山歩き

比治山 2001年7月16日
ひじやま

■広島市南区比治山公園


私は中学に上がる前の数年間、段原に住んでいたことがある。
玄関を出て二、三分坂を登ると、御便殿跡だった。
私は蝉取りに夢中になっていた。
山中を歩き回った。
あるとき、私は抱きかかえられないほどの太く、大きなくすの木に攀じ登り、クマゼミを追った。
木からすべって落ち、お尻をしたたか打った覚えがある。

そのころは、まんが図書館も現代美術館もなく、
建物と言えば、かまぼこ型のABCCくらいだった。
私の両親は満州からの引揚者で、被爆者でなかったのだが、
ある日、ABCCのジープが来て、
私の姉を検査すると言って、半ば強制的にかまぼこ建物に連れて行かれた。
小学生の私が姉に付き添い、恐々かまぼこの中に入った。
姉の検査の間、おいしいサンドイッチを頬張った記憶が鮮明に残っている。

その後わたしは、中小業者の運動に携わるようになった。
段原の街は比治山の東側にあった。
曲がりくねった、ゴチャゴチャした商店街を抜けると集会所があった。
差し入れのラーメンをすすりながら、業者の相談にのった。
昔の街並は再開発で無くなり、業者も散り散りになった。

比治山には展望台がいくつかある。
陸軍墓地の展望台は、広島で亡くなった軍人の墓石を通り抜けたところにある。
ここは回りの木々が伐採されて、見晴らしがいい。
ベンチに腰掛けて、瀬戸内の島々をじっと眺めると、心のさびしさが和んでくる。

真夏の蒸し暑い日でも、涼やかな風が吹き抜ける場所がある。
そこは私しか知らない。
わたしはそこに立ってみた。
遠い昔と同じパウダーの香る風が吹きぬけた。
と私には思えた。

 

陸軍墓地から瀬戸内海をのぞむ

 

 

ABCC正面入口

 

御便殿跡

 

西側の展望台から

 

 

この坂を登ると御便殿跡に出る(段原2丁目)