山歩き

立岩ダム…市間山…立岩山…小松原橋 2007/1/14
立岩ダム…929P…市間山・・・1071P…立岩山…日の平山…965P…小松原橋…県道…立岩ダム

■市間山(イチマヤマ)1108.8m:広島県山県郡筒賀村大字上筒賀字市間山(点の記) 安芸太田町
■立岩山(タテイワヤマ)1135.0m:広島県山県郡筒賀村大字上筒賀字立岩山(点の記) 安芸太田町
■日の平山(ヒノヒラヤマ)1091.4m:広島県佐伯郡吉和村字吉和東(点の記) 廿日市市

立岩ダム
大休ミの丘の平坦地
境谷へ降りる山道

929ピーク手前のブナ

ブナ林に日が入る
スギ林と雑木の境界尾根を上がる
市間山へ上がる谷 クラ谷水源
市間山
ブナの林を進む
 ブナ
三角点が頭を出す立岩山
小室井山
スギ林の縦走路
三角点が覗く市間山
ブナの間の十方山
女鹿平山
吉和川が見える
林道・県道分岐
小松原橋
7:20 立岩ダム出発 晴れ 気温-3度
 
 

9:00 929P
10:15 市間山
10:45 1071P
12:00 立岩山
13:25 日の平山
14:15 965P
16:00 小松原橋
16:50 立岩ダム

立岩ダム標識

 立岩ダムは、堤高64m、堤長179m、堤体積14万㎥、重力式コンクリートダムである。重力式とは、コンクリートを主要材料として使用し、コンクリートの質量を利用して、ダムの自重で水圧に耐えるのが特徴である。膨大なコンクリート量が必要であり、花崗岩・安山岩等の基礎岩盤が堅固な地点でないと建設する事が出来ない。立岩ダム、下流の打梨発電所は鹿島組が受注し、1938年竣工した。

 この工事のため二千数百名の朝鮮人労働者が打梨の建設現場に集まった。戸河内町の当時の人口は7000名であった。ダム工事の労働は厳しく、村の人が回顧している。「夜逃ぎょうする人をかくまった事くらいはあります。にぎりめしをこしらえてくれいうけえ、うちのおふくろなんかぁ何人もやったいいます。というのは下山から上に上がって道路を通りゃあ見張人がついとるけえ、山へ上がって女鹿平から下りてうちによったらしいです」。

 (おそらく、立野からヒノ谷を上がり、女鹿平山を登って、吉和村へ逃げたと思われる。)

 1937年度に打梨尋常小学校に転入してきた児童は、朝鮮人103名、日本人70名であった(『太田川水系発電所工事と朝鮮人労働者』広瀬貞三)。

 朝鮮人労働者は単身者が多かったが、家族とともに子どもたちも多くやってきたのであった。立岩ダムは朝鮮の人々なしでは、できなかったであろう。立岩ダムの水は打梨発電所に送られ、その2万1000KWの電力は呉海軍工廠へ送電された。

打梨発電所
打梨尋常小学校跡

 立岩ダムの堤を渡った。ダムの貯水池は、部分的に薄氷が張っている。もっと寒いときは貯水池全体に氷が張る。堰堤を渡るとすぐに、ジグザグ道が高圧線鉄塔へ上がっている。足跡が続いていた。急坂を上りきると、大休ミの丘の平坦地に出た。653ピークを通って、鉄塔のある尾根筋を上がるつもりだったが、足跡を追ってみた。足跡が西へ向きを変えたところで、足跡に続いて行くのをやめ、尾根に向きを変えた。足跡の主は猟師であろうか。ミズナラにクマ棚が残っていた。

 尾根を少し上がると、山道に出た。山道を歩いたみたが、道は境谷へ降りていた。おそらく、清水から境谷上部にあるワサビ田へ上がる道であろう。尾根を上がった。振り返ると、キリイシのタキから十方山へ日が射しているいる。立岩山の山頂も光り輝き始めた。樹林に日が入ってきた。大きなブナを過ぎると929ピーク。北側からスギ林が上がっている。林で展望はない。

尾根にウサギの足跡が続く

 しばらくスギ林と雑木の境界尾根を上がる。ウサギの足跡が尾根を上がっている。ヤマドリの足跡が途中で消えていた。何かに驚いて飛び立った跡が残っている。途中で東側の谷を二つ渡った。谷の林間から十方山が覗いていた。市間山から降りる尾根に移った。立岩ダムから3時間ほどで山頂。雪に隠れていた三角点を踏んでしまった。雪は三角点の高さほど。20cmくらいだろうか、この時期にしては少ない。

 林間から白く目立つ深入山が見える。コーヒーで一休みし、ウサギの足跡が続く縦走路を進む。雪は登山道を外さなければ深くなく、カンジキはいらない。東側に瀬戸内海の島が見える。20分ほどで西側スギ林の1071ピーク。ミズナラにクマ棚が残る。イノシシの深い足跡が横切る。前方に立岩山が見えてくる。急なヤセ尾根を過ぎて、岩場を登ると立岩山。すばらしい展望が広がっていた。

ミズナラに残るクマ棚

 この時期、白く凍る立岩貯水池は、穏やかな緑で、周辺に雪が残るだけである。押ヶ垰の集落が小さく見える。十方山の雪の稜線は、人が歩いていれば見えるほど近い。苅尾山の右に見える深入山は一際目立つ。東側には瀬戸の島がはっきりと見える。気温はマイナス3度、山頂の端に立つと、谷風に手が凍えるが、陽だまりに腰を降ろすと暖かい。ここは三角点が頭を出している。

 ホットコーヒーで体を温め出発。岩場を進むと東側が開け、筒賀から吉和へ伸びる谷を一望できる。その先に小室井山。日の平山へ続く尾根の先に、女鹿平山、冠山が一直線に並んでいる。岩場を越えてしばらく進むと、東からスギ林が上がってくる。立岩山から1時間半ほどで日の平山。林であまり展望はない。ここも三角点が雪の上に覗く。

押ヶ垰集落 立岩山から
 

 日の平山から西側に下りる尾根を下った。植林帯を下って、開けたところに出た。女鹿平山のスキー場が眼前にある。東下に林道が上がっている。植林帯をさらに下って965ピーク。展望はない。尾根をいくつか渡り、眼下に吉和川を見下ろせるところに出た。その直下を林道が通っていた。
  
 急なスギ林を小松原橋に向かって下った。スギが倒れて開けたところは、潅木がはびこり歩きにくい。山道に出た。見上げると送電線が通っている。鉄塔へ上がる道のようだ。さらに下って、19番鉄塔への標柱のある林道に出た。そこからほどなく県道、道に雪は残っていなかった。日の平山から2時間ほどで小松原橋。県道沿いのヤブツバキはまだつぼみ。小松原橋から1時間ほどで立岩ダムに帰着。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

カシミールデータ
総沿面距離17.8km
標高差656m
累積標高1658m

区間沿面距離
立岩ダム
↓ 5.1km
市間山
↓ 2.5km
立岩山
↓ 1.7km
日の平山
↓ 4.4km
小松原橋
↓ 4.1km
立岩ダム

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



地名考

●カヤノガ峠

 北海道の茅部(カヤベ)は、津軽海峡を渡った東の亀田半島の北にある。現在は本茅部町と言う。そこに本萱部岬があり、カヤウンペと呼ばれた崖があった。海岸の岩や崖が舟の帆形だと、カヤ(帆)を地名とした。
 アイヌ語では、
 kaya-un-pe カヤウンペ 「帆の所」

 重力式の立岩ダムは周辺が強固な岩盤であったのだろう。立岩山からカヤノガ峠を見ると、横長の壁が貯水池に下りているように見える。ダムができる前は、四角い岩壁が谷へ落ちていたのではないか。それを帆に見立てたのかもしれない。アイヌ語で、

 kaya-un-not-ka-oma-pet-taor
 カヤ・ウン・ノッ・カ・オマ・ペッ・タオル
 帆・ある・山崎の・岸・にある・川の・高岸


●キリイシのタキ

 先日、キリイシのタキを通ってみて、その岩壁はもろい岩のようだった。人が石を切り出した所ではない。

 kir-o-ru-us-nay-tapkop
 キル・オ・ル・ウシ・ナイ・タプコプ
 踏分道が・ある・川の・小山


●ツエ谷 オオズエ谷

 「西中国山地」に、「ツエ」「ズエ」を含む地名は10ヶ所ほどある。

 「ツエ・クエ 山崩れ。崩れることをツエル」(「西中国山地」桑原良敏)と言う。

 アイヌ語に、tuye トゥイェがある。ツエに近い発音で、「崩れる」の意がある。tuy トイ も同じ意味である。

 北海道の地名に以下がある。

 ★豊平(トヨヒラ・札幌) tuye-pira トゥイェ・ピラ
  「(川水が)崩す・崖」

 ★石油沢川(セキユザワガワ・雨竜)
 tuy-rupespe トイ・ルペシペ 
 崩れた・峠道沢

 ★小糸魚(コイトイ・根室) koy-tuye コイ・トゥイェ
 「波が・崩す」


 市間山の西と北に、ツエ谷とオオズエ谷がある。
 アイヌ語で、

 ★ツエ谷
 tuye-nay ツィェ・ナイ
 (川水が)崩す・川

 ★オオズエ谷
 
 o-tuye-nay オ・トゥイェ・ナイ
 川尻・(川水が)崩す・川


 ツエ谷の川口に「清水」(セイズイ)がある。同じ地名が愛媛県に一件だけある。セイズイはセイツエであろうか。

 nisey-utur-us-i
 ニセイ・ウツル・ウシ・イ
 崖・の間・にある・所



●「西中国山地」の地形方言とアイヌ語

「西中国山地」の
地形方言
アイヌ語
アシ
悪い
as アシ 切り立つ
has ハシ 潅木
ウシクビ(牛首)
鞍部
us-kipir ウシ・キピリ
箕状の丘
ウツ
狭い谷
ut-nay ウッ・ナイ
枝・川
ウト・ウトー
小さな谷
ut-nay ウッ・ナイ
枝・川
カワチ・コウチ・ゴウチ
河内・川の合流点
ukot ウコッ
くっついている・合流する
クラ
断崖・岩場・鞍
kura クラ 鞍
kut-ra クッラ 崖の下
ゴーロ・ゴロウ・ゴウラ
石原・石がごろごろしている所
ukaw ウカゥ
石が重なり合う所
ゴー
川・河
ukaw ウカゥ
石が重なり合う所
タオ
taor タオル
高岸
ツエ・クエ
山崩れ
tuye トゥイェ
崩す
ナル・ナルイ
平坦地
ninar ニナル
ヌタ・ノタ・ノダ
湿地
nutap ヌタプ
川の湾曲内の平坦地
ヒラ
尾根の側面
pira ピラ
エキ
凹状地形・谷
ekimne エキムネ
山へ行く
サコ
凹状地形・谷
sa-kot サ・コッ
から沢
トチ谷
トチノキの谷
tochi-nay トチ・ナイ
トチノキの・谷

十方山 立岩山から
苅尾山 深入山 市間山 立岩山から
日の平、女鹿平山、冠山 立岩山西端から

瀬戸内海 立岩山から
登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)