山歩き

2008/9/7
大谷
2009/4/29
オカノオク谷
2010/11/13
女鹿原川

畳山…阿佐山…マブ…大石谷 2006/5/7
猪子山…猪子谷川…畳山…猪子山越…ドウゲン山…ツチダキ…同形山…1090.6P…マブ…大石谷…来尾川…八戸川…猪子山

■畳山(タタミヤマ)1029.0m:広島県山県郡大朝町大字筏津字畳山
■阿佐山(アサヤマ)南峯1218.2m(ドウゲン山):広島県芸北町大暮字阿佐山
■阿佐山北峯1212m(同形山・ドウギョウ山):島根県邑智郡瑞穂町大字市木字同形鉱山

郷路橋から猪子谷川方向
猪子谷川
畳山へ上がるスキーコース
カタラ谷
畳山直下のリフト
倒れたブナ
畳山山頂
3.8mブナ 猪子山越東
ヤブと湿地の猪子山越東
伐採された西面
伐採されたブナ
尾根筋のブナ林
ドウゲン山 一回り大きい三角点
同形山
同形山樹林帯
1090.6ピークに上がる旭テングストンのリフト
スキーコースのブナ

突然、下からガスが押し寄せる

マブ付近 視界は50mほど
旭テングストン
来尾 大石谷分岐
水田跡の石垣
大石谷集落の水田
十通り 下十通り橋から
内ケ原入口
早水川
7:15 郷路橋出発 雨のち曇 気温17度

8:05 瑞穂スキー場
9:05 畳山
9:40 1033ピーク
10:20 猪子越
11:15 ドウゲン山
11:30 ツチダキ
11:45 同形山
12:20 1090.6ピーク
12:55 マブ
13:25 旭テングストン
14:15 大石谷
16:50 郷路橋(猪子山)
 

 小雨の中、郷路橋を出発。猪子谷川を上がり、浜田道の高架を通ると、ドウギョウ谷、カレキヨウ谷、トチ谷がつづく。左に一の谷川が下りている。砂防指定地の看板にカレキヨウ谷は枯木尾谷川とあった。猪子谷川を渡ってしばらく登ると瑞穂ハイランドスキー場。同形山と畳山からスキーコースが降りている。

 3月11日、同形山には多勢のスキー客が居たが、今は人っ子一人いない。ガスで展望のないゲレンデを登った。タテバシリは小さな水路となってゲレンデの隅を流れている。40分ほどでリフトの終点に着いた。リフトは畳山直下まで上がっている。畳山で雷に襲われたら屋根のあるリフト終点に避難できる。

 

 腰ほどあるササを漕いで尾根を登った。大きなブナが多い。ブナが根こそぎ倒れていた。ブナの幹に水路ができている。リフト終点から20分ほどで畳山。林で展望はない。三角点周辺は茂っている。

 畳山の点名は滝ヶ谷(タキガタニ)で三等三角点、所在地は山県郡大朝町大字筏津字畳山。選点は明治28年。

3.4mブナ

 登ってきた径を少し下り、北西の尾根を進んで1033ピークを過ぎると、周囲3.4mの大きなブナがあった。猪子山越への下りはブナ帯で、3mを超える大きなブナが多い。瑞穂スキー場から上がるカタラ谷水源はヤブと湿地になっており、猪子山越もヤブで覆われている。猪子山越の南側もカタラ谷で、こちらは植林帯になっている。

 ヤブを分けて尾根に出ると西側は皆伐されていた。尾根に沿って伐採径が開かれて踏み跡がある。尾根筋もブナが多いが、境界上のブナは尽く伐採されていた。伐採された西側もブナの森だったと思われる。大谷側からはササもないので、ドウゲン山に楽に登れそうである。大岩を超えると山頂、猪子越から1時間ほどだった。
 ドウゲン山の三角点はひと回り大きい。一等三角点で点名は阿佐山、所在地は大字大暮字阿佐山、明治21年の選点。

 少し休憩して山小屋の前を通り、ツチダキへ下った。踏み跡はしっかりしている。ドウゲン山から15分ほどでツチダキ。同形山への登りに入るとササが邪魔になる。途中から横のスキーコースに下りた。相変わらずガスが濃く、100mほどしか見通しがない。ドウゲン山から30分ほどで同形山。北側に丸瀬山があるが、『石見風土記』(736年)では同形山が丸瀬山と呼ばれていたようだ(「西中国山地」)。

 同形山のスキー場から樹林帯に入ると景色は一変する。苔むしたブナ森になる。少し下ったところで大ブナを計測しようとスケールを当てて反対側に回ると空洞になっていた。4.2mあったが、大きな枝がそばに落ちていた。葉もあまり出ていない。そろそろ寿命なのかもしれない。

 尾根に入ると北側はスギ林で踏み跡がある。同形山から30分余りで1090.6ピーク。旭テングストンのリフトがここまで上がっている。スキーコースを下った。周囲はブナが多い。コースの中にも大きなブナを残してある。旭テングストンはブナ帯を伐採して作られたようだ。ガスが薄らいで見通しのあったゲレンデの下部から、まるで水が押し寄せるようにガスが上がってきた。たちまち見通しは50m以下になってしまった。手探りでゲレンデを降りるような感じだった。

 

 30分ほどでリフトの中継点に降りた。ガスでほとんど見通しがない。建物の間を通って少し下るとサイジョウガエキとトチバシ谷をつなぐマブである。サイジョウガエキ側へ水を落す水路があったと言うが、道路とゲレンデの出発点になっておりマブの痕跡も残っていなかった。すぐ先にあるカラスギ山がマブの痕跡と言えるだろうか。ガスで先が見えないスキーコースを30分ほど下り、旭テングストンに到着した。1090.6ピークから中継点を経て3.3kmの長い見通しのないスキーコースの下りだった。

 旭テングストンの駐車場を降りると林道早水来尾線に出た。そこから少し西へ進むと大石谷へ車道が降りている。車道をしばらく下ると林道唐杉山線起点の看板があり、カラスギ山辺りへむけて林道が上がっていたようだが、今はつかわれていない。谷に沿って古い石垣が残っており、かなり上部まで水田があったと思われる。大石谷の棚田では田植えが始まっていた。大石谷は大岩が多い。旭テングストンから40分ほどで大石谷へ下った。

大石谷

 大石谷から来尾川を下った。川岸に広い平坦地が続き、どこも田植えを終えたばかりのようだ。十通り(トトオリ)の周辺は特に広い平坦地になっている。
 越木(コシキ)に出て、八戸川(ヤトガワ)を東へ進んだ。緩やかな流れの岸に平坦地が長く続いている。貝崎にはニワトリの居ない養鶏場があった。内ヶ原(ウチガハラ)は貝崎を過ぎた南側の山手にある。尋常小学校跡の石碑が立っていた。貝崎と内ヶ原の間に市木があるが、周辺に市木の地名が多い。

丸瀬橋 

 「早水渓谷入口」の看板があった。「渓流の奥深い地には、かつて本谷・薊木屋の二鈩があり、砂鉄採集も行なわれていた。牛の放牧や製炭も行なわれ、その炭は広島県大暮の製鉄所に運ばれていた」。
 
 対岸の宮中に「市喜の社 石見風土記」がある。八戸川が南へ上がると厳島神社の社があった。観音寺原に丸瀬橋がある。丸瀬山があるのでこの辺りを丸瀬と呼んでいたいたのかもしれない。大石谷から2時間半ほどで猪子山に帰着した。

渓谷入口の看板


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カシミールデータ
総沿面距離25.9km
標高差1011m

区間沿面距離
郷路橋
↓ 4.4km
畳山
↓ 2.1km
ドウゲン山
↓ 2.6km
1090.6P
↓ 3.3km
旭テングストン
↓ 2.7km
大石谷
↓ 10.8km
郷路橋


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地名考

●「貝」を含む地名
 「貝」の字は万葉集にあり、古く遡る文字のようだ。
 島根県の「貝」を含む地名は丸瀬山北の「貝崎」だけである。広島県の貝地名8件の内、6件が日和川から帝釈峡辺りの緯度に集中している。海岸沿いでなく、山間部にあるのはどういう理由なのだろうか。残りの2件は府中市と三原である。山口県の貝地名は3件で海岸に近くにあり、日本海2件、瀬戸内海1件である。

 帝釈峡の縄文遺跡から多くのカワシンジュガイが出土しているが、北海道でいうカラスガイはカワシンジュガイのことで、沼貝ともいう。カワシンジュガイの幼生はイワナやヤマメなど魚類のエラやヒレに付着し、これらとともに移動するという。広島県の小瀬川には昭和20年頃まで相当数が生息していたようで、世界の南限といわれていたが絶滅した。山口県も絶滅種、島根県は絶滅危惧類になっている。

 北海道の美馬牛(ビバウシ)はアイヌ語で pi-pa-us-i と表わし、「カラスガイの多い所」の意がある。北海道の下方(ケボウ)もカラス貝が多いことから、ケポウ、ケパウ、ケバウ、ビバウシの地名はカラス貝が生息していたことを表している。

 広島県の比婆、比和は帝釈峡に近く、カラスガイが生息していたところだが、地名の呼び名が美馬牛のビバとよく似ている。

 比婆山から下りる比和川は pi-pa に由来していると思われる。比婆山も同様と思われる。烏帽子山(エボシヤマ)もビバウシの転訛と思われる。

 ピパウシ→エバウシ→エボウシ→エボシ の転訛

 比和町や比婆山、烏帽子山、立烏帽子山などはカラスガイが由来の地名と思われる。

 山口県の茅帽子山(右谷山)もカラスガイが由来のようだ。小瀬川より北にある宇佐川にはおそらくカワシンジュガイが居たと思われる。

 ピパウシ→ケバウシ→ケボウシ→カヤボウシ の転訛(深入山の項

 比和町の古名は日和だが、オオイシ谷の下流に日和川がある。大石谷のすぐ東に貝崎がある。帝釈峡の緯度辺りに東から岡山県の貝田、広島県の貝原、貝六、貝の平、貝の谷、貝原、島根県の貝崎が位置しているのは、カラスガイ(カワシンジュガイ)の南下線を示めしているのではないだろうか。

 カラスガイは寒冷化とともに南下してきた貝で、帝釈峡辺りの緯度が生息に適していたのだろう。カラスガイは島根県の日和川南の周布川水系の上流には戦前まで普通に生息していた。
 大石谷東のカラスギ山のカラスはカラスガイのことだはないだろうか。
 

「貝」を含む地名 広島県8・島根県1

●十通り(トトオリ)
 秋田県に戸鳥内(トトリナイ)がある。上流にある戸鳥内沢は tu-utur-nay(尾根の・間の・沢)の意がある。上流に沼があり、tu は to を含んでいるのかもしれない。

 北海道の涛釣沼(トウツルトウ)は北見の斜里町の地名で to-utur-to と表し、「沼の間の沼」の意がある。

 十通りの周辺にかつて沼や池があったのであれば、トトオリは to-utur-i と表し、「沼の間の所」の意となる。山口県に鳥通(トトオリ)がある。

●大石谷(オオイシダニ)
 「西中国山地」でオオイシと呼ぶ地名はここだけである。「大石」を含む地名は東日本に多いようだ。大石谷下流の十通りが沼か池があった所であれば、カラスガイが生息できる環境があったと思われる。

 onne-iso-us-nay
 オンネ・イショ・ウシ・ナイ
 大きい・磯岩・ある・川

●マブ
「三つ石山の北尾根の鞍部をマブという。マブは横穴、坑道を意味する方言である。これはタタミ牧場水源のイデガ谷の水をこの鞍部よりサイジョウガエキの方へ流していた時代があり、鞍部を越す部分に土管を埋めたか、横穴を掘ったかしたらしい。マブの地名は大石谷では通じるが、早水の村人は知らない。その北の902m峯を、早水ではカラスギ山、大石谷ではカラツギ山と聞いた。ス→ツと転訛したものと思われる」(「西中国山地」桑原良敏)。

 アイヌ語でマブはオマプ oma-p と表わし、「〜のある・所」の意がある。
 マブは「大石谷で通じる」というから大石谷の何かを指していると思われる。

・北海道の島松川は 
 スマ・オ・マプsuma-oma-p (石が・ある・川)
・厚真町(アツマチョウ)は
 アト・マプ at-oma-p (楡・ある・所)
・真駒内は
 マコマナイ mak-oma-nay(奥に・ある・川)

 マブは鞍部にある。
 taor-oma-p
 タオル・オマ・プ
 高岸・ある・所

●三ツ石山(ミツイシヤマ)
「三ツ石山の山名は広島県側の古い地誌には記されていない。島根県側では有名な山であったようだ。『岩見外記』(1820年・文政3年)に
『此山ハ絶頂ニ大ナル岩三ツアルヲ以テ三石山ノ称アリサテ山上ニハ大ナル池アリテ鈩葭生シソノアタリ四時トモニ消ル事ナキ雪のアルハ其山の高大ナル知ルヘシ』」(「西中国山地」)。

 カラスガイは沼貝ともいう。三ツ石山西のキナイ原は広い平坦地で、昔は沼だったのだろう。この沼にカラスガイが生息していた可能性がある。

  pipa-us-i 「カラスガイ・ある・所」
  ビバウシ→ミツウシ→ミツイシ の転訛

 北海道の三石(ミツイシ)は 
 イマニッ・ウシ imanit-us-i 「焼串のある所」
 ピット・ウシ・イ pit-us-i 「小石の多い所」
 ミトウシ mitush 「桶」
 などの意がある。

 カラスガイは十通の沼地からゴギやヤマメに付着して、大石谷からキナイ原の沼地に生息範囲を広げたのかもしれない。

●丸瀬山(マルセヤマ)
「丸瀬山は島根県側ではよく知られた山である。初見は『石見風土記』(736年)・天平8年」にさかのぼる。観音寺原の村人は、1021m峰を大丸瀬、その北西尾根上の937m独標を小丸瀬と呼んでいる」(「西中国山地」)。

 北海道の丸瀬布町(マルセップ)はアイヌ語で「子の川が並んで三つある広い所」(丸瀬布町商工会HP)の意味があるという。
 アイヌ語で マウレセプ ma-u-re-sep と表し、「並ぶ・所・三つ・広い」の意となる。

 マウレセプ→マルセップ→マルセ の転訛

 阿佐山北峯(同形山)が丸瀬山と呼ばれていた(『石見風土記』)。マウレセプはドウギョウ谷、カレキヨウ谷、トチ谷が三つの子の川で、子の川の入口が猪子山辺りと思われる。猪子山の下流に丸瀬橋がある。

 内陸部にある「マルセ」の地名は北海道と岩手県だけである。

●トビ岩(トビイワ)
「大丸瀬山頂に南面に飛岩という二個並んだ巨石がある。またこの山についての弘法大師の開山の伝承は、島根県側では広く知られており『瑞穂町史』にも紹介されている」(「西中国山地」)。

 北海道に飛仁臼(トビニウス)がある。アイヌ語でトペニウシ tope-ni-us-i と表し、「イタヤカエデが群生しているところ」の意がある。

 トビ岩は トペニイワ tope-ni-iwa と表し、「イタヤカエデの山」の意と思われる。tope は乳液の意で、木に穴をあけると甘い汁が出る。丸瀬山はイタヤカエデの多い山だったのかもしれない。

 トペニイワ→トビイワ の転訛

 道後山の南に鳶ノ巣山がある。この辺りはアイヌ系の人々が呼んでいた「毛無山」やカラスガイ由来の地名が多いところだが、トぺニウスの転訛と考えられる。

 トペニウス→トビニウス→トビノス の転訛

 島根県の日和川の北に「鳶ノ子山」(トビノコ)があるが、トペニウスの転訛かもしれない。

●焼尾平(セキオビラ)

 sey-o-pira
 セイ・オ・ピラ
 貝殻・多くある・崖

 北海道の小平町のオピラウシベツは o-pira-us-pet 「川尻に・崖が・ある・川」の意。

 吉和のセキヤ谷は sek-ya 「水が湧き出る・山縁」の意と思われる。オセキガ峠は o-sek-ka 「川尻に・水が湧き出る・上手」の意となる。

●市木(イチギ)
 北海道に市来知(イチキシリ)がある。アイヌ語でイ・チキル・ウシ・イ i-cikir-us-i と表し、「熊の・足跡が・多くある・所」の意がある。

 イチキルウシイ→イチキ の転訛 市木の南西の来尾に熊押がある。クマの押し罠があったところと思われる。

 湯来町にイロナシ谷とオリオ谷がある。「イ・ル・オ・ナイ」は「熊の足跡がある沢」の意だが、イルオナイ→イロナシの転訛、イルオ→オリオの転訛と思われる。昔はイルオナイと言う一つの地名だったイロナシ谷とオリオ谷の間に熊押峠がある。

●内ヶ原(ウチガハラ クマを射止めた広場)
 北海道にカムイ・エクウチカ・ウシ・ヌプリがある。「クマ・転ばした・所・山」の意がある。

 カムイ・エクウチカ・パラ→ウチガハラ の転訛

 隣がクマの通り道がある市木で、この辺りでクマを射止めたところかもしれない。

●ガンジョウジ谷
 nupuri-ka-un-so-us-pet
 ヌプリ・カ・ウン・ショウ・ウシ・ナイ
 山・の上・に入って行く・滝・ある・川
 

 

ブナ 畳山
猪子山越東のブナ林
畳山 同形山から 2006/3/11
中国5県の「貝」を含む地名
登路(青線は磁北線 青は900m超 ピンクは1000m超)