩れ倒木が覆っていた。谷はスギ林から潅木帯に変わり、やっと抜けて林道に出た。林道を下ると市間山の峰が見える。

ヒキガエルの水溜り


 林道の水溜りにヒキガエルのタマゴがあり、その狭い水溜りに、3組6匹の大きなヒキガエルが居た。林道の上手がユキガ原である。鹿の通り道だった所と思われる。林道は地図の終点の大分先に延びていた。林道終点から索道が、スギ林の中に上がっていた。


 終点からヨコミチが東に続いている。ヨコミチはイシドウ谷の水源を上がり、尾根の展望地に出た。展望地は鍋山から牛首へ抜ける尾根道の中ほどにある。市間山、ハチガ谷の頭が正面に見える所である。しばらく休憩して、大井谷を降りた。ゴギの生息を調べようと思っていたが、スギ林の谷はどこまで降りても水がない。集落の手前まで降りて、やっと水が出る口があった。


 高岸の大井集落を下った。そこからほどなく小原の橋まで戻った。橋付近で川を眺めていた年寄りに伺った。耳が遠い方だったが、筆談で、小原川(猪股川)の支流にゴギが居たことが分かった。若い頃2mほどの竿でよく釣ったと言う。


地名考

○本郷川
 pon-kotan-nay
 ポン・コタン・ナイ
 小・村・川

 川の語源はいろいろ考えられるが、アイヌ語の川は nay ナイ pet ペッ があり、川は kus-pet kus-nay の転訛が多かったのでないか。


○筒賀川 古名・ヨシワガワ  
 i-yochi-pa-oma-nay
 イ・ヨチ・パ・オマ・ナイ
 それ・多い所・の上手・にある・川


○筒賀川 ツツガガワ
 tu-utur-ka-oma-nay
 ツ・ウツル・カ・オマ・ナイ
 峯・の間・の上手・に入る・川


○小原 コバラ
 o-para-nay
 オ・パラ・ナイ
 川口・広い・川


○猪股川
 inun-us-mata-kus-nay
 イヌン・ウシ・マタ・クシ・ナイ
 漁小屋・ある・冬・通る・川


 小原川の上流は猪股川(イノマタガワ)と呼ばれたいたようだ。漁猟の仮小屋があったこの川で、イワナや鹿を取っていたのであろうか。猪股山の東に蟹股山がある。


○大井谷 オオイ
 o-i-ot-i
 オ・イ・オッ・イ
 川尻に・それ・多い・もの(川)


○布原 ヌノハラ
 nu-nay-par
 ヌ・ナイ・パル
 豊漁・川の・口


○萩原 ハギワラ
 nup-pa-kus-para-i
 ヌプ・パ・クシ・パラ・イ
 野・の上手を・通る・広い・もの(川)


○イチマ谷
 i-chima-ta-us-nay
 イ・チマ・タ・ウシ・ナイ
 そこで・ウドを・取る・いつもする・川

 イチマ谷
 ichan-pa-oma-nay
 イチャン・パ・オマ・ナイ
 イワナヤマメ産卵場・の上手・にある・川


○ユキガ原
 yuk-ika-us-nupuri
 ユク・イカ・ウシ・ヌプリ
 鹿が・越える・いつもする・山



 アイヌに鹿を崖から落とす鹿猟があるが、ユキガ原にはそのような崖はないようである。崖があれば下の意である。

 yuk-kut-ika-us-nupuri
 ユク・クッ・イカ・クシ・ヌプリ
 鹿が・崖を・こぼれ落ちる・いつもする・山


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カシミールデータ
総沿面距離9.2km
標高差486m

区間沿面距離
小原
↓ 2.7km
イチマ谷
↓ 4.3km
展望地
↓ 1.2km
大井集落
↓ 1.0km
小原

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市間山 林道から
登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)