山歩き

シワギ…三段峡…イキイシ谷…餅ノ木 2007/2/18
柴木…黒淵…葭ヶ原…横川出合…田代…イキイシ谷…大規模林道…モチノキ…三段滝…葭ヶ原…柴木

■三段峡(サンダンキョウ) 三峨・三段・三峡:広島県山県郡戸河内町 (安芸太田町)

三段峡入口 熊南峰の碑
長淵
崖が迫る龍の口
庄兵衛岩と五立

女夫淵(メウトブチ)

二谷
石樋から見た天狗岩
天狗岩
蓬莱岩と思われる
親子岩と思われる
黒淵
 川の曲がり角にあるキヤケボタンの谷
ホトケイワ
木串付近 谷沿いにカヤ多くあったと思われる
蛇杉橋
大淵
深く左岸に切れ込んだ王城
小石多い所がつづく長瀞
耶源(ヤゲン)
出合淵
楓林館跡
岩が出る五郎堰付近 左岸
イタヤカエデの古木 猿飛
鵜の子の小谷
田代 ウス谷
蜘蛛淵
餅ノ木
猪上がらず付近
玉緒滝
丸淵
三段滝
槙ヶ瀬
タキガ谷
オオ谷
8:40 柴木出発 小雨 気温10度
 
 

11:20 葭ヶ原
12:00 横川出合
12:40 イキイシ谷
13:40 モチノキ
15:00 葭ヶ原
16:40 柴木






 三段峡にアイヌ地名を探る

 大正6年(1917年)、大島写真館の写真技師だった熊勝一(南峰)が、この渓谷に入り、素晴らしい景観の虜になって、以後、開発と宣伝に熱中する。翌年の1918年 「山県郡写真帖」発行して、三段峡を紹介し、当時の人々を驚かせた(「西中国山地」桑原良敏)。

 三段峡の入口に、この峡谷の父である熊南峰の碑がある。「三段峡の現状が、最早小生如き者を必要としなくなった」として、南峰が三段峡を離れるにあたって友人に手紙を託している。


 大正期の三段峡の案内図には、現在呼ばれている峡谷の名称より、多くのものが載っている。この名称は、三段峡開発の頃に考え出されたとばかり思っていた。

 三段峡の名称は、古いアイヌ語地名のようだ。

 「書出帳・戸河内村」(文政2年・1819年)に、「里人は此川筋も随分通り申候。ひらめと申魚多居候。形帖鱒の如く味も能類し申候」とある。

 「ひらめ」はアマゴのことで、柴木村の人々は普段から釣に入っていたようだ。村人にとって三段峡は、生活の場であり、峡谷内の古い呼び名が、代々引き継がれてきたと思われる。

 おそらく、大正期の案内図にある名称は、村人が呼んでいたものを、熊南峰がそのまま聞きだしたものであろう。以下に、三段峡の入口から奥へ順に、その地名を検討してみる。


 名勝地名の出典は『戸河内町史』にある以下の二つである。

 『三段峡ニ就イテ』熊南峰(大正13年頃)
 『名勝天然記念物三段峡の概説』(戸河内村役場 大正13年頃)


 谷の地名は「西中国山地」(桑原良敏)による。




●柴木川(シワギ)
 si-iwak-i
 シワキ
 大きい・神棲む・所

 アイヌ語地名

 onne-iwak-i
 オンネ・イワキ
 大きい・住む・所

 kamuy-iwak-i
 カムイ・イワキ
 神・住む・所

 i-iwak-i
 イワキ
 それ・住まれる・所

 kapachiri-iwaki
 カパチリ・イワキ
 鷲・居る所

姉妹滝




●姉妹滝(シマイ・セイカク谷落口)
 si-may
 シ・マイ 
 大きい・響く音

 si-muy
 シ・ムイ 
 大きい・渦
 
 姉妹滝は懸谷になっている。本流の侵食が支流より格段に早く、谷を深く掘り下げ、落口は崖となった。上流の龍の口には滝があったのではないか。

 アイヌ語地名・辞典

 poro-moy-putu
 ポロモイプトゥ
 大きい・渦・口

 may 金属製の音響・鳴る音
 



●セイカク谷
 龍の口に降りる谷である。三段峡入口の西善寺の坊さんの、セイカクさんが迷い込んだ谷である。上殿河内・戸河内村諸色覚(享保12年・1727年)の「谷」の項に「清角谷」がある。

 nisey-ke-kus
 ニセイ・ケ・ク 
 崖・の所を・通る

 アイヌ語地名

 nisey-ke-kus-nay
 ニセイ・ケ・クシ




●五立(ゴタチ)
 ukot-ar-chish
 ウコタ・チシ 
 互いにくっつく・片側・立岩

 最初のトンネルの庄兵衛岩の一番上にある岩崖のこと。




●庄兵衛岩(ショウベイイワ)
 so-us-pe-iwa
 ショウ・ウシ・ペ・イワ 
 断崖に・ついている・水の・岩山

 最初のトンネルの上にある岩。




●女夫淵(メウトブチ) 古名は、メウトブチ
 mem-to
 メム・ト 
 泉・池

 二つの淵がある。その上流に石樋がある。二つの淵は滝つぼの跡であると考えられる。石樋は滝が後退した跡である。




●ツエオクエキ
 tuye-o-kut
 ツィエ・オ・ク
 崩れる・尻・崖

 女夫淵の上流、石樋のプレートがある所へ落ちる谷。

石が多い石樋のプレートの下




●石樋(イシドイ)
 i-si-tuy
 イ・シ・トィ 
 そこが・本当に・切れている

 ここは左岸、右岸の峰が迫った所にある。山が谷に切られているところである。流紋岩を深く侵食し、深いところは8mもある。

二股の塔岩




●塔岩(トウイワ) 古名は、タウイワ
 petaw-iwa ペタウ・イワ
 二股の・岩崖

 petau-iwa → tau-iwa

 三段峡案内では「高さ100m。文字通り塔のようにそそり立つ岩山」とある。塔岩の右に、さらに大きい塔岩がある。古名は「タウイワ」となっている。昔からタウイワと呼んでいたのだろう。二股の岩崖のことである。




●ぐるの瀬 二谷にぐる滝(グルタキ)
 kur-un-taki
 クル・タキ 
 神・居る・岩

二谷落口




●二谷(フタダニ)
 hutat
 フタッ
 笹川

 塔岩の上流に落ちる谷。

 


●天狗岩 古名は、天狗ヶ岳(テングガダケ)
 e-tu-un-kus
 エ・ト・ウン・ク
 頭が・山へ・入り込んでいる・川向こう

 龍口からみると、谷から頭が突き出ているように見える。




●黒淵(クロブチ)
 kur-o-puci
 クロ・プチ 
 神・いる・口

仏岩




●仏岩(ホトケイワ)
 ho-tuk-e-iwa  
 ホ・トク・エ・イワ  
 性器が・突き出ている・頭の・岩

 サバノ頭から降りる尾根の、末端に仏岩がある。似たアイヌ語地名に、北海道の「椴法華」(トドホッケ)がある。




●大淵(オウブチ)
 oo-puchi 
 オオ・プチ 
 深い・その口

 大淵のプレートのある所で、川幅が狭くなっている。それを川の口と表現している。下流から見ると、川の口のように見える。淵のことではない。ここにある淵はこの谷のどこにでもある淵である。

猿飛



●猿飛(サルトビ)
 sar-to-pi
 サル・ト・ピ
 流れの緩やかな・池の・細く深い谷

 猿飛の渡船場から坂道を上がると、老イタヤの大木がある。猿飛の崖下を二段滝から川が降りている。

 アイヌ語地名

 pi-nay
 ピナイ
 細く深い・谷川




●鵜の子(ウノコ)
 ut-nay-kot ウッ・ナイ・コッ
 脇・沢の・跡

 鵜の子のプレートがあるすぐ近くの左岸に小さい谷間に水が流れている。ここでアイヌは水を汲んでいたと思われる。


 横川川と田代川の出合から林道を登り、田代集落、奥三段峡手前のイキイシ谷まで進む。




●田代川(タシロ)
 ta-sir-o
 タシロ
 そこに・崖が・ある

 田代集落を過ぎると奥三段峡の入口である蜘蛛渕である。そこから長い渓谷が始まる。



●蜘蛛淵(クモブチ) 奥三段峡入口
 kut-pok
 クッ・ポク  
 崖・下

餅ノ木

 イキイシ谷から林道へ戻り、大規模林道へ上がった。緩やかなモチノキ峠を登ると、餅ノ木の集落へ入る。餅ノ木から柴木川を下り、葭ヶ原へ出る。餅ノ木から三段峡へ入る所に「名勝三段峡」の碑があり、大正14年には史跡に指定されている。熊南峰の功績が大きかったのであろう。


















竜門



●竜門
 ruy-mom
 ルイ・モム
 激しい・流れ




●貴船滝(キビネ)
 kipir-ne
 キピネ
 崖・になっている



●モチノキ谷
 mo-sir-noski
 モシノキ
 小・崖・の真ん中

樽床ダム

樽床貯水池遺跡発掘地点



●樽床(タルトコ)
 taran-to-kotan
 タラトコ
 猟漁のため滞在する・沼・村

 tara-to-kot
 タラトコ
 続いている・沼・跡

 聖湖の周辺に旧石器・縄文遺物が出土している。

 樽床ダムの東西に旧期の湖成層がある。古代八幡湖とともに、樽床も古代には湖であった。古代樽床湖の周辺で鏃などが出土している。

 あるいは、古代八幡湖に続く柴木川下流の沼であった。

樽床ダムができる前のシジリ谷




●シジリ谷(古名=シシリ)
 si-siri シシリ
 大きい・崖

 樽床ダム上流右岸のシジリ谷は、ダムができる前、三ツ滝に落ちる谷であった。

岩を貫くイキイシ谷川口



●奥三段峡入口のイキイシ谷

 イキイシ谷
 ikitara-us-i
 イキウシ
 ササ・群生する・所

 
 アイヌ語地名
 ikitara-usi
 イキタラウシ
 ササ多き所

 ikitara-pira
 イキタラピラ
 ササ・崖

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カシミールデータ
総沿面距離24.6km
標高差458m

区間沿面距離
柴木
↓ 11.3km
イキイシ谷
↓ 3.3km
餅ノ木
↓ 10.0km
柴木

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三段峡入口のマップ
登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)