山歩き

上本郷…那須…十方山…大古屋 2006/11/12
上本郷…那須横川分岐…那須…藤十郎…中三ツ倉…奥三ツ倉…十方山…藤十郎…那須…大古屋…県道296号…上本郷

■十方山(ジッポウザン)1318.9m:佐伯郡吉和村字吉和西(点の記) 廿日市市

県道296号線
日の差し込む古道
スギ林の古道

中電無線局

那須・横川分岐
鍋山
那須への古道
紅葉の先の那須集落
那須小学校跡と鉄の橋
藤十郎のミズナラ
雪の中三ツ倉
十方山山頂 奥三ツ倉から
雪の残る十方山と立岩山
雲のかかる冠山
藤十郎のブナ
藤十郎のブナ
紅葉の登山道
台ヶ原
那須集落
那須集落
ハチガ谷の頭と市間山
高い石垣の道
6:50 上本郷出発 雨後曇り 気温5度
 

7:25 那須横川分岐
9:35 那須
11:10 藤十郎
11:35 中三ツ倉
12:10 十方山
13:10 藤十郎
14:25 那須
16:25 大古屋
17:05 上本郷

 

 雨が止んだところで、恐羅漢山公園線の入口を出発。太田川沿いの県道296号を100mほど進むと、「おっぱい山登山道入口」の道標がある。ここが、上本郷と横川を結ぶ古道の入口である。民家の間を通って、尾根道へ上がっていく。

 暗い樹林の中に、日が入ってくる。旧道の幅広の山道が、尾根を通っている。ところどころ、古い石積が残っている。この道は、山陰から八幡、餅ノ木、田代、横川を通って、本郷へ砂鉄を運ぶ山道でもあった。

おっぱい山分岐 
那須・横川分岐

 スギ林の間を進む、30分ほどで、おっぱい山分岐。尾根を掘り下げた道が続く。雨がまた降り始めた。中国電力の吉和郷無線中継局を通り、しばらく進むと、那須横川分岐。「右横川 左那須」と書かれた、明治の石の道標がある。右へ行くと、恐羅漢山公園線に出る。

 那須へ進む。開けた所で、鍋山の大きな山容が見える。本郷の方はガスで煙っている。715ピークの南を通り過ぎたところに、「吉和郷町有林」の看板があった。この辺りは、昭和35年にスギを植林している。道は二、三ヶ所、薮になっているところがある。

 紅葉の古道になり始めると、那須が近い。樹間から集落が覗く。ジグザグ道を降りて、那須川に架かる鉄の橋に出た。上本郷から2時間半ほどで那須に到着。那須小学校跡の庇の下で雨宿り休憩。

 那須川沿いの紅葉が鮮やかだった。雨の車道を上がり、風小屋林道の終点に着くと、日が差し始めた。今日は、降ったり止んだりの天気である。水田だった石垣の道を上がる。トウジュウロウ谷とウラオレ谷の間の台地を、ダイガハラと言い、美しい棚田が広がっていたと言う。今は、植林された樹林の下で、棚田を見ることはできない。

 棚田を抜けた所にあるクリノキに、昨年はクマ柵があったが、今年はない。クリの実が小さかったのか、クマがいなくなったのか。ウラオレ谷への分岐からしばらく登ると、若いブナ帯に入る。ブナ林と紅葉の道を登る。大岩を過ぎて、ブナとスギの平坦地に入ると、藤十郎が近い。登山道に雪が残っていた。昨夜、降ったようだ。那須から1時間半ほどで藤十郎。ミズナラの大木がある。ちょうど、トウジュウロウ谷の水源を登りきった辺りである。

藤十郎のブナ

 雪の残るブナの森を上がった。中三ツ倉に近づくと、雪は2、3cmほどある。雪の十方山への尾根道を進んだ。奥三ツ倉から十方山を見ると、山頂の道標の周辺に、大勢の人が見える。急に、パラパラと霰が降った。気温を確かめると0度。那須から2時間半ほどで、にぎやかな十方山に到着した。瀬戸滝側の登山道から、次々と登ってくるのが見える。山頂道標の前はシャッター待ちである。気温は零下だった。

 雲のかかる景色をカメラに納めて、引き返した。坂根へ降りようと思っていたが、足元が悪いので、登山道を那須へ下った。藤十郎周辺のブナをじっくりと見ながら下った。藤十郎から少し下った、樹林の開けたところで、日に照らされた深入山が見えた。下りのブナと紅葉の道は、登りとは違った景色を見ることができる。台ヶ原に降りたところで、大きなヒキガエルがじっとしていた。急な寒さに、冬眠しそこねたのだろうか。

大きなカエル
那須川

 紅葉の那須集落に入った。那須小学校跡に木地師石田富次の碑がある。「石田富次 当年六十一歳 師者石州那賀郡都地村字尾浜人企於明治三十三年八月那須木地塗業以来進隆盛発達境受弟等此恩有年慈集彰其偉徳 菅尾来筆」とある。菅尾来は、当時打梨小学校那須分校の教師だった。

 明治33年、島根県から移住してきた石田富次から木地及び漆塗りの技術を習い、那須で漆器生産が盛んになった。明治41年4月、弟子達が石田師に対する敬慕の念から顕彰碑を建てた(「戸河内郷土誌考」)。

 碑は那須から吉和郷へ通じる旧道沿いにあった。その後、現在地の那須小学校跡に移設された。帰りは、その吉和郷に出る旧道を上がった。鉄の橋を渡ると、那須川沿いの左岸の道を上がる。がけ崩れで危ない道だが、上に行くと、手すりの付いた道に変わる。ここから那須集落を一望できる。

那須小学校跡の碑
 

 那須集落は、山に囲まれた、那須川の奥の平坦地にある。ここから見る台ヶ原は、植林された林である。内黒峠からつづく那須集落の上の峯は、紅葉で覆われていた。手すりの道を過ぎて進むと、石垣の残る幅の広い古道に変わる。おそらく馬の通った道であったのだろう。開けたところで、市間山とハチガ谷の頭が目前に見える。

 古道は、切り立った崖のところでは、高い石垣が組まれている。よく崩れずに残っているものだ。しっかりした石組みと思われる。谷を縫うようにつづく道は、スギ林やヒノキ林、松林を通り、2時間ほどで大古屋の上部に出た。車道に出るまでに、何度も、ジグザグする石垣の緩やかな道が下りている。車道のすぐ上は、石垣が崩壊しており、車道から見ると、分かりにくい。

 那須への古道の入口は、流田(ナガレダ)の集落の西側の、中国電力の「気をつけましょう !!」の赤い字の看板がある裏手にある。そこから崩れた石垣の道が始まっている。上に登るにつれて、はっきりとした道になる。

 那須集落から2時間ほどで車道に出た。大古屋は2万5千地形図では、南の突き出た辺りを言うようだ。県道を進むと、白壁の土蔵のある流田の集落。那須から2時間半ほどで、上本郷に帰着した。

スギ林の古道
ジグザグに降りる石垣の道
看板の奥が古道入口
流田付近


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カシミールデータ
総沿面距離24.7km
標高差1032m
累積標高+2084m
累積標高-2084m

区間沿面距離
上本郷
↓ 5.7km
那須
↓ 5.9km
十方山
↓ 5.9km
那須
↓ 4.7km
大古屋
↓ 2.5km
上本郷

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地名考

那須

「町村合併で元の那須郡は那須町と那須塩原市、那須烏山市となりましたが、みんな那須にこだわったのですネ。那須と言うのはアイヌ語の野裾(ヌシュ)がなまったものだそうです」(栃木県那須町役場HP)。

 栃木県那須町のホームページによると、「那須」の有力な語源の一つに、アイヌ語のヌシュがあげられている。
 
 「ヌシュ」は、
 nup-sut ヌプ・スッ 「野原の・ふもと」の意。

 栃木県最北端に位置する那須。那須高原は、日光国立公園の北東部にあり、那須温泉郷は1360年の歴史を誇ると言う。

 戸河内の那須は、標高600mで、周囲を山で囲まれた、奥まったところにある。『芸藩通志』(1825年)戸河内村略図には、「奈須ヶ原」とある。

 「地名アイヌ語小辞典」に、
 nupuri-sut ヌプリ・スッ
 「山のふもと」の意とある。

 こちらの那須は、「山裾」の意と思われる。

○那須 ナス
 nup-sut
 ヌプ・スッ
 野の・ふもと

○奈須ヶ原 ナスガハラ
 nup-sut-kar-us-nay
 ヌプ・スッ・カル・ウシ・ナイ
 野の・ふもとを・回る・いつもする・川
 (那須古名)


●大古屋(オオゴヤ)
 上本郷の西に大古屋がある。同名の「大古屋」が岡山県にある。呼び名の「おおごや」は、カシミール検索で幾つかある。

 オオゴヤは、アイヌ語で、
 onne-nupuri-ko-yan-pet
 オンネ・ヌプリ・コ・ヤン・ペッ
 大・山・に向かって・上る・川
 

岡山県総社市 オオゴヤ
平家ヶ岳南

●十方山

 十方山の記録の初見は、黒川道祐『安芸国郡志』(1663年)で、「十方辻」とある(「西中国山地」桑原良敏)。「ツジ」は、山頂を表す地形方言であったようだ。


 十方辻は、
 sir-utur-pa-tu-us-nay
 シリ・ウツル・パ・ト・ウシ・ナイ
 山・の間・の上手の・山の走り根が・ある・川

 恐羅漢山東の砥石川山は、内黒峠やサバノ頭から見ると、直方体の山に見える。砥石川山は、昔は長石山と呼ばれていた。「トイ」は、アイヌ語で「墓」の意がある。サバノ頭から見る砥石川山は、巨大な墓のようにも見える。山を墓に例えることがあったのかもしれない。

 北海道の軽川(がるがわ)の原名は、トシリパオマナイと言う。アイヌ語で、
 tushir-pa-oma-nai
 「墓の・上手・にある・川」の意(「北海道の地名」)。

 アイヌタイムズに、siporo の例がある。

 siporo uray シポロ・ウライ 「とても大きなヤナ」
                   (沙流・千歳方言)

 siporo upas noka シポロ・ウパ・ノカ
             「さらに大きな雪像」

 十方山は、周辺の山と比べて、山容の大きい山である。
 シポロ→ジッポウの転訛が考えられる。
 

十方山から見る冠山方向
那須集落
那須集落

登路(青線は磁北線 薄茶は900m超 茶は1000m超)